最終更新日 2020/06/29

看護師

看護師とは・・・

看護師(かんごし、nurse)とは、病気やけがをした人のケアや診療の補助を行う医療専門職である。看護師になるためには、専門の教育課程を修了し、看護師国家試験に合格しなければならない。

 

以前は、女性を「看護婦」、男性を「看護士」と呼んでいたが、2002年3月から性別を問わず「看護師」という名称に統一された。

 

 

1 看護師の役割

看護師の役割は、大きく「療養上の世話」「診療の補助」の2つがある。

看護師の役割/療養上の世話、診療の補助

療養上の世話は、患者が安全・安楽に療養生活を送れるよう手助けすることで、看護師の判断で行われる。ベッドメイキングなどの環境整備をはじめ、食事介助や排泄援助、体位変換や移動介助、転倒予防など、その内容は多岐にわたる。患者が本来持っている自然治癒力を引き出すかかわりが大切とされる。

 

診療の補助は、医師の処置のサポートのほか、問診や薬剤の投与、採血など、医師の指示に基づき行う医療的な行為のことである。また、観察やアセスメントを通じて患者の異変に気づくことも看護師の重要な役割である。

 

さらに、患者や家族の心のケアや、医療が多様化・複雑化する中でチーム医療を推進するキーパーソンとしての役割も期待されている。

 

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2 保健師助産師看護師法

「保健師助産師看護師法」(旧・保健婦助産婦看護婦法)は、それまで独自に考えられてきた保健師・助産師・看護師の資格や業務内容が整理され、それぞれの役割が明確に規定された法律である。1948年に制定された。通称、「保助看法(ほじょかんぽう)」

 

この法律が、看護師の職業を定めた基本となる法律である。

 

保健師助産師看護師法で示された業務/保健師:保健指導を行う/助産師:助産、妊婦・褥婦・新生児の保健指導を行う/看護師:傷病者・褥婦の療養上の世話や診療の補助を行う

▷ 保健師助産師看護師法(政府)

 

保助看法の中で看護師は、「厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者もしくは褥婦(出産後間もない女性のこと)に対する療養上の世話、または診療の補助を行うことを生業とする者」と定められている。

 

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3 看護師と准看護師の違い

看護師と准看護師は、制度の成り立ちから異なる。

 

准看護師は、1951年、保健師助産師看護師法の一部改正が行われ、看護師を補助する「准看護師」の制度に基づいて誕生した職種である

 

背景には、保助看法の制定で看護師の教育水準の向上や国家資格化によって看護師になるハードルが上がり、看護師が不足したことがある。

 

そのため、より資格の取得が容易な准看護師が考えられた。

 

准看護師と看護師の違い

  看護師 准看護師
基礎教育 入学要件:高校卒業
(5年一貫校は中学卒業)
年限:3年以上
時間:3000時間以上
入学要件:中学卒業
年限:2年以上
時間:1890時間以上
資格 厚生労働大臣が認定する国家資格 都道府県知事が認定する免許
法律上の業務規定 傷病者などに対する療養上の世話や診療の補助を行う 医師、歯科医師または看護師の指示に基づき、傷病者などに対する療養上の世話や診療の補助を行う
就業者数(2018年時点) 121万8606人 30万4479人

保健師助産師看護師学校養成所指定規則(政府)
平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況(厚生労働省)

 

現在、准看護師の養成に対しては「存続論」と「廃止論」がある。

 

医療が高度化する中で教育の質を向上するためにも看護師の資格に一本化したい日本看護協会と、マンパワー不足や病院経営の観点から准看護師を存続させたい日本医師会の間で、意見が対立している。

 

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4 男性看護師

男性看護師は、年々増加傾向にある。

 

厚生労働省によると、2018年の就業看護師は121万8606人で、そのうち7.8%に当たる9万5155人が男性看護師である。

 

また、看護学生における男性の割合も増えており、2019年度の看護学校入学者(6万5427人)は10人に1人が男性である。

 

男性看護師の割合/就業看護師:男性7.8%、看護学校入学生:10.3%

平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況(厚生労働省)
令和元年度看護師等学校養成所入学状況及び卒業生就業状況調査(厚生労働省)

 

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5 看護師の仕事内容

看護師の仕事内容は、働く場所によって異なるが、おもに下記のような業務がある。

 

【おもな看護師の業務】

 

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6 看護師のやりがい

看護師は、患者が回復していく様子を目の当たりにすることができ、やりがいを感じる機会が多い仕事である。

 

また、医療職の中でも患者や家族に近い存在であるため、人の人生に深くかかわることに魅力を感じる人も多い。

 

【看護師でよかったと思うこと】

  • 患者が元気になって退院していく姿が見られる
  • 患者や家族から「ありがとう」と感謝される
  • いろいろな患者の人生にかかわることができる
  • 人から頼りにされる仕事である
  • 社会的信用がある職業である  など

看護師でよかったと思うことがあるか?(看護roo!)

 

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7 看護師の働く場所

看護師の働く場所は、病院が最も多いが、病院以外で働く看護師も徐々に増えている

 

厚生労働省によると、病院で働く看護師は2008年は74.8%だったが、2018年には70.9%に減少。代わって、介護施設や訪問看護で働く看護師が増加傾向にある。

 

看護師の働く場所/【2008年(87万7182人】病院:74.8%、診療所:12.2%、介護施設等:5.4%、訪問看護:2.8%、その他:4.7%/【2018年(121万8606人)】病院:70.9%、診療所:12.8%、介護施設等:7.3%、訪問看護:4.2%、その他:4.8%

衛生行政報告例(厚生労働省)

 

 

7_1 病院

病院で働く看護師は、看護師全体の約7割を占める。

 

病院で働く看護師が行う業務は、配属される診療科や部署によって大きく異なる。
おもな診療科の特徴は下記のとおりである。

 

おもな診療科の特徴

  仕事内容
内科 薬物療法や内視鏡治療など、手術以外の治療を行う診療科。全身を総合的に治療する科もあれば、消化器内科や循環器内科など、特定の部位を専門に治療する科もある。与薬管理や患者指導が重要となる。
整形外科 骨や関節、筋肉や靭帯など、運動器の疾患や外傷の治療をする診療科。日常生活動作(ADL)に制限のある患者が多く、移動や移乗の介助、体位変換など、力仕事が多い傾向がある。
消化器科 食道、腸、肝臓胆嚢膵臓など、消化器疾患の治療を行う診療科。食事や排泄にかかわる援助が重要となる。薬物療法や内視鏡治療を行う内科と、手術を行う外科とで必要なケアが異なる。
循環器科 心臓や血管など、循環器疾患を治療する診療科。命に直結することも多く、慎重さが求められる。薬物療法やカテーテル治療を行う内科と、手術を行う外科とで必要なケアが異なる。
呼吸器科 肺や気管など、呼吸器疾患の患者の治療を行う診療科。人工呼吸器の管理や排痰ケアなど、呼吸状態の観察や管理が重要となる。抗がん剤などの薬物療法や酸素吸入療法などを行う内科と、手術を行う外科とでは必要なケアが異なる。
神経科 脳や神経系の疾患を治療する診療科。脳卒中などの脳血管障害や脳腫瘍、頭部外傷など、麻痺意識障害があり意思表示が困難な患者が多いため、察知する力やリハビリテーションの意欲を引き出すケアが大切となる。
小児科 新生児から15歳前後の病気や障害のある子どもの治療を行う診療科。まれな先天性疾患も含め、子どもの病気全般を扱うため、幅広い知識が必要とされる。また、子どもだけでなく、家族ケアも重要となる点が特徴である。
産婦人科 妊娠出産のサポートや、不妊治療や女性特有の疾患の治療を行う診療科。母子の健康管理や心理的なケアが重要となる。医療機関によっては妊婦と婦人科疾患の患者が同室で過ごすこともあり、心理面に配慮したかかわりが求められる。
泌尿器科 腎臓、尿管、膀胱など、尿の生成や排泄にかかわる器官に発生する疾患の治療を行う診療科。排尿障害や性機能障害をもつ患者は、QOLや自尊心に大きく影響するので、心理面に配慮した対応が求められる。
透析 腎臓の機能が低下した患者に対し、腎臓の働きを人工的に補助する治療を行う診療科。定期的に通院が必要になるため、患者と長くかかわり続けることが多い。体重管理や食事制限など、患者の生活指導が重要となる。
精神科 うつや依存症、認知症統合失調症など、精神疾患を治療する診療科。薬物療法が中心だが、認知行動療法や集団療法を行う病院もある。心理的なケアやセルフケアの支援など、個別性の高いケアが求められる。
救急科 救急患者の治療を行う診療科。事故による外傷、急性疾患、慢性疾患の急性増悪など、さまざまな患者のケアにあたるため、幅広い知識や迅速な対応が必要となる。災害現場で活動することもある。
手術室 手術を行う部署。手術室で働く看護師は、医師へ手術に使用する器械の受け渡しを行う「器械出し」と、術前・術後の患者訪問や、モニターチェックや出血量の確認など手術をバックアップする「外回り」の大きく2つの役割がある。

 

診療科別ナースのお仕事カタログ(看護roo!)

 

 

7_2 クリニック

クリニック(診療所)で働く看護師は、看護師全体の約1割である。

 

一部、病床のあるクリニック(ベッド数が19床以下の小規模な医療機関で、有床診療所という)もあるが、9割以上のクリニックでは病床がなく、外来診療のみで、看護師の夜勤がない。そのため、子育てや介護などのために、日勤のみで働きたい看護師に人気が高い。

 

クリニックで働く看護師が行う業務は、おもに次のような内容である。

 

【おもなクリニックで働く看護師の業務】

  • 問診
  • バイタルサインのチェック(呼吸数、血圧、脈拍、体温の測定)
  • 採血、点滴静脈注射、注射(皮下・筋肉)
  • 検査の説明
  • 医師の処置や治療の介助  など

 

 

7_3 病院以外

病院以外で働く看護師は増加傾向にあり、看護師の活躍の場が広がっている。

 

 

7_3_1 訪問看護ステーション

訪問看護ステーションで働く看護師は、在宅医療を推進する国の方針などもあり、年々増えている。厚生労働省によると、2018年時点で5万1740人に上り、10年前(2万4628人)と比べると倍増している

 

訪問看護師は利用者の自宅や介護施設などに訪問し、おもに次のような業務を行う。

 

【おもな訪問看護師の業務】

  • 健康状態のアセスメント
  • 在宅療養の支援(食事や排泄などの介助、介護者への指導など)
  • 薬物療法の相談や指導(薬の説明、残薬確認、服薬指導など)
  • 医療的ケア(点滴や注射、褥瘡ケア、経管栄養管理、呼吸管理など)
  • 家族など介護者の支援
  • 認知症や精神疾患のケア
  • ターミナルケア(がん末期などで終末期を在宅で過ごす場合の支援)  など

 

 

7_3_2 介護施設

介護施設で働く看護師は、訪問看護ステーションと同様、増加傾向にある。厚生労働省によると、2018年時点で8万9270人に上り、10年前(4万7738人)と比べると倍近くになっている

 

施設看護師は、施設利用者の健康管理を行うのが仕事で、おもに次のような業務を行う。療養上の世話は介護職が担うことが多いため、医療的ケアやマネジメント業務が中心となる。

 

【おもな施設看護師の業務】

  • 健康状態のアセスメント
  • 配薬管理
  • 医療的ケア(点滴や注射、褥瘡ケア、経管栄養管理、痰の吸引など)
  • 感染対策
  • 介護職へのケアの指導  など

 

 

7_3_3 保育園

園児の健康管理を行うため、保育園で働く看護師もいる。

 

乳児4人以上を保育する施設で、看護師・保健師・准看護師のいずれかの医療専門職を一人に限り保育士とみなす特例が設けられていることや、「保育所保育指針」に園児の発育や健康状態の把握など看護職の果たすべき役割が明記されていることなどが後押しとなっている。

 

保育園に看護師の配置義務はないが、保育園側のニーズは高い。

 

保育所等における准看護師の配置に係る特例について(通知)(厚生労働省)

保育所保育指針(告示)(厚生労働省)

 

保育園で働く看護師は、おもに次のような仕事を行う。

 

【おもな保育園看護師の業務】

  • 園内の感染対策
  • 体調不良児のケア
  • アレルギーのある園児の対応
  • 健康診断のサポート
  • 保護者への保健指導  など

 

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8 看護師になるには

看護師になるには、看護師国家試験に合格しなければならない。受験資格を得るために、まず看護専門学校や看護大学などで専門の教育課程を修了する必要がある。

 

いずれの学校も、文部科学省・厚生労働省が定めた「保健師助産師看護師学校養成所指定規則」で決められた教育内容や単位数に基づきカリキュラムが考えられている。

 

2022年度から、教育内容が一部見直される。現在、総単位数は97単位以上(3000時間以上)だが、102単位以上(総時間数は規定なし)に引き上げられ、ICTの活用やコミュニケーション能力の強化、地域や在宅看護の教育などの充実が図られる予定である。

 

看護基礎教育検討会報告書(厚生労働省)

 

 

8_1 看護師の資格取得ルート

看護師の資格を取得するルートとしては

 

  • 大学(4年)
  • 短期大学(3年)
  • 専門学校(3年または4年)
  • 5年一貫校

 

のいずれかで看護教育を受けるのが一般的である。

 

また、准看護師の実務経験が3年以上あれば、専門学校等で2年間の教育を受けることで看護師国家試験の受験資格を得られる。准看護師の実務経験が7年以上あれば、2年の通信課程を修了することで受験資格を得ることもできる。

 

おもな看護師の資格取得ルート
高等学校における看護教育(文部科学省)

 

大学への進学者が年々増加傾向にあり、厚生労働省によると、2019年の大学への入学者は看護学校入学者全体の約4割に上る。

 

看護学校の入学者数の推移【2010年度】大学:17085/短期大学:2352/3年課程:25794/5年一貫校:3944/2年課程:11082【2011年度】大学:17457/短期大学:2397/3年課程:25839/5年一貫校:4093/2年課程:10546【2012年度】大学:18569/短期大学:2202/3年課程:26029/5年一貫校:4141/2年課程:10378【2013年度】大学:19376/短期大学:2022/3年課程:26590/5年一貫校:4276/2年課程:10352【2014年度】大学:21223/短期大学:1668/3年課程:26767/5年一貫校:4203/2年課程:9811【2015年度】大学:22512/短期大学:1765/3年課程:27595/5年一貫校:4109/2年課程:9061【2016年度】大学:23106/短期大学:1575/3年課程:27694/5年一貫校:4020/2年課程:8466【2017年度】大学:24007/短期大学:1388/3年課程:28434/5年一貫校:4017/2年課程:8244【2018年度】大学:25048/短期大学:1472/3年課程:27963/5年一貫校:4005	/2年課程:8538【2019年度】大学:25619/短期大学:1271/3年課程:27197/5年一貫校:3738/2年課程:7602
看護師等学校養成所入学状況及び卒業生就業状況調査(厚生労働省)

 

 

8_1_1 専門学校

看護専門学校は、看護師を養成するためにつくられた学校で、3年課程の学校が主流である。

 

厚生労働省によると、3年課程の看護専門学校は2019年度時点で557校。看護師不足で国が養成を強化していることもあり、10年で約50校増えている。

 

また、一部の学校では、4年かけて3年課程の教育を行い、修了すれば「高度専門士」という称号が与えられるところもある。高度専門士の称号があれば、大学卒業生と同等の教育を受けたとみなされ、国内の大学院であれば進学ができる。

 

専門士・高度専門士の称号とは(文部科学省)

 

 

8_1_2 大学

看護系の大学や看護学科は、増え続けている。

 

厚生労働省によると、2009年度は183校だった看護学科のある大学が、2019年度には288校まで増加。10年で100校以上も増えている。

 

背景には、看護師不足を解消するために養成を急いでいる国と、少子化により経営的観点から学生に人気の高い資格系の学科をつくりたい大学の思惑が一致したことがある。

 

大学によっては保健師や助産師との統合カリキュラムを設けているところもある。

 

 

8_1_3 働きながら看護師になるには

看護師は需要が高く、安定した職業であるため、社会人になってから目指す人も多い。

 

働きながら看護師になるには

 

  • 定時制の看護専門学校に通う
  • 准看護師の資格を取得後に看護師を目指す

 

という大きく2つの方法がある。

 

准看護学校や准看護師から看護師になるための専門学校にも定時制の学校がある。また、准看護師の実務経験が7年以上あれば受験できる通信制の看護学校もある。

 

ただし、定時制の看護学校や准看護学校は、年々、減少傾向にある。

 

働きながら准看護師になるためには(日本准看護師連絡協議会)

准看護師が看護師資格を取得するには日本看護協会

 

 

8_2 看護師になるための奨学金制度

看護師になるために活用できる奨学金制度は大きく3つある。

 

  • 日本学生支援機構の奨学金制度
  • 都道府県・市町村の看護師等修学資金貸与事業制度
  • 病院独自の奨学金制度

 

看護師の奨学金として特徴的なのが、病院が独自に設けている奨学金制度。看護師になってから3、4年程度その病院で働くことで、借りた奨学金の返済が不要となるのが一般的である。

 

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9 看護師国家試験

看護師国家試験は、看護師の国家資格を得るための試験で、1950年から始まった。2020年までに109回実施されている。


1952年から1989年までは年2回行われていたが、1990年からは年1回の実施となっている。

 

 

9_1 問題

看護師国家試験の問題はマークシート形式で、4つの選択肢から1つ選ぶ「4択問題」と5つの選択肢から1つないし2つ選ぶ「5択問題」がある。全240問。

 

問題は下記3つの種類に分かれており、それぞれ配点や合格するためのボーダーラインが異なる。

 

看護師国家試験の配点とボーダーライン

  配点 ボーダーライン
必修問題 50点満点(1問1点) 80%以上正解(40点以上)
一般問題 130点満点(1問1点) 年によって変動
状況設定問題 120点満点(1問2点) 年によって変動

看護師国家試験のボーダーラインと合格率(看護roo!)

 

「必修問題」は80%以上正解しなければならない基準は毎年変わらない。たとえ「一般問題」と「状況設定問題」がボーダーラインを超えていても、「必修問題」が80%以下の正解率であれば不合格となる。

 

「一般問題」と「状況設定問題」のボーダーラインは、毎年変動する。2011年から2020年の「一般問題」と「状況設定問題」のボーダーラインの平均は156点である。

 

基本的には300点満点だが、正解が複数あったり難しすぎたりするなど不適切と判断される問題があった場合、その問題が採点対象から除外されるなど、年によっては変わることがある。

 

 

9_2 日程

看護師国家試験は、毎年、2月中旬の日曜日に実施される。第110回看護師国家試験は2021年2月14日(日)に行われる予定。

 

例年であれば、日程は8月1日に発表される。

 

 

9_3 合格発表

看護師国家試験の合格発表は、毎年、3月下旬に行われる。厚生労働省のサイトで発表され、発表後1週間以内に郵送で合否通知が届く。

 

例年は、厚生労働省や看護師国家試験運営臨時事務所で掲示による発表も行われる。

 

国家試験合格発表(厚生労働省)

 

 

9_4 合格率

看護師国家試験の合格率は、この10年ほどおおよそ90%前後。第109回国家試験は89.2%だった。

 

受験者は毎年6万人前後で、新卒者の合格率の方が高い傾向があり、第109回国家試験では94.7%であった。

 

看護師国家試験 受験者・合格者数&合格率の推移【100回】受験者数:54,138/合格者数:49,688/合格率:91.8%【101回】受験者数:53,702/合格者数:48,400/合格率:90.1%【102回】受験者数:56,530/合格者数:50,224/合格率:88.8%【103回】受験者数:59,725/合格者数:53,495/合格率:89.6%【104回】受験者数:60,947/合格者数:54,871/合格率:90.6%【105回】受験者数:62,154/合格者数:55,585/合格率:89.4%【106回】受験者数:62,534/合格者数:55,367/合格率:88.5%【107回】受験者数:64,488/合格者数:58,682/合格率:91.0%【108回】受験者数:63,603/合格者数:56,767/合格率:89.3%【109回】受験者数:65,569/合格者数:58,514/合格率:89.2%

第109回看護師国家試験の合格発表(厚生労働省)

 

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10 看護師免許

看護師免許は、看護師国家試験に合格すれば厚生労働大臣から交付される

 

日本の看護師免許は、米国のように一定期間ごとに継続教育を受ける更新制度はなく、犯罪などの重大な過失を起こさない限り一生有効である。

 

ただし、看護師として働く上で問題がある基準とされる「欠格事由」に該当すると判断された場合には、看護師免許を取り消されてしまう。

 

【看護師免許の欠格事由】

  • 罰金以上の刑に処せられた
  • 看護師の業務で犯罪や不正を行った
  • 心身の障害により看護師の業務を適正に行うことができない
  • 麻薬、大麻、アヘンの中毒者

 

看護師免許取得後に名前や本籍地などの変更がある場合や、死亡などで登録を削除する場合は手続きが必要である。

 

 

10_1 免許証

看護師免許証は看護師であることを証明する書類で、看護師として働く場合、就業先への提出が必要となることはあるが、日常的に携帯する必要はない。

 

看護師免許証は、看護師国家試験の「合格証」が届いた後、住所地の保健所(一部の県では県庁)で申請すれば発行される。

 

申請から発行までに3~4カ月ほど要し、免許証が届くまでは免許申請から約1カ月後に届く「登録済み証明書」が免許証代わりとなる。

 

看護師免許証はB4サイズ(縦25.7cm✕横36.4cm)の大きさで、運転免許証のように小型化してほしいという声が根強くある。
 

看護師免許の申請手続(政府)

 

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11 看護師の給料

看護師の給料は、一般的に高いイメージがあるが、労働者全般と比べると平均的な水準である。

 

看護師の平均収入は…(令和元年賃金構造基本統計調査)/年収:483万円、月収:33万円、ボーナス:82万円

令和元年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)

看護師の平均年収483万円!給料データを大調査(看護roo!)

 

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11_1 平均年収

看護師の平均年収は、厚生労働省の令和元年賃金構造基本統計調査によると482万9100円(月収33.4万円✕12カ月+ボーナス等81.6万円)。労働者全般の平均年収(約501万円)より、やや下回っている。

 

ただ、女性の看護師の平均年収(約481万円)でみると、女性労働者全般の平均年収(約388万円)より100万円ほど高く、女性の中では高い年収である。
 

 

11_2 ボーナス

看護師のボーナスは、厚生労働省の令和元年賃金構造統計調査によると平均で81万6300円である。労働者全般の平均(95万900円)よりも低い。

 

ただ、女性看護師のボーナスの平均は81万4000円で、女性平均(65万2000円)と比べると約16万円上回っている。

 

 

11_3 初任給

看護師の初任給は、日本看護協会の2019年病院看護実態調査によると、2020年度の見込みで3年課程の専門学校卒の看護師が平均26万4307円大卒看護師が平均27万2018円である。

 

一方、厚生労働省の令和元年賃金構造基本統計調査によると、労働者全般の平均初任給は高専・短大卒で平均18万3900円、大卒で平均21万200円だった。

 

調査方法(通勤手当を含むかなど)が異なるため一概に比較できないが、夜勤手当が想定されている看護師の初任給は比較的高い傾向がある。

 

2019年病院看護実態調査(日本看護協会)

令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況(厚生労働省)

 

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12 看護師としてのスキルアップのための資格や研修

看護師としてのスキルアップのための資格や研修は、看護師と同じ国家資格である「保健師」「助産師」、日本看護協会が認定している「認定看護師」「専門看護師」、厚生労働省が行っている「特定行為研修」などが挙げられる。

 

いずれの資格や研修も、学費や時間がかかり負担が大きいが、診療報酬で評価されるものもあるため、病院によっては費用負担してくれるところもある。

 

 

12_1 保健師

保健師になるには、保健師国家試験の受験資格を得るための専門の教育課程を修了する必要がある

 

保健師の資格を取得するルートは

 

  • 看護師と保健師の統合カリキュラムがある4年制の専門学校または大学
  • 看護師免許取得後、保健師養成学校(1年)

 

のいずれかで保健師になるための教育を受けるのが一般的である。

 

そのほか、3年制短期大学や専門学校等で看護師になるための必要課程を修了していれば、大学の3年次に編入できる。

 

保健師は看護師資格の取得が前提であるため、看護師と保健師の国家試験を同じ年に受験する場合、保健師国家試験に合格しても看護師国家試験が不合格だった場合、保健師資格を得られないことに注意が必要である

 

おもな保健師の資格取得ルート

 

保健師は、保健所や保健センターなどで働き、公衆衛生の向上のために地域住民の保健指導を行う。おもに、次のような役割を担う。

 

【おもな保健師の業務】

  • 地域の保健関連施策の企画や実施等
  • 地域住民の健康相談・訪問指導・健康教育
  • 集団健診・検診や健康教育
  • 保健サービス等の提供
  • 災害時の支援  など

 

 

12_2 助産師

助産師になるには、助産師国家試験の受験資格を得るため、専門の教育課程を修了する必要がある

 

助産師の資格を取得するルートは

 

  • 看護師と助産師の統合カリキュラムがある4年制の専門学校または大学
  • 看護師免許取得後、助産師養成学校(1年)

 

のいずれかで助産師になるための教育を受けるのが一般的である。

 

そのほか、看護師免許取得後に2年課程の大学院や大学の専攻科で学ぶ方法などもある。

 

助産師は、看護師資格の取得が前提であるため、看護師と助産師の国家試験を同じ年に受験する場合、助産師国家試験に合格しても看護師国家試験が不合格だった場合、助産師資格を得られないことに注意が必要である

 

おもな助産師の資格取得ルート

 

助産師は、保健師助産師看護師法で「女性」と規定されており、男性は助産師になれない

 

欧米など男性が助産師になれる国もあり、日本でも2002年3月に看護師や保健師が性別を問わず名称が統一されるタイミングで、「男性助産師」の導入が検討された。しかし、賛否の声があり、妊産婦の抵抗も根強いものがあったため、見送られた。

 

看護職の中で性別による制限があるのは助産師だけである。

 

助産師は、病院やクリニックなどで働き、出産の支援や母子の保健指導を行う。おもに、次のような役割を担う。

 

【おもな助産師の業務】

  • 妊婦・産婦のケア(生活指導や健康指導、産前教育など)
  • 分娩介助
  • 褥婦のケア(母乳マッサージや授乳指導など)
  • 母子の保健指導

 

 

12_3 認定看護師

認定看護師は、専門分野で水準の高い看護が実践できる看護師を認定する資格のことである。1995年に日本看護協会が創設した。

 

5年以上の実務経験(うち3年以上は認定分野)があり、日本看護協会が指定する認定看護師教育機関で一定期間(6カ月~1年)の教育課程を修了し、認定審査に合格すれば取得できる。

 

5年ごとに更新が必要である。2020年4月現在、登録者数は2万721人

 

認定看護師の登録者数(2020年4月現在)

認定分野 登録者数
救急看護 1316
皮膚・排泄ケア 2521
集中ケア 1197
緩和ケア 2438
がん化学療法看護 1633
がん性疼痛看護 760
訪問看護 635
感染管理 2852
糖尿病看護 904
不妊症看護 177
新生児集中ケア 429
透析看護 266
手術看護 646
乳がん看護 367
摂食・嚥下障害看護 923
小児救急看護 262
認知症看護 1565
脳卒中リハビリテーション看護 759
がん放射線療法看護 321
慢性呼吸器疾患看護 319
慢性心不全看護 431

資格認定制度|認定看護師(日本看護協会)

 

 

12_3_1 教育制度の見直し

認定看護師の教育制度は2019年に見直され、2020年度から特定行為研修を組み込んだ新しい教育が始まった。現在の教育は2026年度に終了予定である。それに伴い、認定分野の一部が統合され、21分野から19分野に変更される。

 

当初は新しい教育制度に一本化する予定だったが、すでに認定資格を持つ看護師から存続を求める声が上がったため、これまでの資格の更新制度は残ることになった。そのため、今後、教育内容の異なる2種類の認定看護師が存在することになる。

 

すでに認定資格を持つ看護師でも、特定行為研修を受けて移行手続きを行えば、新しい認定看護師の資格を持つことも可能である。

 

 

12_4 専門看護師

専門看護師は、専門分野で水準の高い看護を効率よく行う技術や知識を深め、卓越した看護が実践できると認めた看護師を認定する資格のことである。1994年に日本看護協会が創設した。認定看護師より専門性が高く、難易度が高い資格である。

 

5年以上の実務経験(うち3年以上は専門分野)があり、看護系大学院修士課程の修了者で、日本看護系大学協議会が定める所定の単位を取得した上で認定審査に合格すれば取得できる。

 

5年ごとに更新が必要である。2020年6月現在、登録者数は2479人で、13の専門分野がある。
 

専門看護師の登録者数(2020年6月現在)

認定分野 登録者数
がん看護 881
精神看護 341
地域看護 27
老人看護 181
小児看護 254
母性看護 80
慢性疾患看護 206
急性・重症患者看護 271
感染症看護 77
家族支援 69
在宅看護 67
遺伝看護 6
災害看護 19

資格認定制度|専門看護師(日本看護協会)

 

 

12_5 特定行為研修

特定行為研修は、保健師助産師看護師法で定められた研修制度で、2015年に開始された。

 

正式名称は「特定行為に係る看護師の研修制度」。

 

資格ではないが、特定行為研修を修了すれば、医師の判断や指示をその都度受けずに、あらかじめ作成された手順書に基づいた一定の診療補助が行えるようになる

 

医師の負担を軽減するために考えられた制度で、資格化を求める声もあったが、医師会等の反発を受けて見送られ、最終的に現在の研修制度に落ち着いた。

 

特定行為は、21領域(区分と呼ばれる)38行為あり、研修は厚生労働省が指定する研修機関で受けることができる。

 

特定行為21区分38行為

特定行為区分 特定行為
呼吸器(気道確保に係るもの)関連 ●経口用気管チューブ又は経用気管チューブの位置の調整
呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連 ●侵襲的陽圧換気の設定の変更
非侵襲的陽圧換気の設定の変更
●人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整
●人工呼吸器からの離脱
呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連 ●気管カニューレの交換
循環器関連 ●一時的ペースメーカの操作及び管理
●一時的ペースメーカリードの抜去
●経皮的心肺補助装置の操作及び管理
●大動脈内バルーンパンピングからの離脱を行うときの補助の頻度の調整
心嚢ドレーン管理関連 ●心嚢ドレーンの抜去
胸腔ドレーン管理関連 ●低圧胸腔内持続吸引器の吸引圧の設定及びその変更
●胸腔ドレーンの抜去
腹腔ドレーン管理関連 ●腹腔ドレーンの抜去(腹腔内に留置された 穿刺針の抜針を含む。)
ろう孔管理関連 ●胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換
●膀胱ろうカテーテルの交換
栄養に係るカテーテル管理(中心静脈カテーテル管理)関連 ●中心静脈カテーテルの抜去
栄養に係るカテーテル管理(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル管理)関連 ●末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入
創傷管理関連 ●褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去
●創傷に対する陰圧閉鎖療法
創部ドレーン管理関連 ●創部ドレーンの抜去
動脈血液ガス分析関連 ●直接動脈 穿刺法による採血
●橈骨動脈ラインの確保
透析管理関連 ●急性血液浄化療法における血液透析器又は血液透析濾過器の操作及び管理
栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 ●持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整
脱水症状に対する輸液による補正
感染に係る薬剤投与関連 ●感染徴候がある者に対する薬剤の臨時の投与
血糖コントロールに係る薬剤投与関連 インスリンの投与量の調整
術後疼痛管理関連 ●硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与及び投与量の調整
循環動態に係る薬剤投与関連 ●持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整
●持続点滴中のナトリウムカリウム又はクロールの投与量の調整
●持続点滴中の降圧剤の投与量の調整
●持続点滴中の糖質輸液又は電解質輸液の投与量の調整
●持続点滴中の利尿剤の投与量の調整
精神及び神経症状に係る薬剤投与関連 ●抗けいれん剤の臨時の投与
●抗精神病薬の臨時の投与
●抗不安薬の臨時の投与
皮膚損傷に係る薬剤投与関連 ●抗癌剤その他の薬剤が血管外に漏出したときのステロイド薬の局所注射及び投与量の調整

特定行為区分とは(厚生労働省)

 

国は2025年までに特定行為研修の修了者を10万人養成したい考えだが、2019年9月末時点で1,833人にとどまる。

 

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13 看護師の働き方

看護師の働き方は、夜勤があるのが大きな特徴である。そのため、シフトを組んで交代制で勤務する。

 

 

13_1 シフト

医療機関によってシフトの組み方は異なるが、2交代制と3交代制の大きく2種類に分かれている。

 

2交代制は1日の勤務を「日勤」と「夜勤」の2つに分ける方法で、3交代制は「日勤」「準夜勤」「深夜勤」の3つに分ける方法である。

 

2交代制は長時間の夜勤となるが夜勤の回数が少なく、3交代制は夜勤の時間は短くて済むが勤務の間のインターバルが短くなり、それぞれにメリット・デメリットがある。

 

看護師の夜勤シフト例(2交代制、3交代制)

 

 

13_2 夜勤

夜勤は看護の仕事で欠かせないが、睡眠パターンの変調で生活リズムが崩れやすく、看護師自身の健康への影響が心配されている。

 

しかし、現在、看護師の夜勤時間の上限を規制する法律はなく、診療報酬上で「看護師1人当たりの月平均夜勤時間を72時間以内にする」と定めた、いわゆる「72時間ルール」があるだけである。

 

このルールも夜勤をする看護師の平均時間の上限であって、一人ひとりの看護師の夜勤時間を制限するものではない。

 

そのため、日本看護協会は「3交代制で月8回以内を基本とする」「勤務のインターバルは11時間以上空ける」など、夜勤や交代制勤務のシフトの考え方を示したガイドラインを出すなどして、看護師の夜勤の負担を軽減するよう働きかけている。

 

ちなみに、夜勤のみ働く「夜勤専従看護師」という働き方もある。夜勤手当が多く、日中は自由な時間を持てるため、希望する看護師もいる。

 

看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン(日本看護協会)

 

 

13_3 日勤

子育てや介護などが理由で、日勤のみを希望する看護師は多い。

 

日本看護協会によると、求職者の35.2%の看護職が日勤のみの仕事を希望している。しかし、日勤のみの求人は病院の求人全体の約15%で、狭き門となっている。

 

病院勤務以外の日勤のみの仕事としては、クリニックや健診センター、介護施設、保育園などがある。

 

平成29年度ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人に関する分析報告書(日本看護協会)

 

 

13_4 派遣

看護師の派遣は、2006年から一部条件付きで認められている。

 

厚生労働省によると、2018年末で3732人の看護師が派遣として働いている。就業中の看護師全体の0.3%に当たる。

 

看護師が派遣として働けるのは次のような場合である。

 

  • 直接雇用を前提として一定期間、派遣として就業する紹介予定派遣の場合
  • 産前産後休業・育児休業・介護休業の代替要員の場合
  • 医療を提供する施設(病院やクリニックなど)以外の社会福祉施設など

 

労働者の派遣禁止業務(日本人材派遣協会)

 

2020年度に労働者派遣法が改正され、派遣労働者の賃金は、同じ業務を行うフルタイムの労働者と「均等・均衡待遇」(不合理な待遇の禁止)とするか、労使協定で「同等以上」を確保することが求められるようになった。

 

派遣労働者の同一労働同一賃金について(厚生労働省)

 

 

13_5 非常勤

看護師は人手不足のため、アルバイトやパートなど非常勤のニーズもある。

 

働く場所としては、クリニックや健診センター、訪問看護ステーションなどがある。また、病院の夜勤専従という選択肢もある。

 

 

13_6 副業

公立病院などに勤務する看護師は、公務員として副業禁止違反になるので副業はできないが、民間病院では病院によって可能なところもある。

 

看護師免許を生かした副業は、イベント待機スタッフや旅行に同行するツアーナース、健診センターやクリニック、デイービスや訪問入浴のアルバイトなどがある。また、医療関連のライターやイラストレーターなども人気がある。

 

 

13_7 海外で看護師として働く

社会のグローバル化に伴い、海外で働く看護師もいる。

 

米国のようにその国の看護師国家試験に合格する必要がある国もあれば、日本で看護師免許を取得していれば資格審査や語学力審査に合格すれば就労可能な国もある。

 

また、オーストラリアやニュージーランドのように大学を卒業し看護学士の取得をすることが条件の一つとされる国もある。語学力の基準は国によって異なるが、英語でIELST7.0以上のレベルを求める国が多い。

 

 

海外で看護師として働くには…

※日本の看護師免許を取得している場合

資格審査・試験 語学力審査
英国 NMC(看護助産師協議会)のオンライン書類審査を通過し、専門分野の能力テストおよび実技テストに合格する必要がある。 IELTS 7.0以上
米国 NCLEX-RN(米国の看護師国家試験)に合格する必要がある。州によって異なるが、多くの州でCGFNS(外国看護学校卒業生審議会)の審査合格がNCLEX-RNの受験要件となる。 TOEIC 725点以上
カナダ NNAS(カナダの看護審査機関)の審査を通過した後、各州の看護協会の基準を満たす必要がある。基準は州によって異なる。 IELTS 7.0以上(※州によって仏語)
オーストラリア オーストラリア看護師認定協会に申請し、知識をアセスメントする試験に合格した上で、指定施設で技術のアセスメントおよびオリエンテーションを受ける必要がある。ただし、日本で看護師資格だけでなく、大学を卒業し、看護学士を取得していることが条件。 IELTS 7.0以上
ニュージーランド ニュージーランド看護協会に申請し、指定学校でニュージーランドで仕事をするスキルがあるか審査する能力査定コースを受講する必要がある。ただし、日本で看護師資格だけでなく、大学を卒業し、看護学士を取得していることが条件。 IELTS 7.0以上

Register as a nurse or midwife if you trained outside the EU/EEA : step by step(The Nursing and Midwifery Council)、How to Work as a Nurse in the U.S.(CGFNS International)、Are you ready to apply for registration as a nurse in Canada?(National Nursing Assesment Service)、Overseas qualified practitioners(Australian Health Professional Regulation Agency)、Information for Overseas Nurses & Midwives seeking Employment in New Zealand(New Zealand Nurses' Organisation)

 

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14 看護師の離職率

看護師の離職率は、日本看護協会の2019年病院実態調査によると、2018年度は10.7%。ここ数年は10~11%で横ばいの傾向である。

 

一方、厚生労働省の平成30年雇用動向調査によると、2018年の労働者全般の離職率は11.3%だった。調査方法が異なるため、一概には比較できないが、看護師の離職率は特別高いわけではない

 

看護師の離職率

2019年病院看護実態調査(日本看護協会)

平成30年雇用動向調査(厚生労働省)

 

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15 看護師の歴史

15_1 世界

看護の歴史は古く、古代から中世にかけ、ヨーロッパでは教会や修道院で病人やけが人の手当てや世話として行われていた。18世紀になり、医学の進歩や産業革命の影響で、宗教から独立し、病院や居宅で看護活動が行われるようになっていった。

 

1850年代に入ると、後に“近代看護教育の母”と呼ばれるフローレンス・ナイチンゲールが英国に登場。職業としての看護を確立し、その教えが広く世界に受け継がれていく。

 

近代看護教育の母と言われるナイチンゲールの実績

 

 

15_2 日本

日本でもナイチンゲールの影響を受け、1885年に有志共立東京病院看護婦教育所(現・慈恵看護専門学校)が誕生。さらに、1886年に京都看病婦学校と桜井女学校付属看護婦養成所、1890年に博愛社(現・日本赤十字社)など、複数の看護学校が看護教育をスタートさせた。

 

しかし、当時は統一された教科書はなく、職業としての制度もなかった。

 

その後、1915年に「看護婦規則」が制定され、看護婦の定義や資格が法律として整備された。

 

これにより、看護師となるには、

 

  • 看護学校で教育を受けるか
  • 病院などで見習看護婦として一定期間修行してから試験に合格するか

 

いずれかの方法で免許を取得することが必要になった。

 

日本で看護師が国家資格になるまで/1885年:有志共立東京病院看護婦教育所(現・慈恵看護専門学校)設立/1885年:有志共立東京病院看護婦教育所(現・慈恵看護専門学校)設立/1886年:京都看病婦学校設立、桜井女学校付属看護婦養成所設立/1890年:博愛社(現・日本赤十字社)看護教育開始/1899年:産婆規則(1947年~助産婦規則)制定/1915年:看護婦規則制定/1941年:保健婦規則制定/1948年:保健婦助産婦看護婦法(2001年~保健師助産師看護師法)制定/1950年:第1回看護婦国家試験実施/1886年:京都看病婦学校設立、桜井女学校付属看護婦養成所設立/1890年:博愛社(現・日本赤十字社)看護教育開始/1899年:産婆規則(1947年~助産婦規則)制定/1915年:看護婦規則制定/1941年:保健婦規則制定/1948年:保健婦助産婦看護婦法(2001年~保健師助産師看護師法)制定/1950年:第1回看護婦国家試験実施

 

教育開始当初、教育の内容や修業年が学校によって異なり、教育の質にばらつきがあった。また、太平洋戦争が激しくなると、従軍看護婦を増やすために短期間で養成するようになるなど、質の低下も問題となった。

 

終戦後、連合国軍司令部(GHQ)の指導による影響もあったため、ようやく日本の看護教育が改革され、日本における看護教育が確立されていった。

 

そして、看護教育を修了した上で、看護師国家試験に合格する現在の資格職となった。

 

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参考文献

  • 1)保健師助産師看護師法60年史編纂委員会編.保健師助産師看護師法60年史-看護行政のあゆみと看護の発展.日本看護協会出版会,2009,416p.
  • 2)山下麻衣.看護婦の歴史-寄り添う専門職の誕生.吉川弘文館,2017,206p.

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