最終更新日 2018/05/08

脳腫瘍

脳腫瘍とは・・・

腫瘍(のうしゅよう、brain neoplasm 、brain tumor)とは頭蓋内に発生した新生物の総称である。

 

種類

脳には機能が局在しているため、腫瘍の発生部位に応じた症状が出現する。脳腫瘍は頭蓋内組織から生じる「原発性脳腫瘍」と他臓器の悪性新生物が脳に転移して生じる「転移性脳腫瘍」に分けられる。脳腫瘍全体のうち、82%が原発性脳腫瘍である。原発性脳腫瘍はさらに、髄膜、下垂体、脳神経、胎生期遺残組織に由来する「脳実質外腫瘍」とグリア細胞、神経細胞、胎生期遺残組織に由来する「脳実質内腫瘍」に分けられる。脳実質外腫瘍は良性のものが多く、圧排性(周りの組織を押しのけるように成長する)で緩徐に進行することが多い。一方、脳実質内腫瘍は悪性のものが多く、浸潤性で手術による全摘術は困難であり、再発しやすく、放射線療法や化学療法も行われる。

 

また脳腫瘍はWHO(世界保健機関:World Health Organization)による組織型分類が用いられ、155以上の組織型が含まれるが、そのうち、髄膜腫、神経膠腫、下垂体腺腫、神経鞘腫の順に多く、4つで全体の8割を占める。WHOの分類では、組織型だけでなく、臨床悪性度も考慮して悪性度のグレードを4段階で評価している。グレード1は良性で、健常人と同程度の平均生存期間であるが、グレード4になると極めて悪性で、膠芽腫の生存期間中央値は1年程度である。

 

なお、小児と成人で脳腫瘍の頻度や好発部位は異なる。成人では髄膜腫が最も多く、ついで神経膠腫、下垂体腺腫、神経鞘腫の順であるのに対し、小児ではテント下に発生することが多く、組織型としては神経膠腫が最も多く、続いて胚細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫の順になっている。

 

症状

脳には機能が局在しているため、腫瘍の発生部位に応じた症状が出現する。脳腫瘍の症状としては、頭痛嘔吐、うっ血乳頭といった頭蓋内圧亢進症状や腫瘍が存在する場所に応じた局在症状が認められる。

 

治療

治療としては、手術療法と放射線療法、化学療法が挙げられる。手術に関しては脳機能を温存しつつ腫瘍をできるだけ除去するために、ナビゲーションシステムや内視鏡下手術、モニタリング手術や覚醒下手術などが行われる。放射線治療は通常照射と定位照射の二つの方法が用いられる。多くの場合、正常組織への損傷を抑えるため分割照射が用いられる。化学療法は手術療法の後に用いられることが多く、放射線療法との相乗効果が期待される。2006年にテモゾロミド(商品名テモダール®)という経口薬剤が販売開始され、悪性度の高い膠芽腫などに用いられる。

執筆: 神谷侑画

神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター副医長

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