最終更新日 2019/11/21

褥瘡

褥瘡とは・・・

褥瘡(じょくそう、bedsore)とは、体重などにより長時間圧迫された皮膚や皮下組織、筋肉への血流が低下し、これらの組織が壊死を起こした状態である。床ずれともいう。

 

原因

褥瘡の広さと深さは圧迫される強さと持続時間、皮膚のずれの範囲と程度によると考えられている。寝返りをうつ、座り直すといった同じ部位に長時間の圧迫が加わらないように、自ら体位変換を行うことができない人に発生する。特に、仙骨部、肘、かかとなど、骨が突出した部位はより褥瘡ができやすい。

 

症状

始めは皮膚の一部が赤味を帯びた状態だが、進行すると傷ができ、水ぶくれや膿がでることがある。更に進行すると組織が壊死し、悪臭を伴って傷口が広がったり、骨が見えてしまったりする。このような症状になると、医療的処置が必要となる。疼痛が主訴である。

 

検査・診断

患者の圧迫部の皮膚に発赤を見つけたとき、それが一過性か褥瘡の初期か鑑別を行う必要がある。体位変換後に発赤が消えているか観察し、発赤があれば褥瘡を考えるとよい。

 

治療

褥瘡の治療は栄養状態や基礎疾患、感染の有無を鑑みて行われる。
褥瘡の治癒過程を評価するツールとしてDESIGN-R®がある。ただし、受傷から悪化する急性期は使用できないことに注意が必要である。DESIGN-R®は、褥瘡の重症度を評価と同時に、治療過程の経過も見られる特徴がある。

 

褥瘡が発生したときは、状態に適したマットレスやクッションを選択したり、体位変換を実施したりして皮膚への負担を軽減させることで褥瘡の悪化を防ぐ。
褥瘡の発生部位とその周りを消毒・洗浄して患部と皮膚とを清潔にし、その後クリームなどで保湿し、褥瘡の原因となる排泄物などから保護する。
患者の栄養状態の改善のためカロリーやタンパク質の投与の見直しを行い、栄養剤や栄養補助食品を利用することもある。

 

壊死組織がある場合は、肉芽組織ができない上に細菌感染の温床となるため、デブリードマン(壊死組織の除去)を行う。メスやハサミを用いて外科的に処置を行う場合や、ドレッシング材や外用薬を用いる場合もある。

 

褥瘡からの感染が疑われる場合は抗菌薬の全身投与を行う。

 

予防

褥瘡の発生には褥瘡が生じる部位の皮膚の状態、患者の栄養状態、体位変換などによる介護や看護の状況が関わっている。

 

長時間の圧迫を避けるために定期的な体位変換を行ったり、体圧分散寝具を使用したりするなどして皮膚への圧迫を軽減し、褥瘡の発生を防ぐ。体位変換後を行う際は、皮膚やシーツにしわがないか注意が必要である。しわは皮膚にずれを生じ、ずれのある皮膚では血管が引き伸ばされるため、通常の約1/2~1/6程度の圧迫で褥瘡ができてしまうからである。

 

栄養管理も褥瘡予防には重要であり、低栄養の回避、改善を行う。

 

スキンケアも必要とされ、皮膚を清潔に保ち、保湿クリーム等を塗布する。骨が突出した部位には、予防のためのポリウレタンフィルムドレッシング材などを貼付することもある。

執筆: 上村恵理

長崎大学病院 高度救命救急センター助教

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