感染症とは・・・
感染症(かんせんしょう、infectious disease)とは、細菌、ウイルス、真菌、原虫、寄生虫などの病原体が体内で増殖し、症状を引き起こすことである。
原因
原因となる病原体は、ヒトからヒト、動物、植物、昆虫、食べ物、水などを介して体内へ入り込むが、自分自身が元々持っている病原微生物が、免疫の低下により、感染症を引き起こすこともある(日和見感染症)。なお、生き物ではないが、タンパク質性感染粒子であるプリオンも感染症の原因となる。
症状
症状は発熱、気道症状、消化器症状など病原微生物と感染臓器によってさまざまである。まれに症状を起こさないまま病原体が死滅したり、潜伏したりする場合もある(不顕性感染)。
感染経路
ヒト同士の間でうつる感染症は、病原体によって感染の仕方が異なり、それによって感染予防策も変化する。
(1)接触感染
院内で問題となるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの多剤耐性菌、腸管感染症(クロストリジオイデス・ディフィシル菌、病原性大腸菌、ノロウイルスなど)、RSウイルス、疥癬、ウイルス性結膜炎などは、感染者に直接触れる、あるいは感染者が触れたものに接触することで接触感染する。
感染予防には手指衛生のほか、手袋、ガウンなどを着用する必要がある。
(2)飛沫感染
インフルエンザ菌、ジフテリア、マイコプラズマ、百日咳、溶連菌など呼吸器感染症を起こす細菌やインフルエンザ、アデノ、ライノ、ムンプス、風疹などのウイルスは、患者の咳、くしゃみなどに含まれる飛沫を口や鼻から吸い込むことで飛沫感染する。
患者の咳エチケット(咳をするとき手で覆う、マスクをする)や、周りの人のマスクの着用が感染予防に重要である。
(3)空気感染
麻疹、水痘、結核菌、SARSコロナウイルスは、病原体を含む飛沫が乾燥した小さな飛沫核を吸い込むことで空気感染する。
なお、感染者は空気が外部に漏れないような独立空調の陰圧個室に収容され、免疫を持たない周りの人はN95マスクを着用する必要がある。
(4)経口感染
食べ物から感染するもの(経口感染)には、病原体そのものが症状を引き起こす感染型(サルモネラ菌、カンピロバクター、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌O157など)と菌のつくる毒素が症状を引き起こす毒素型(セレウス菌、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌など)がある。
感染予防には手指衛生が重要となる。
(5)その他
ヒト以外の脊椎動物から感染する感染症を人畜共通感染症という。クラミジアによるオウム病、エキノコックス属条虫の幼虫によるエキノコックス症、リケッチアによるQ熱、ツツガムシ病、日本紅斑熱、ブルセラ属菌によるブルセラ症などがある。
その他、破傷風など土の中に存在する病原体が体内に入り込んで症状を引き起こすものや、自然界に存在する真菌や原虫が感染を引き起こす場合もある。
生体の働き
上記、病原体が皮膚や眼、気道、口腔、消化管、泌尿生殖器などの粘膜のバリアを破って体内に侵入すると、免疫が防御機構として働く。免疫には、病原体の侵入に対して即座に反応する、非特異的な「自然免疫」と、少し遅れるが病原体それぞれに対抗して働く特異的な免疫である「獲得免疫」の二つが免疫反応の柱となる。
このような免疫反応が働く結果、感染症としてさまざまな症状が現れる。免疫力が低下すると、普段はヒトにとって脅威とならない弱毒微生物にも感染し、発症する。