最終更新日 2019/08/20

サルモネラ菌

サルモネラ菌とは・・・

サルモネラ菌(さるもねらきん、Salmonella)とは、グラム陰性桿菌の一種である。腸炎を起こすSalmonella entericaのほかに腸チフスの原因となるS. typhiやパラチフスの原因となるS. paratyphiがある。腸チフスは三類感染症に指定されている。

 

一般的に「サルモネラ感染症」という場合は、食中毒のひとつである非チフス性サルモネラ感染症(S. typhi やS. paratyphi以外)を指していることが多く、以下に解説する。

 

感染経路

サルモネラ菌は、あらゆる動物や両生類、爬虫類が自然に持っている。特に家畜の腸管で保菌されており、汚染された家畜由来の食物の摂取で感染する。特に卵や鶏肉からの感染が多い。小児ではミドリガメなどの爬虫類との接触による感染が報告されている。

 

潜伏期間

6~72時間(多くの場合12~36時間)

 

症状

嘔気、嘔吐下痢(4~10日、ときに血性)、腹痛、発熱。

 

注意を要する場合

細胞性免疫不全(HIV感染症悪性リンパ腫、抗がん剤やステロイドなど免疫抑制剤の使用、骨髄移植後など)がある患者や1歳未満の乳児、高齢者では菌血症など重症になりやすい。高齢者では大動脈の硬化部分に菌が住み着き感染性動脈瘤となり手術を要する場合がある。

 

診断

血液、便などの培養検査で菌を検出する。

 

治療

健康な患者では特別な治療を要さず、点滴や経口哺水で電解質脱水の対処を行えば、自然に治癒する。菌血症などの重症例や重症化する危険の高い患者でのみ、ニューキノロン系などの抗菌薬の投与を行う。

 

予防

熱には弱いが、乾燥や低温には強い菌である。食肉や卵を触った後の手洗い、調理器具の洗浄、卵の期限内消費、調理の際の十分な加熱、サルモネラ感染症をもたらす可能性のあるペット動物(猫、犬、カメなど)との接触後の手洗いが重要である。

 

健康保菌者

本人には症状のない健康保菌者として排菌し続ける場合がある。また、幼少期の子ども、高齢者、免疫不全の患者など、健康にリスクのある人々では、ときに抗生物質による治療が必要となる1)。なお、食品従事者の保菌者は排菌が止まるまで就業停止となるため、やむを得ず治療する必要がある。


1)厚生労働省検疫所FORTH.サルモネラ症(チフス以外)(ファクトシート).

執筆: 柳井真知

神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター医長

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