最終更新日 2019/02/05

HIV感染症

HIV感染症とは・・・

HIV感染症(えいちあいぶいかんせんしょう、HIV infection)とは、HIV(human immunodeficiency virus:ヒト免疫不全ウイルス)が、免疫担当細胞(主としてCD4陽性リンパ球)に感染するために、免疫系が徐々に破壊されていく進行性の伝染性疾患である。

 

原因

HIV感染者の体液(血液、精液、腟分泌液など)に含まれるHIVが、粘膜や傷口から体内に入ることで感染する。

 

症状

無治療の場合、図1のような(1)感染初期〈急性期〉、(2)無症候期、(3)AIDS発症期の経過をたどる1)。HIV RNA量はHIV感染症の進行速度を示しており、CD4陽性リンパ球数は感染者の免疫状態を示している。

 

図1HIV感染の経過

 

(1)感染初期〈急性期〉

HIV感染初期〈急性期〉には、インフルエンザのような頭痛、発熱、関節痛、リンパ節腫脹、筋肉痛、皮疹などの症状が50~90%の患者に出現するといわれている。ほとんどの場合、数日から数週間程度で症状は自然に改善し、消失する。

 

(2)無症候期

感染初期〈急性期〉の後、全く症状のない「無症候期」が、数年から人によっては数十年続く。無症候期は、症状はなくてもHIVの感染は続いており、CD4陽性リンパ球が減少して、次第に免疫が低下し、無治療であればいずれ「エイズ(AIDS)発症期」に至る。

 

(3)AIDS発症期

IDS発症期は、免疫が低下することによって日和見感染症(免疫低下に伴って発症する感染症)や関連した悪性腫瘍を発症する。CD4陽性リンパ球の数によって発症し得る疾患が異なる(図2)。

 

図2AIDS発症期の日和見感染症の発症とCD4陽性リンパ球数

AIDS発症期の日和見感染症の発症とCD4陽性リンパ球数

出典:国立感染症研究所ホームページ(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/400-aids-intro.html

 

治療

現在のところ、根本的な治療薬やワクチンはない。AIDSの発症を遅らせるため、もしくは症状を遅らせるために抗HIV療法(ART;antiretroviral therapy)が行われる。患者のアドヒアランスを尊重して行うことが望ましいとされている。

 

予防

感染経路はほとんどが性行為を介している。すなわちコンドームを正しく使用し、パートナーの精液、腟分泌液、血液などに直接触れないようにすることが重要な感染予防策である。

 

予後

かつては不治の病として恐れられたが、スクリーニング検査の発達による早期診断、HIVに対する抗ウイルス薬の開発、日和見疾患の早期発見、治療の進歩により良好な生命予後が期待できるようになった。

日本の新規発症患者(2016年)は、HIV感染症は1011件、AIDSは437件でいずれも横ばいである2世界の新規HIV患者数は180万人を超えるが、徐々に減る傾向にある。

 

引用参考文献
1)日本エイズ学会 HIV感染症治療委員会.HIV感染症治療の手引き.第21版.(PDF)
2)吉村和久.AIDS(後天性免疫不全症候群)とは.国立感染症研究所.

執筆: 柳井真知

神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター医長

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