悪性リンパ腫とは・・・
悪性リンパ腫(あくせいりんぱしゅ・malignant lymphoma)とは、白血球の一種であるリンパ球に由来する悪性腫瘍の総称である。リンパ節、脾臓、扁桃などが腫大する場合が多い。血液細胞由来の癌の中で最も発症率が高く、日本での罹患率は人口10万人当たり20程度で、増加傾向にある。小児、若年者にも発生するが、60~70歳代がピークである。
発症要因は不明なものも多いが、遺伝子の変異や染色体異常から、遺伝性の要素や、病型によってはEB(エプスタイン・バー/Epstein-Barr)ウイルスやC型肝炎ウイルス、ヘリコバクター・ピロリなど、ウイルスや細菌の感染が関与する可能性も考えられている。
確定診断
・リンパ節生検による病理学的検査
・染色体検査
・遺伝子検査
・フローサイトメトリー(細胞の解析方法の一つ) など
病理検査で、ホジキン(Hodgkin)細胞、リード・シュテルンベルグ(Reed-Sternberg)細胞といった特徴的な細胞がみられるものをホジキンリンパ腫とし、それ以外を非ホジキンリンパ腫と分類する。欧米と異なり、日本では非ホジキンリンパ腫が多く約90%を占める。
ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫
ホジキンリンパ腫は、古典的ホジキンリンパ腫と結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫、大きく2種類に分けられる。非ホジキンリンパ腫は、がん化したリンパ球の種類(T細胞、B細胞、NK細胞)、および成熟度、染色体検査、遺伝子検査の結果により細かく分類される。なかでもB細胞由来のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma、DLBCL)と、濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma、FL)の頻度が高い。病型によって進行度、悪性度が決まる。
症状
・頸部、腋窩、鼠径リンパ節の通常無痛性の腫脹
・節外病変(脳、肺、消化管、皮膚、骨髄などリンパ節以外の臓器にも腫瘍が生じる)では、病変の占拠部位によって、重篤な症状(麻痺や気道閉塞、消化管穿孔、貧血等)があらわれることがある。
・B症状(発熱、体重の減少、盗汗[大量の寝汗])
ホジキンリンパ腫では、ペル・エプスタイン熱(Pel-Ebstein)と言われる発熱と解熱の繰り返しが見られることもある。
予後判定
進行期ホジキンリンパ腫
国際予後スコア(IPS・International Prognostic Score):年齢、性別、血清アルブミン値、ヘモグロビン値、病期、白血球数、リンパ球数
非ホジキンリンパ腫(特にDLBCLなどの急速進行型、中、高悪性度)
国際予後指数(IPI・International Prognostic Index):非ホジキンリンパ腫(特にDLBCLなどの急速進行型、中、高悪性度)における予後推定モデル。①年齢(60歳を超える)、②血清LDH値(正常上限を超える)、③Performance Status(日常生活の制限の程度を0~4で表現。2以上)、④病期(Ⅲ期以上)、⑤リンパ節以外の病変数(2以上)、の5項目で評価する。項目数0~1は低リスク、2は低中リスク、3は低高リスク、4~5は高リスクに分類される。
治療方針
病理学的分類と進行度(病期分類)、リスク分類にもとづいて決定されるが、基本的に抗がん剤や分子標的薬による薬物療法(DLBCLに対するR-CHOP療法など)と放射線療法が中心となる。年齢や再発の可能性に応じて造血幹細胞移植が行われる場合がある。悪性度が低く進行が遅いと予測される場合は治療を行わず経過観察する場合もある。治療効果はCTやPET-CTによる病変の縮小、消失の有無で判定する。