呼吸器科(呼吸器内科・呼吸器外科)看護師のお仕事とは?|診療科別・ナースのお仕事カタログ【3】

現役ナースへのインタビュー・アンケート取材から、呼吸器科ナースのお仕事について紹介します。

 

 

診療科別・ナースのお仕事カタログ【3】

呼吸器科(呼吸器内科・呼吸器外科)の看護師のお仕事とは?

◆目次

呼吸器科ナースの役割(内科・外科共通)

1)呼吸生理の把握

2)胸腔ドレーンの挿入・抜去の介助

呼吸器内科と呼吸器外科の違いとそれぞれの対象疾患

呼吸器“内科”ナースの役割

1)「間質性肺炎」「気管支炎」「喘息」などの内科的治療の介助

2)肺がん患者さんへの化学療法・放射線療法の副作用のケア

3)肺がん患者さんへの緩和ケア

呼吸器“外科”ナースの役割

1)肺がん・気胸などの術前検査・術後管理

2)「開窓術」の際のガーゼ交換、入浴介助

「呼吸器科を極めたい!」どこで働けばいいの?

呼吸器内科・外科の勤務で身につく看護技術って?

呼吸器科ナースの1日ってどんなタイムテーブル?

呼吸器科ナースってこんなイメージ

呼吸器科のベテランナースってこんな人!

呼吸器科ナース注目のスキルアップ資格

呼吸器科ナースのキャリアプラン例

呼吸器科ナースあるあるエピソード

先輩から後輩へ!呼吸器科ナースを目指すあなたへのアドバイス

【Q1】呼吸器内科・外科の新人が最初に学ぶべきことは何ですか?

【Q2】呼吸器内科・外科で、大変だなぁと思うことを教えてください。

呼吸器科ナースが体験した患者さんとのエピソード

 

 

呼吸器科ナースの役割(内科・外科共通)

呼吸器科のナースには、どのような役割があるのでしょう?

ここでは、特徴的な役割や、よく行う手技等をご紹介します。

 

 

1)呼吸生理の把握

呼吸器科ナースにとって、呼吸生理の把握は内科・外科ともに必須です。

呼吸生理とは、「ガス交換・運搬」「換気量と死腔・換気血流比」「肺胞気-動脈血酸素分圧較差(A-aD02)」などのこと。

呼吸器疾患の患者さんの看護にあたり基礎となる知識です。

 

 

2)胸腔ドレーン挿入・抜去の介助

胸腔ドレーン」とは、胸腔内に溜まった空気や液体を体外に排出する治療です。

看護師は、物品出しや患者さんへの声掛け、バイタルサインのチェックを行います。

 

 

 

呼吸器内科と呼吸器外科の違いとそれぞれの対象疾患

1)呼吸器内科の概要

呼吸器内科は、基本的には慢性期の病棟です。

そのため、1人の看護師が担当する患者さんの人数も多くなります。

がんの患者さんの場合には、抗がん剤治療(化学療法)のため、長期的に治療を行う患者さんの割合が多く、比較的病棟はなごやかな雰囲気だという声もきかれました。

また、病棟で終末期・看取りを迎える患者さんもいらっしゃいます。

 

2)呼吸器外科の概要

一方で、呼吸器外科は急性期です。

入院中の患者さんは、おもに周術期の患者さんとなります。

しかし、手術適応になった患者さんに対して、術後の抗がん剤治療(化学療法)や放射線治療まで一貫して外科で行う場合もあります。

 

3)それぞれの対象となる疾患

それぞれの対象となるおもな疾患を以下に挙げます。

 

◆呼吸器“内科”の対象となる疾患

・肺がん(手術適応でない腫瘍)

・転移性肺腫瘍

・胸腺腫

・COPD(慢性閉塞性肺疾患=肺気腫、慢性気管支炎)

肺炎

・急性気管支炎

・肺膿瘍

・気管支喘息

喘息

・気管支拡張症

・胸膜炎

睡眠時無呼吸症候群

など

 

◆呼吸器“外科”の対象となる疾患

・手術適応の腫瘍(肺がん、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍、胸腺腫瘍、胸膜腫瘍、悪性胸膜皮腫、悪性中皮腫、など)

・術後合併症(膿胸、肺炎、など)

気胸

など

 

 

呼吸器“内科”ナースの役割

呼吸器”内科”は、慢性期の病棟になるため病棟の雰囲気は、比較的穏やかだといいます。

しかし、看護師1人あたりの受け持ち患者さんが多く、「業務が多い」という印象を語る看護師さんもいます。

受け持ったそれぞれの患者さんの日々のスケジュールを頭の中で調整しながら業務を行います。

 

 

1)「間質性肺炎」「気管支炎」「喘息」などの内科的治療の介助

呼吸器“内科”には、手術を必要としない疾患の治療を行う患者さんが入院しています。

肺炎(間質性肺炎)の患者さんのケアを行う場合、酸素吸入療法などを必要とします。

 

酸素吸入療法には、鼻カニューレマスク、リザーバーマスクを使用します。

酸素流量計の接続や、鼻カニューレの装着は、呼吸器科でよく行う手技です。

 

 

 

2)肺がん患者さんへの化学療法・放射線療法の副作用のケア

呼吸器“内科”ナースとしては、「肺がん」の患者さんのケアはおさえておくべきところです。

 

肺がんの中でも、進行がん(ステージⅢA以上)の患者さんが、手術適応外で内科に入院となるケースが多くなります。

外科的治療(手術)が適応となる患者さんは、呼吸器“外科”に入院し、周術期を過ごすのが通常だからです。

 

そのため、呼吸器内科に入院している肺がん患者さんのおもな治療は、抗がん剤治療(化学療法)と放射線治療となります。

 

抗がん剤治療(化学療法)と放射線治療にはほとんどの場合、副作用が生じます。

 

副作用のケアも、呼吸器内科ナースの大切な役割です。

 

抗がん剤治療(化学療法)放射線治療で生じるおもな副作用

・吐き気、嘔吐

下痢、便秘

・倦怠感

・食欲不振

・口渇、口内炎、味覚障害

皮膚

・脱毛

感染症

貧血

出血

・しびれ(神経障害)

など

(国立がん研究センター:がん情報サービスを参考に作成)

 

 

3)肺がん患者さんへの緩和ケア

呼吸器内科に入院中の進行肺がんの患者さんの中には、終末期となる方もいらっしゃいます。

残された時間を苦痛なく過ごしてもらうための緩和ケアも行います。

 

◆呼吸器内科看護師の声

呼吸器内科への入院当初は、自立度が高く自身で歩いて売店に行けたり、入浴も自身で行える方もいます。

しかし、1~3年、長いときは5年以上にわたり継続して治療が行われる中でも、完全にはがんの進行を止めることができない場合も少なくありません。

 

その年月の中で、患者さんのADLは低下し、治療の副作用もあらわれます。

初回の入院の際は自立度が高く歩行が可能な方も、2回目以降の入院ではストレッチャーや車椅子で来院される場合もあります。

 

呼吸器内科の病棟では、患者さんのADLが低下していくのをまのあたりにする現場でもあります。

そのことに覚悟をもって、長い治療の間、患者さんの苦痛と症状を緩和することが、看護師の大切な役割です。

 

また、肺がんの進行により、「胸水貯留」「肺炎」などの症状が現れることもあります。

肺機能の低下によって、ちょっとした体動で呼吸困難を感じる患者さんもいます。

「動くと苦しい」という状態の患者さんは、ベッド上で安静がとれるように、看護師が介助を行います。

 

 

呼吸器“外科”ナースの役割

1)肺がん・気胸などの術前検査・術後管理

呼吸器“外科”に入院する患者さんは、基本的には周術期の患者さんです。

そのため、呼吸器外科のナースは、術前検査の介助を行います。

 

【介助する主な検査】

・胸部単純写真

・胸部CT検査

・胸部MRI検査

・気管支鏡検査

・肺機能検査

・CTガイド下肺生検

など

 

また、術前のオリエンテーションも行います。

 

術後管理も重要な役割です。

「胸腔ドレーン」の挿入・抜去の介助と、ドレーン挿入中の観察、胸水・膿胸のケア、呼吸管理を行います。

また早期離床のためのケアも重要です。

 

術後の患者さんは、人工呼吸器や酸素吸入器を使用している場合もあります。

それらの機器の管理、患者状態の把握などに気を配ります。

 

また、人工呼吸器から離脱しても、合併症併発の危険性が残っているため、手技による吸引も呼吸機能保全のための重要な役割です。

 

 

2)「開窓術」の際のガーゼ交換、入浴介助

開窓術とは、胸腔内に貯留した胸水が膿んでしまった場合(膿胸)に行う外科療法の1つです。

肋骨を切除し、手術により胸に大きな穴を開けて排膿を促します。

 

最初は医師が毎日ガーゼ交換を行いますが、徐々に看護師が行うケアも増えていきます。

 

この間、数カ月にわたって穴を開けたままにすることもあります。

「ガーゼを毎日交換」「シャワー介助」というのが看護師が行うケアです。

これらのケアを必要とする患者さんの数は少ないですが、呼吸器外科の対応となる症例です。

 

胸腔内の膿がなくなり、治療が完了したら形成外科医とともに、胸の充填をしていきます。

 

◆呼吸器外科看護師の声

新卒で呼吸器外科に配属になって、最初に開窓術に立ち会ったときはほんとうに驚きました。

学生時代は経験していませんし、初めて見る症例でした。

 

肋骨を切除し、胸腔を露出します。

そこにガーゼを詰めて、膿が落ち着いてきれいになったら形成外科医とともに手術により充填をしていきます。

 

このような状態で数カ月を過ごす患者さんは、生活上不便も多いだろうなぁと思いました。

看護師としてはガーゼを毎日交換するというのが行うべきケアなのですが、教科書にも詳述されておらず、注意点などを自分で調べたり先輩に聞いてケアに当たりました。

 

なかなか見ない症例ですが、呼吸器外科で対応することになるので、勉強が必要だなと思った事例でした。

 

膿胸においては、この「開窓術」を行う場合が一番の重症例になります。

それよりも軽度な症状だと、胸腔ドレーンのチューブから、排液する場合と、生理食塩水を流して、洗浄・排液を行う方法もあります。

 

 

「呼吸器科を極めたい!」どこで働けばいいの?

呼吸器科ナースとして、技術や知識を極めていきたいという看護師にとっては、総合病院・大学病院の呼吸器科病棟で勤務することが近道といえます。

 

クリニックや診療所でも呼吸器科はありますが、幅広く内科系の疾患を診ていく中に、呼吸器疾患の患者さんもいらっしゃる、という状況になりそうです。

呼吸器科の外科系の患者さんをケアする機会としては、総合病院・大学病院などに限られてくるでしょう。

 

 

呼吸器内科・外科の勤務で身につく看護技術って?

呼吸器内科・外科ともに、入院中の患者さんへは基礎的な看護技術が必要となります。

 

そのほか、呼吸器内科・外科に特徴的な技術を以下に挙げます。

 

・胸腔ドレーンの挿入・抜去の介助

・「CV」(中心静脈カテーテル)の挿入介助

誤嚥性肺炎予防の知識

・抗がん剤治療(化学療法)全般の知識

・周手術期管理の知識

・感染症予防の知識

・緩和ケアの知識・技術

・痰の吸引、呼吸理学療法の知識(誤嚥性肺炎など)

・人工呼吸器、酸素マスクほか酸素療法器具の取扱い

 

このように、ほかの診療科でも役立つ技術が身につきます。

 

 

呼吸器科ナースの1日ってどんなタイムテーブル?

呼吸器科の看護師は、どのようなタイムテーブルで1日を過ごしているのでしょう?

呼吸器内科と呼吸器外科、それぞれのナースに取材し、とある日勤のタイムテーブルをご紹介します!

 

内科呼吸器内科(病棟配属)ナースのある日勤

(都内、約1,000床の大学病院、呼吸器病床40床の場合)

 

外科呼吸器外科(病棟配属)ナースのある日勤

(都内、約1,000床の大学病院、呼吸器病床40床の場合)

 

 

呼吸器科ナースってこんなイメージ

「呼吸器科の看護師さん」にどんなイメージがありますか?

呼吸器科のベテラン看護師への取材から、イメージを作成しました!

呼吸器科を極めると、あなたもこんなイメージに近づくかもしれません…!?

 

 

  • 頭:呼吸生理を把握
    呼吸器科の看護師にとって、呼吸生理の把握は必須のスキルです。
  • 耳:異常呼吸音に敏感
    ラウンドや聴診の際に、「断続性のある細かい音」「断続性のある粗い音」「連続性のある低調性の音」「連続性のある高調性の音」など、異常呼吸音に敏感になります。
  • 目:呼吸数・呼吸の深さを観察
    呼吸数や呼吸の深さを鋭く観察します。
  • 口:優しい言葉づかい
    特に呼吸器内科の入院生活は、長期にわたり今後が見えにくい場合もあります。そのような不安だらけの入院生活を優しい口調でケアします。
  • 手:ドレーン・カテーテル管理のプロ
    ドレーン挿入やカテーテル管理などの手技はお手の物。
  • 胸:患者さんの人生を見届ける
    終末期の患者さんをケアするときには、その患者さんの人生を見届ける覚悟で患者さんとその家族をケアします。
  • 腹:肝っ玉が据わる
    肺への穿刺、開窓術を見ても動揺したりせず介助できる。
  • 足腰:すばやい
    高齢の患者さんや、ADLが低い患者さんが多いことも呼吸器科の特徴。ナースコールが鳴ったら、とにかく全力で患者さんのもとへ
  • がま口:ふつう
    お給料に関しては、呼吸器科勤務を理由に手当がつくことはまれなようです。

 

 

呼吸器科のベテランナースってこんな人!

ここまで読んで「呼吸器科っていいなぁ…」と思ったとしても自分の性格が呼吸器科に合うのかどうか、不安になった人もいるのではないかと思います。

そこで、呼吸器科病棟の経験が長いベテランナースへの取材と、現役で呼吸器科病棟で働くナースへのアンケートから、呼吸器のベテランナースの特徴を独自に分析しました!

 

もちろん、呼吸器科勤務のナースにも色んな人がいますので、あくまで1つの参考として読んでみてください。

 

Check!

【呼吸器科ベテランナースの特徴】

1)時間配分がうまい

2)コミュニケーションスキルが高い

3)スキルアップにどん欲

 

1)時間配分がうまい

呼吸器外科ナースの職場は、患者さんからのナースコールは即、命につながるケースもあります。

呼吸が苦しくなり、ナースコールをする場合が多いからです。

コールされたら、何はともあれ患者さんのもとに駆けつけることができなければいけません。

 

患者さんの入退院や業務量が多く、入院の割り込みも少なくありませんので、不意の出来事が起きた場合にも臨機応変に予定を組み換え、スムーズに1日を終える必要があります。

また、呼吸器内科ナースの場合は受け持ちの患者さんが多いため、てきぱきと動けないと仕事になりません。

できる時間にできる業務をテキパキとこなす段取りの良さと、フットワークが必要とされます。

 

2)コミュニケーションスキルが高い

終末期の患者さんは、緩和ケアに移行する場合もあります。

呼吸器内科の場合は、患者さんの自立度も高いため、世間話や身の上話など、さまざまなコミュニケーションをとる場面が多くあります。

上手にコミュニケーションをとることで、信頼される看護師となったベテランの方たちがいます。

 

3)スキルアップにどん欲

呼吸器内科・外科ともに、外科系の基礎技術において高いレベルでのスキル獲得ができます。

それを目的に呼吸器科の門をたたき、技術的な高みを目指している先輩もいます。

 

人工呼吸器ほか機器の取扱い、抗がん剤治療(化学療法)で導入される新薬の知識、緩和ケアの体験など、呼吸器を軸に、広く応用がきく知識やスキルを磨いていきたいという声を聞きました。

 

 

呼吸器科ナース注目のスキルアップ資格

呼吸器科関連の代表的な2つの資格をご紹介します!

 

1)3学会合同呼吸療法士

吸入療法、酸素療法、呼吸理学及び人工呼吸などといった呼吸療法を広く学び、呼吸療法の目的、理論、治療の実際などについて高度な専門知識を有する資格です。

 

(参考:公益財団法人 医療機器センター「3学会合同呼吸療法認定士」認定制度

 

 

2)呼吸ケア指導士

呼吸障害をもつ患者さんに対して、継続的なケア活動ができる立場の人が認定される資格です。

チーム医療の中で高度な吸入療法を実践するべく、呼吸ケアに関する最新の基礎的知識と臨床的技術を取得していきます。

 

また地域においても指導的な役割を担っていける人材を認定し、地域ケアを支援していく制度です。

(参考:日本呼吸ケアリハビリテーション学会「呼吸ケア指導士」)

 

 

呼吸器科ナースのキャリアプラン例

呼吸器科勤務、という経験からどのようなキャリアプランが考えられるでしょうか?

先輩たちのキャリアプランを聞いてみました!

 

Check!

【先輩たちの転属例】

1)循環器内科へ

2)消化器内科へ

3)心療内科

4)緩和ケア科へ

5)小児科

 

 

1)呼吸器内科から循環器内科へ

呼吸と循環は密接に関係しています。

呼吸困難の原因が、心筋梗塞心不全、肺梗塞などから生じることもあり、呼吸器の知識を循環器でさらに深められるという意見がありました。

医療内容でも似ているところが少なくありません。

◆先輩の声

実は循環器系と呼吸器系は似ているところが多いことがわかり、呼吸器の経験を活かして、より看護スキルを高めるために循環器を目指しました。

転職してみて、慢性期の患者さんが多い呼吸器内科から、急変もありうる循環器内科では、雰囲気の違いを感じています。

循環器では逆に何が起こっても冷静でいなければならないという独特の静けさがありますね。

呼吸生理・管理の知識とスキルは活かされています。

(転属時、看護師5年目)

 

 

2)呼吸器内科から消化器内科へ

呼吸器内科では、内科の基礎知識を高いレベルで獲得できるという声がありました。

そのため、同じ内科のつながりで科を飛び越えて看護を行うことができるようになったという先輩の意見です。

◆先輩の声

呼吸器内科での基礎技術が高いというのは、消化器内科に転科してよくわかったことです。

呼吸器だけでなく、内科について幅広く知識を身につけ、やがては幅広い疾患の患者さんが訪れるクリニックへ進みたいと思い、その足がかりとして消化器内科へ転科して良かったと思っています。

(転属時、看護師7年目)

 

 

3)呼吸器内科から心療内科へ

呼吸器内科での看護業務は、緩和ケアを含めて患者さんの内面に触れる機会があります。

そのため、精神的ケアを極めるために心療内科へ転属したという先輩もいました。

◆先輩の声

私は心療内科に転属しました。

呼吸器内科で行っていた看護技術を応用する機会は少なくなりましたが、患者さんの精神面にもっと寄り添える看護師になりたいと考えてのことです。

また、じっくりと患者さんの話を聞くのが好きだっことも理由です。

(転属時、看護師6年目)

 

 

4)呼吸器内科から緩和ケア科へ

終末期の患者さんと接するうちに、緩和ケアへの興味・関心が高まる人もいます。

◆先輩の声

呼吸器で仕事をしていく中で、終末期の患者さんのケアを経験しました。

個人の尊厳をいかに大事にしていくかを突き詰めたいと、緩和ケア病棟がある病院へ転職しました。

呼吸器内科では受け持つ患者さんの人数が多かったので、緩和ケア病棟に移って、1人ひとりの患者さんとゆっくりお話する時間は多くなりました。自分には向いていると思っています。

(転職時、看護師12年目)

 

 

5)呼吸器内科から小児科へ

小児呼吸専門の診療科を持っている病院に、呼吸器の知識を活かして転職した先輩もいました。

◆先輩の声

もともと子どもが好きだったこともあり、転科を決意しました。

小児喘息など、呼吸器の知識も活かせます。

ただ、成人看護と小児看護は「まったく違う領域なんだ」と思い知ることも多いです。

いま、必死に勉強しています。

(転職時、看護師4年目)

 

 

呼吸器ナースのあるあるエピソード

呼吸器科勤務の先輩たちが経験してきた「呼吸器科あるある」を集めました。

呼吸器科の雰囲気を捉えてみてください。

 

Check!

【呼吸器科あるある】

・「年次を経るごとに、Sp02が低くても動じなくなっていく…」

・「患者さんの仲が良く、ラウンジは寄り合い所のようになっている…」

etc・・・

 

あるある【1】年次を経るごとに、動脈血酸素飽和度が低くても動じなくなっていく…

Sp02(経皮的動脈血酸素飽和度)が85%などでも案外苦しさを訴えない人が多いので、それに慣れてきてしまうという声がありました。

慌てず冷静に対応できるようになるようですね。

 

あるある【2】患者さんの仲が良く、ラウンジは寄り合い所のようになっている…

長期入院の患者さん、複数回の入院をする患者さんが多いという特徴から、特に呼吸器内科の病棟のラウンジはテレビを見ながらワイワイ話しをするお年寄りがたくさん。

 

また、初回入院の患者さんに、入院歴の長い患者さんが病棟生活についてあれこれ教えてあげていたりする様子もみられるそう。

男性患者さんの割合が多いことも寄り合い所のような雰囲気になる一因かもしれません。

 

あるある【3】高齢の患者さんが多いので、子どもとの会話に戸惑うことがある…

呼吸器病棟といえば、中高齢の患者さんの入院が多いようです。

「子どもと話すとき、いつもと勝手が違いすぎて全然うまく話せなかった…」という声が聞かれました。

 

あるある【4】タバコを吸っている人を見ると、本気のお説教!

肺がんで苦しんでいる人を間近で見ているので、がんの発生を助長させる可能性がある行動を見ると、他人ごとでは終われなくなるそう。

 

あるある【5】気管支鏡検査や吸引のとき、患者さんに話しかけるドクターがいて、患者さんが苦しそう…

しゃべれないとわかっているはずなのに、なぜか患者さんに話しかけてしまうドクターがいるようです…。

 

 

先輩から後輩へ!呼吸器ナースを目指すあなたへのアドバイス

呼吸器ナースの先輩に、新人ナースからの質問をぶつけてみました!

 

【Q1】呼吸器内科・外科の新人が最初に学ぶべきことは何ですか?

【A】解剖生理・呼吸生理・胸腔ドレーン、外科ならプラス術後管理と早期離床がマストです。

 

◆先輩の声

呼吸器は、循環器と並ぶほどに覚えることが盛りだくさんの診療科だと私は思います。

解剖生理・呼吸生理については、頭に入っていることが前提です。

 

また、呼吸器科では、内科・外科ともに「胸腔ドレーンの挿入・抜去の介助」が必須のスキルです。

私の病院では、胸腔ドレーン実施の際の「看護師が行う手技・注意点一覧」が、チェックリストとして作成されています。

新人のときは、そのチェックリストに沿って座学を行ったあと、最初の介助に先輩の補佐として参加するという手順で学びました。

 

また、外科では早期離床のためのケアが頻繁に行われ、入退院の出入りも激しいですから、テキパキと仕事をこなす心構えでいてほしいです。

 

でも、呼吸器科の知識は幅広い診療科で役に立つので、早い段階で修行する意味でも新人の頃に経験しておくと良いと思います。

(総合病院勤務、看護師5年目)

【Q2】呼吸器内科・外科で、大変だなぁと思うことを教えてください。

【A】外科は入退院の出入りが激しいこと、内科は受け持ち患者さんが多いこと。

 

◆先輩の声

基本的な体力は、看護師をやっていればどの科でも必要になってくると思いますが、呼吸器外科で特に大変なのは、外科は入退院の出入りが激しいことです。

入院を受け入れて、手術へ送り出して、術後は早期離床のためのケアをし、すぐに退院、というめまぐるしいサイクルの中で患者さんの生活を支えていきます。

 

呼吸器内科では、基本的には慢性期の病棟になるので、受け持ち患者さんが多いことが特徴です。

中には、長期間にわたり治療をされる方、終末期を迎える方もいらっしゃいます。

慌ただしい中でも、精神面のケアまで行き届くように時間配分を考えながらケアにあたることは容易ではないですが、やりがいを感じられます。

(大学病院勤務、看護師10年目)

 

 

呼吸器科ナースが体験した患者さんとのエピソード

呼吸器科ナースとして勤務していると、どのような患者さんと出会うのでしょうか?

先輩たちに、印象深いエピソードを聞きました。

 

◆励ましてくれた患者さんへの恩返しを

私が新人のころ、50歳代前半・男性の患者さんが肺がんで入院していました。

 

初回入院のとき、自分で歩いてラウンジや売店に行ったりとても元気な様子でした。

もともとスポーツマンで、登山をしたときの写真を見せてくれたりしていました。

新人でよく慌ててしまう私を、逆に励ましたりしてくれた方でした。

 

しかし、3回目の化学放射線療法(放射線治療と抗がん剤治療を同時に行う治療)のために入院してきたときには、車椅子に乗り、筋肉が落ちてやせ細っていました。

 

その後、終末期を迎え、病院でご家族とともにお看取りをしたのですが、最期まで私はうまくその患者さんと話せず、励ましてもらった恩返しができませんでした。

 

死を迎える患者さんに、看護師として何ができるか、患者さんに教えてもらいながら、自問自答しながら今も臨床にあたっています。

(総合病院、看護師1年目のときの体験談/N.Eさん、現在看護師3年目)

 

◆患者さんにとっては毎回初めてだから

最初に胸腔ドレーンを見たとき、あまりに外科的な処置に正直「強烈だなぁ」と思いました。

今では慣れていますが、最初は抵抗がありました。

 

皮膚を切開すること、血液の混じる胸水が大量に排水されることなどに驚いたのを覚えています。

 

すっかり日常業務になった今でも、患者さんにとっては毎回初めての出来事なんだよなぁと思い、丁寧に説明したり状況をアセスメントできるように心がけています。

(大学病院、看護師1年目のときの体験談/Y.Tさん、現在同病院5年目)

 

 

いかがでしたか?

呼吸器科ナースのお仕事について、具体的にイメージするためにお役立ていただければと思います!

 

(文)看護roo!編集部、新田哲嗣

(イラスト)明(みん)

 

 

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