心筋梗塞とは・・・
心筋梗塞(しんきんこうそく、myocardial infarction;MI)とは、虚血性心疾患の一つで、心臓の筋肉(心筋)に酸素や栄養を供給している血管(冠動脈)が血栓やプラークなどで閉塞して血流が低下した結果、心筋が虚血に陥り壊死した病態である。
心筋梗塞の定義はあくまで心筋が壊死した状態であるため、壊死してなければ心筋梗塞とは言わない。
発症後、72時間以内を急性心筋梗塞、72時間~30日を亜急性心筋梗塞、それ以降のものを陳旧性心筋梗塞という。
症状
典型症状は、突然の胸痛や背部痛、冷や汗、嘔気などで、これらが30分以上続く。ただし、症状のない無症候性心筋梗塞もあり、特に糖尿病患者や高齢者にみられる。
検査・診断
問診、心電図、心臓超音波検査、血液検査、心臓カテーテル検査(冠動脈造影検査)を行う。問診と症状から心筋梗塞を疑い、心電図で典型的な変化があれば確定的である。心臓超音波検査では、梗塞部位に一致した心筋の動きが障害されている様子が観察される。血液検査で心筋マーカー(トロポニンやCM-MB)が上昇していれば、通常は心筋梗塞として扱うことが多いが、トロポニンは別の原因(腎機能障害やショック)で上昇することもあるので、その解釈には注意が必要である。
上記から心筋梗塞が強く疑われた場合には、心臓カテーテル検査(冠動脈造影検査)を行い、冠動脈の狭窄・閉塞を確認できれば診断が確定する。
STEMI(ST上型昇心筋梗塞)
STEMI(すてみ)とは、心電図でST上昇を伴う心筋梗塞をいう。貫壁性心筋梗塞ともいわれ、閉塞した血管を直ちに開通させなければ、不可逆的な心筋壊死に陥る。臨床現場では時間との勝負である。
NSTEMI(非ST上昇型心筋梗塞)
NSTEMI(えぬすてみ)とは、心電図でST上昇を伴わない心筋梗塞をいう。ST低下を認めるときや、変化が無いときもある。心内膜下心筋梗塞ともいわれ、こちらも血管の開通が必要であるが、臨床現場ではSTEMIと比較すると急がないため、STEMIとNSETMIは区別される。
治療法
経皮的冠動脈形成術(けいひてきかんどうみゃくけいせいじゅつ、percutaneous transluminal coronary angioplasty;PTCA)を行う。経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention;PCI)とも言う。心筋梗塞の治療は時間との勝負である。早く血管を再開通させることで、梗塞範囲を最小限にすることができるからである。心臓カテーテル検査で冠動脈造影検査を行い、診断が確定したら、そのままカテーテルを使って狭窄・閉塞した血管を開通させる。このように、心筋梗塞は検査・診断・治療が一連の流れで行われる。
そのほか、冠動脈を拡張させるために硝酸薬、不整脈を合併した場合には抗不整脈薬を投与する。
血管が開通した後は、抗血小板薬、脂質異常薬、β遮断薬を投与する。
予防
心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患の危険因子としては、遺伝的因子に加え、肥満、糖尿病、高血圧、喫煙、ストレスなどの生活習慣と関係する因子が挙げられる。生活習慣を見直すことに加え、心臓リハビリテーションを行う。