不整脈とは・・・
不整脈(ふせいみゃく、arrhythmia)とは、何らかの原因によって心拍が不規則になるなど、心臓の電気興奮のリズム(調律)が異常になった状態をいう。不整脈は病名ではなく、病態の総称である。
心臓は右心房上部にある洞結節で生じる電気興奮が、心筋内に存在する刺激伝導系(特殊心筋)と呼ばれる経路を流れ、心筋細胞が一定のリズムで収縮することで血液を全身へ送り出すことができる。
心房筋が興奮すると、心電図上P波となる(洞性P波)。その後、電流は房室結節を通り、ヒス束を通過して心室へ入る。ここで刺激伝導系は左脚と右脚に分岐し、電流を心室へ送る。心室が興奮すると、心電図上QRS波となる。この興奮がおさまるとT波となる(図1)。この刺激伝導系での一連の電気活動の流れがどこかで障害される結果、不整脈となる1)。
図1心臓の電気刺激伝導と心電図波形
不整脈は器質的心疾患のほか、電解質異常、内分泌異常、薬剤の副作用などでも起きる。また、遺伝性のものもある。
不整脈はその脈拍数から頻脈性と徐脈性、心電図でのQRS幅の違いから上室性と心室性に分けられる(表1)。
表1不整脈の分類
症状
無症状なものから、動悸、息切れ、胸痛、めまい、失神などがある。典型的ではないが、見落としやすい症状として痙攣も挙げられる1)。
検査・診断
心電図で不整脈が確認されれば診断できる。なお、病院到着前に症状が消失しており心電図が正常の場合には、不整脈は除外できない。
12誘導心電図のほか、携帯可能なホルター心電図で24時間の心電図を記録して不整脈の有無を調べることもある。不整脈が確認されれば、疑われる原因に応じて血液検査、心臓超音波検査(心エコー検査)や、必要に応じて心臓カテーテル検査などが行われる。
治療法
診断された不整脈や自覚症状の有無によっても治療法が異なる。
頻脈性不整脈
心房細動、心房粗動、発作性上室性頻脈には、抗不整脈薬が用いられる。
(心房粗動は、抗不整脈薬が効きにくいこともある)
薬剤で治まらない不整脈は、電気的除細動やカルディオバージョンを行うことがある。心房細動、心房粗動、発作性上室性頻脈、脈が触れる心室頻拍にはカルディオバージョンを行う。
心室細動、および脈が触れない心室頻拍(無脈性心室頻拍)は、心停止と同義であり、胸骨圧迫と電気的除細動が必須である。
繰り返す頻脈性不整脈には、カテーテルアブレーション(カテーテル心筋焼灼術)や、植え込み型除細動器が適応になる。前者は心房細動、心房粗動や発作性上室性頻脈に、後者は心室細動や心室頻脈に行われる。
徐脈性不整脈
徐脈性不整脈には人工ペースメーカーが適応になることがある。人工ペースメーカーが挿入されるまでは、脈を速くする薬剤(アトロピンやβ刺激薬)を経静脈的に投与したり、体外ペーシング(ペーシング機能を有した除細動器を用いた経皮ペーシングや経静脈ペーシング)を行うことがある。
合併症
心房細動の重要な合併症に脳梗塞がある。このため、心房細動の患者にはそのリスクに応じて抗凝固薬が脳梗塞の予防のために投与される2)。
【引用参考文献】
1) “疾患別解説 不整脈とは”.日本心臓財団.
2)“心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)”.日本循環器学会.