【薬剤編】必要なものはコレ!救急カートの薬剤・物品一覧
救急カートに入っている薬剤について、使用方法やポイントなどを薬剤画像を交えて、わかりやすく解説します!
※本記事は、患者さんが成人の場合を前提にした内容です。
執筆:宇野翔吾(株式会社日立製作所 日立総合病院 看護局 救命救急センター 救急看護認定看護師)
監修:小山泰明(株式会社日立製作所 日立総合病院 救急集中治療科 主任医長)
救急カート内の薬剤一覧
救急カートに入っている主な薬剤は、次のとおりです。
主な薬剤一覧
救急カートに入っている主な薬剤の使用方法やポイント
救急カートに入っている主な薬剤について、使用方法やポイントは以下のとおりです。
ボスミン®注1mg
(第一三共株式会社提供)
【一般名】
【形態】
アンプル
【区分】
劇薬
【単位・量】
1mg/1mL
【作用】
α1作用(血管収縮)、β1β2作用(心拍数上昇・心収縮力増強作用、気管支拡張作用)
【使用シーン】
心停止、心拍再開後、ショック、アナフィラキシーなど。
【使用方法】
①心停止時:原液投与、1回1A、1mg/mL。3~5分ごとに反復投与1)。
②ショック時・心拍再開後:生理食塩液で希釈。※濃度は医師の指示を確認!
③アナフィラキシー時:原液投与、成人は最大投与量0.5mg/mL2)。
【ポイント】
- 心停止時の第一選択薬!使用時は1A原液使用!
- アナフィラキシー時の唯一の治療薬!大腿部中央の前外側へ筋注する2)。
アドレナリン注0.1%シリンジ「テルモ」
(テルモ株式会社提供)
【形態】
プレフィルドシリンジ
【使用シーン】
心停止時
【使用方法】
心停止時:原液投与、1回1本、1mg/mL。3~5分ごとに反復投与1)。
【ポイント】
心停止時は、包装を開けたら、即座に静注でき時間短縮になる!
※区分や作用は「ボスミン®注1mg」と同じ。
イノバン®注0.3%シリンジ
(協和キリン株式会社提供)
【一般名】
ドパミン塩酸塩(別名:DOA)
【形態】
プレフィルドシリンジ
【区分】
劇薬
【濃度・単位・量】
0.3%、150mg/50mL
※濃度に注意
【作用】
α1作用(血管収縮)、β1作用(心拍数上昇・心収縮力増強作用)、D1作用(腎血管拡張作用)。
【使用シーン】
ショック、急性心不全など。
【使用方法】
原液投与。1~5μg/kg/分で病態に応じ20μg/kgまで増量可。原則、側管から使用するため希釈、混注などは不要。シリンジポンプでの投与が必要。
【ポイント】
投与量に応じて効果が変わる!体重50㎏の人の場合、以下のとおり。
【3γ(3.0mL/h)まで】
→腎血流量増加がメイン
【3~10γ(3.0mL/h~10mL/h)】
→β1作用(心拍数上昇・心収縮力増強作用)がメイン、用量依存的にα1作用(血管収縮)も増加
【10γ(10mL/h)以上】
→α1作用(血管収縮)がメイン
【注意点】
-
施設によっては、ドパミン塩酸塩点滴静注液(アンプル)やカコージン®注(バッグタイプ)を使用していることがある。
-
同じ急性循環不全を改善する目的で、ドブタミン塩酸塩注射液(ドブタミン持続静注(シリンジ)、ドブポン®注(シリンジ)など)を使用するケースもあり。
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アミオダロン塩酸塩静注150mg「TE」
(トーアエイヨー株式会社提供)
【一般名】
アミオダロン塩酸塩
【形態】
アンプル
【区分】
劇薬
【単位・量】
150mg/3mL
【作用】
K⁺イオン(脈拍に関する電気信号の一つ)抑制作用。
【使用シーン】
無脈性心室頻拍(pVT)/心室細動(VF)を伴う心停止時、循環動態不安定時の心室頻拍(VT)。
【使用方法】
①心停止時:原則、原液で使用。初回投与量300mg、2回目150mg。
※医師によっては、5%ブドウ糖液で希釈する場合あり。
②循環動態不安定時の心室頻拍:5%ブドウ糖液で希釈し投与。
※濃度は医師の指示を確認!
【注意点】
- 心停止の場合は、原液で初回300mg投与。アミオダロンを2A使用。
- アミオダロンは生理食塩液に溶解しないため、心停止時以外では、5%ブドウ糖液に混注し投与。
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ミダゾラム注10㎎「サンド」
(サンド株式会社提供)
【一般名】
ミダゾラム
【形態】
アンプル
【区分】
向精神薬
【単位・量】
10mg/2mL
【作用】
抗けいれん作用、鎮静作用など。
【使用シーン】
鎮静、全身麻酔導入・維持など。
【使用方法】
0.03〜0.18mg/kg/h(推奨)より持続静脈内投与を開始し、患者さんの鎮静状態をみながら適宜増減。
【ポイント】
使用時は必ずモニターを装着し、バッグバルブマスクと救急カートを準備。
【注意点】
- ベンゾジアゼピン系薬剤のため、せん妄発生に注意。
- 筋弛緩作用があるため、舌根沈下に注意。
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カルチコール®注射液8.5%5mL
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ソル・コーテフ®注射用100mg
(ファイザー株式会社提供)
【一般名】
ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム
【形態】
バイアル
【区分】
規制なし
【単位・量】
100mg/2mL
※溶解液を全量使用した場合
【作用】
抗ショック作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用、抗体産生の抑制作用など。
【使用シーン】
ショック、気管支喘息、アナフィラキシーなど。
【使用方法】
専用の溶解液(注射用水)で溶解する。
※投与量は医師の指示を確認。
【ポイント】
急性循環不全(出血性/敗血症性ショック)に対して、血小板凝集阻止に加え、血管や肺の保護のために使用する場合がある。
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メイロン静注7% 250mL
(株式会社大塚製薬工場提供)
【一般名】
炭酸水素ナトリウム注射液
【形態】
バッグ
【区分】
処方箋医薬品
【濃度・単位・量】
7%、250mL
【作用・使用シーン】
-
薬物中毒の際の排泄促進(ただし、pHの上昇により尿中排泄が促進される薬物に限る)
-
アシドーシス改善
【使用方法】
希釈や混注はしない。バッグタイプは、輸液ルートに接続し、静脈内投与可能。
【ポイント】
乳酸アシドーシスが生じている場合、メイロン投与でHCO₃-が補正される。
【注意点】
カルシウムイオンと沈殿が生じるため、カルシウム塩を含む製剤(カルチコール®など)と配合はしない。カルチコール®を投与する場合は、メイロン投与終了後に行う。
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生理食塩液「ヒカリ」500mL
(光製薬株式会社提供)
【一般名】
塩化ナトリウム
【形態】
バッグ
【区分】
規制なし
【単位・量】
mL
【作用】
細胞外液(組織間液、血漿)の量を増やす作用など。
【使用シーン】
細胞外液欠乏時、ナトリウム欠乏時、クロール欠乏時、注射剤の溶解希釈剤など。
【使用方法】
輸液ルートに接続し、静脈内投与可能。
【ポイント】
- 心肺蘇生時、ショック時などは細胞外液補充液(乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、生理食塩液)が第一選択!
- Kイオンや乳酸が含まれていないため、透析患者さんや著明なアシドーシスがある患者さんでも使用しやすい。
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キシロカイン®ゼリー2%
(サンド株式会社提供)
【一般名】
リドカイン
【形態】
ゼリー
【区分】
なし
【使用方法】
挿管チューブのカフ付近に十分塗布し、挿管時の刺激をやわらげるために使用する。挿管チューブの声帯通過をスムーズにする。
【その他】
キシロカイン®にはスプレータイプもある。その場合は、直接咽頭部へ噴霧し、気道粘膜への表面麻酔に用いる。
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症状別 使用薬剤と希釈する薬剤一覧
症状別 使用薬剤
症状によって使用する薬剤は異なります。
上記の救急カートに入っている主な薬剤をもとに、症状別の使用薬剤を一覧表にまとめたので、ぜひ覚えておきましょう!
希釈が必要な薬剤一覧
心拍再開後やショック時などは、バイタルサインの程度により希釈濃度を変更する必要があります。
希釈に使用するものは以下のとおりです。
注意点
- 所属先施設によって、救急カートに入っている薬の種類や量が異なる場合があります。所属先の方針に従ってください。
- 本記事は患者さんが成人の場合を前提にした内容です。
- 記事中の薬剤解説については、2024年1月時点で公開されている最新の添付文書をもとに作成しています。薬剤の使用に当たっては、最新の添付文書等も併せて確認をお願いします。
- 本記事は医療関係者の方を対象にした記事です。一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんので、ご了承ください。
編集:看護roo!編集部 宮本諒介
引用文献
- 1)一般社団法人日本蘇生協議会監.JRC蘇生ガイドライン2020.医学書院.p53.2021, (2024-0301アクセス)
- 2)一般社団法人日本アレルギー学会監.アナフィラキシーガイドライン2022.2022, (2024-0301アクセス)
- 3)日本集中治療医学会雑誌.日本版敗血症診療ガイドライン2020, (2024-0301アクセス)
- 4)American Heart Association著.ACLSプロバイダーマニュアル AHAガイドライン2020準拠.シナジー.p69.2022
- 5)平成21年2月20日薬食発第0220002号「輸血療法の実施に関する指針」及び「血液製剤の使用指針」の一部改正について.2009.厚生労働省, (2024-0301アクセス)
参考文献
- 一般社団法人日本蘇生協議会監.JRC蘇生ガイドライン2020,医学書院,2021.(2024-0301アクセス)
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