最終更新日 2019/06/06

移植合併症

移植合併症とは・・・

移植合併症(いしょくがっぺいしょう、complication of stem cell transplantation)とは、造血幹細胞移植後に造血幹細胞移植が関連して生じる合併症のことである。

 

移植合併症の種類

移植合併症は、主に移植後早期、移植後中期、移植後後期に生じるものの3種類に大別される。

 

(1)移植後早期

移植前処置関連毒性(RRT)、生着不全、など

 

(2)移植後中期(生着前後・生着後早期)

生着症候群、急性移植片対宿主病急性GVHD)、肝中心静脈閉塞症/肝類洞閉塞症候群(SOS/VOD)、特発性肺炎症候群(IPS)、など

 

(3)移植後後期(100日以降)

慢性移植片対宿主病(慢性GVHD)、閉塞性細気管支炎、二次性悪性腫瘍(二次がん)、など

 

合併症

移植後早期の粘膜障害は多くはRRTによるもので、下痢口腔内粘膜障害などを呈することが多い。特にTBI含有骨髄破壊的前処置で生じやすく、メルファラン、エトポシド、ブスルファンなどの薬剤を使用した場合に高度の粘膜障害を生じやすく、免疫抑制剤として移植後にメトトレキサートを投与した場合も粘膜障害を助長することが多い。

 

生着不全は、代表的な移植後合併症の一つである。生着は一般に好中球生着で判断し、移植後好中球数が500/μLを3回の採血で連続して上回る場合、最初に500/μLを上回った日を生着日として定義する。しかし、移植後好中球の回復を認めない場合を一次生着不全、一旦生着した後に造血機能が低下し生着の定義を満たさなくなる場合を二次生着不全と言い、これらは特に臍帯血移植での発症頻度が高く1~2割で生じる。

 

生着前後・移植後早期でのSOS/VODは、肝臓の毛細血管である類洞に血栓が生じることで周囲の肝細胞が障害される造血幹細胞移植後の合併症の一つである。症状としては、右上腹部痛、肝腫大、腹水貯留、体重増加、総ビリルビン(T-bil)上昇などを呈する。移植後1カ月以内に生じることが多く、ブスルファンなどを含む化学療法や、全身放射線照射(TBI)、カルシニューリン阻害薬(免疫抑制剤)の投与などが原因となりうるとされている。
また、特に同種造血幹細胞移植後は、生着までの約2~3週間の好中球減少期に加え、RRTによる粘膜障害や、免疫抑制剤やステロイド投与などによる細胞性免疫不全および液性免疫不全を生じるため、感染症発症のリスクが高く、発症後の死亡率も高い。好発微生物は移植後の時期により異なる。特に、好中球生着前にはグラム陽性球菌やグラム陰性桿菌などによる細菌感染症や、カンジダなどの真菌感染症が問題となることが多い。生着前後の時期には、ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)感染による炎に注意する。

 

生着後の移植後中期は、急性GVHDの好発時期であり、サイトメガロウイルス(CMV)感染による腸炎、肺炎、網膜炎、BKウイルスやアデノウイルスによる出血性膀胱炎、EBウイルスによる移植後リンパ増殖性疾患、アスペルギルス感染による侵襲性肺アスペルギルス症などが代表的である。

 

移植後後期では、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)再活性化による帯状疱疹やニューモシスチス肺炎に注意する。また、慢性GVHD発症者では肺炎球菌インフルエンザ桿菌など莢膜を有する微生物による感染がしばしばみられる。

 

引用参考文献
1)Tomblyn M,et al.Guidelines for preventing infectious complications among hematopoietic cell transplantation recipients: a global perspective.Biol Blood Marrow Transplant.15(10),2009,1143-1238.(PMID:19747629)

執筆: 藤本亜弓

島根大学医学部附属病院  腫瘍・血液内科医科医員

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