臍帯血移植とは・・・
臍帯血移植(さいたいけついしょく、cord blood transplantation;CBT)とは、出産時に摘出した胎盤と臍帯から採取された臍帯血を用いた造血幹細胞移植のことである。
臍帯血には多くの造血幹細胞が含まれていることから、当初臍帯血移植は小児領域で開発され実施されるようになったが、その後成人に対しても適応が拡大し、わが国における臍帯血移植の実施件数は近年も増加傾向にある。わが国では、臍帯血移植は1998(平成10)年より保険適用となっている。
方法
出産時に臍帯血を採取した後は、細胞数豊富な良好な臍帯血が選定され、感染面などで問題がないものだけが各地の臍帯血バンクで凍結保存される。
移植の時の輸注としては、自家末梢血幹細胞移植と同様、解凍し、ゆっくりと静脈内投与を行う。
適応
同種造血幹細胞移植を予定している患者で、HLA適合ドナーがいない場合や、原病のコントロールが困難な症例で骨髄バンクのコーディネート期間を待つことが難しい場合、臍帯血移植を適応することがある。
しかし、臍帯血は他の幹細胞源と比較し生着までに3〜4週間と時間を要し、免疫再構築が遅いことなどから感染症を合併するリスクが高いため、移植前に感染症の既往がある患者においては注意が必要である。
(1)メリット
ドナーへの負担がないことが利点である。加えて、ヒト白血球抗原(HLA)はHLA-A、-B、-DRB1座各々2抗原ずつ、すなわち計6つの抗原のうち2抗原以内のHLA不適合が許容されるため、移植可能なドナー選択の範囲が広く、造血細胞を迅速に入手可能である。HLAが1~2抗原異なっていても重症の移植片対宿主病(GVHD)の発症頻度が少ないことも、特徴的な利点として挙げられる。
(2)デメリット
臍帯血移植は生着不全が1~2割と他の幹細胞源に対して高率に生じることや、好中球生着までに約3~4週間と他の幹細胞源と比較し約1週間長くかかることが欠点で、その間にヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)による脳炎や細菌感染症など感染症の発症頻度が高い。特に、患者体重当たりの細胞数が少ない臍帯血を用いた場合に生着が遅れ、生着不全のリスクも増加するため、患者の体重が重たい場合には適していない。
また、移植後再発に対してドナーリンパ球輸注(DLI)が実施できないことも欠点である。