最終更新日 2019/02/05

サイトメガロウイルス

サイトメガロウイルスとは・・・

サイトメガロウイルス(cytomegalovirus;CMV)とは、正式名称はヒトヘルペスウイルス5(HHV-5)でヘルペスウイルスの一種である。さまざまな細胞や組織に感染するが、ヒトCMVはヒトにしか感染しない。

 

多くの場合、子どもの時に感染し、ほとんどが不顕性感染(症状を出さない)となり、生涯潜伏感染する。

 

原因(感染経路)

感染経路としては、既感染の母親の母乳や、感染した子どもの唾液や尿を介した感染のほか、産道感染、輸血感染、性交感染もある。かつて日本では成人のCMV抗体保有率(既感染者率)は80~90%だったが、近年若者を中心に60~70%代に低下してきたことにより、特に妊婦の初感染による先天性サイトメガロウイルス感染症が問題となっている。

 

症状

(1)健常人の場合

小児期の初感染は無症状であることが多いが、思春期以降で感染すると発熱、筋肉痛肝脾腫、肝機能異常などを示すことがある。

 

(2)妊婦の場合

妊婦が初感染した場合、40%で胎盤を介した胎児の感染が起こる。死産のほか、低出生体重児、小頭症、網膜炎、難聴、黄疸、肝脾腫などが見られる。生まれた時は無症状でも、成長して難聴や精神発達遅滞を発症することもある。

 

(3)輸血による感染の場合

輸血により初感染した場合には、発熱、間質性肺炎、肝機能異常などを示し、重症化する場合がある。

 

(4)臓器移植の場合

臓器移植では、ドナーが既感染(陽性)で、レシピエントに感染歴がない(陰性)場合、移植により初感染となる。また、ドナー、レシピエントともに既感染であっても、免疫抑制剤を使うことによりCMVが再活性化され、感染症を発症することが多い。発熱、網膜炎、炎、間質性肺炎、肝炎腸炎などを発症し、生命の危険や移植臓器を失う危険が出てくる。

 

(5)骨髄移植の場合

骨髄移植では、ドナーに感染歴がなく(陰性)、レシピエントが既感染(陽性)の場合、感染症発症の危険がある。免疫を担当するドナー由来の細胞はCMVと接したことがないため、CMVに対する免疫を持たず、レシピエントで再活性化したCMVと戦うすべを持たないからである。臓器移植の場合と同様の症状に加え、骨髄抑制が生じやすく、より重篤となる。

 

(6)HIV感染者の場合

HIV感染の患者では、CD4陽性リンパ球が500/mm3以下になると再活性化により発症しやすくなる。

 

HIV感染症などの明らかな免疫不全がなくても、集中治療室に入室するような重症患者でサイトメガロウイルスの再活性化が起こり、腸炎などを発症することが近年明らかとなっている。

 

治療

治療には、ガンシクロビル、ホスカルネット、CMV高力価γグロブリンなどが用いられる。

執筆: 柳井真知

神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター医長

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