最終更新日 2019/10/08

慢性GVHD

慢性GVHDとは・・・

慢性GVHD(まんせいじーぶいえいちでぃー、graft versus host disease; GVHD)とは、移植後後期にドナー由来の免疫担当細胞が、患者(レシピエント)由来の非自己抗原を認識することで患者の各種臓器を攻撃する免疫学的反応である。慢性移植片対宿主病ともいう。

 

これまでは、造血幹細胞の移植後100日以内に発症すると急性GVHD、100日以降に発症すると慢性GVHDというように、発症する時期により区別されていた。しかし、近年は、症状の特徴に従い、発症時期に関わらず診断することが提唱されている(NIH基準)。

 

症状

慢性GVHDの症状は多臓器に及び、自己免疫性疾患に似た病態を示す。皮膚肝臓、分泌腺組織などを中心に長期に増悪寛解を繰り返しながらさまざまな症状を呈し、移植後のQOL(Quality of life)を悪化させる主な原因となる。

 

一方で、移植片対白血病・リンパ腫(Graft-versus-leukeima/lymphoma;GVL)効果による移植後再発の低下や、原病の治癒が期待できる。

 

検査・診断

慢性GVHDの診断は、NIH基準に基づいて、慢性GVHDの診断は下記いずれかで行われる。

 

(1)少なくとも1つの診断的徴候(他の検査所見や臓器病変がなくとも、単独で慢性GVHDと診断できる特徴的な臨床所見)がある。

(2)病理検査により裏付けされる、少なくとも1つの特徴的徴候(臨床所見のみでは特異的ではないので、その所見だけでは慢性GVHDと判断できない。そのため、病理検査や血液検査、他の臓器病変なども考慮する必要がある)がある。

 

NIH基準の診断的特徴と特徴的徴候は、以下の通りである(表1)1)

 

表1NIH基準の診断的特徴と特徴的徴候

 
 

 

治療法

一次治療としての標準治療はステロイドであるプレドニゾロン(PSL)1 mg/kgであるが、症状や合併症などによっては少量の投与で治療を行う場合もある。

 

一般的に中等症以上の慢性GVHDの治療は、全身的な免疫抑制薬の投与が適応となる。軽症の場合でも筋膜障害など機能障害がある場合や、肝障害を呈する場合、また高いリスク因子がある場合(血小板10万 /μL以下、progressive onset群、PSL0.5 mg/kg以上投与中の発症、T-bil 2.0 mg/dL以上など)は治療の適応となる。

 

慢性GVHDによるQOL低下のリスクと、治療を行うことによる原病再発や感染のリスクをそれぞれ考慮し、適切なタイミングで治療を開始する必要がある。

 

予防

慢性GVHDの予防は部位別に異なる。

例えば、皮膚に関しては日光暴露を避けることが重要である。日焼け止めクリームや、長袖の衣服を着用するなどによる防護が有効である。

口腔内については、口腔内を清潔に保つこと、保湿剤などにより粘膜を湿潤・保護し、乾燥を予防することが重要である。辛い食べ物などの刺激物の摂取は控え、定期的な歯科専門医の受診を勧める。

また、治療による二次がんの出現にも注意する必要がある。


引用参考文献
1)日本造血細胞移植学会.“造血細胞移植ガイドラインGVHD 第4版”.
 

執筆: 藤本亜弓

島根大学医学部附属病院  腫瘍・血液内科医科医員

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