急性GVHDとは・・・
急性GVHD(きゅうせいじーぶいえいちでぃー、graft versus host disease; GVHD)とは、移植後早期にドナー由来の免疫担当細胞(主にT細胞)が、患者(レシピエント)由来の非自己抗原を認識することで、患者の各種臓器を攻撃する免疫学的反応である。急性移植片対宿主病ともいう。
これまでは、造血幹細胞の移植後100日以内に発症すると急性GVHD、100日以降に発症すると慢性GVHDというように、発症する時期により区別されていた。しかし、近年は、症状の特徴に従い、発症時期に関わらず診断することが提唱されている(NIH基準)。
急性GVHDの発症リスクは、HLA不適合移植や非血縁者間移植、また末梢血幹細胞移植において高いことが知られている。
症状
急性GVHDの症状としては、皮膚が初発症状として最も多く認められる。手掌・足底から始まり、四肢・体幹などに掻痒を伴う紅斑が典型的に出現する。悪化すると、水疱を伴うびらんや、全身紅皮症まで進展することもある。
他に、消化管の症状として、遷延する嘔気・食思不振や水様性下痢を生じることが多い。重症化すると1日数Lもの水様下痢が持続し、血便を発症したり麻痺性イレウスに至ることもある。
肝GVHDは通常、直接ビリルビン、ALP、 γ-GTPなど胆道系優位の肝機能障害により黄疸を呈する。
急性GVHDの多くは移植後2~4週間後に発症し、主に皮膚、消化管、肝臓が標的となる。
検査・診断
急性GVHDの診断は、組織の病理所見で行うのが基本である。
例えば、皮膚GVHDを疑う場合は皮膚生検を行う。
消化管GVHDを疑う場合は、上部または下部消化管内視鏡検査を行い、消化管粘膜の観察と生検を行う。消化管GVHDは、特にサイトメガロウイルス腸炎との鑑別が重要である。
肝GVHDを疑う場合は、肝生検を行うことが望ましいが、実際は困難なことも多い。肝GVHDは比較的まれで単独で発症することは少なく、多くは皮膚や消化管のGVHDとともに総ビリルビンやALPの上昇などで臨床診断されることもある。移植後早期(特に30日以内)では肝中心静脈閉塞症(VOD/SOS)や薬剤性肝障害などとの鑑別が重要となる。これらの臓器ごとの重症度(Stage)を元に急性GVHDの重症度(Grade)評価を行い、一般にGrade II以上の急性GVHDは全身治療を行う。
治療法
急性GVHDの一次治療は、副腎皮質ステロイド(mPSL)の全身投与である。一次治療により約6~7割に効果が期待できる。mPSLの効果が不十分であった場合、または効果を認めなかった場合は二次治療へ移行する。
ステロイド抵抗性のGVHDの予後は不良である。二次治療としての標準的な治療法は確立していないが、近年、間葉系幹細胞(MSC)の使用が増加している。その他、抗胸腺免疫グロブリン(ATG)やミコフェノール酸モフェチル(MMF)などが使用される。
予防
急性GVHDの予防は、一般的にはタクロリムス(TAC)やシクロスポリン(CSP)などのカルシニューリン阻害薬と併用して、短期メトトレキサート(MTX)を使用する場合が多い。近年MMFがGVHD予防として保険承認され、
近年増加してきているHLA半合致移植の場合は、一般に移植後大量シクロフォスファミドを用いる。
引用参考文献
1)日本造血細胞移植学会.“造血細胞移植ガイドラインGVHD 第4版”.