最終更新日 2019/10/08

肝中心静脈閉塞症

肝中心静脈閉塞症とは・・・

肝中心静脈閉塞症(かんちゅうしんじょうみゃくへいそくしょう、sinusoidal obstruction syndrome;SOS)とは、肝臓の毛細血管である類洞(るいどう)に血栓が生じることで周囲の肝細胞が障害される、造血幹細胞移植後の合併症の一つである。肝類洞閉塞症候群(veno-occlusive disease;VOD)ともいう。

 

SOSの原因は、移植前処置による大量化学療法や放射線照射などにより、類洞内皮細胞と肝細胞が傷害されることである。肝類洞内が閉塞することで門脈圧が亢進し、痛みを伴う肝腫大や黄疸などが生じる。多くは同種移植後21日以内と早期に生じるが、1~2割はそれ以降に生じることがある。

 

症状

SOSの主な症状としては、右上腹部痛、肝腫大、腹水貯留、体重増加、総ビリルビン値上昇(黄疸)などがある。これらは、移植後21日以内に生じることが多い。ブスルファンを含む前処置(特に骨髄破壊的前処置)や、全身放射線照射(TBI)、非血縁・HLA不適合ドナー、ゲムツズマブオゾガマイシンやイノツズマブオゾガマイシンの投与歴などが原因と考えられている。

 

検査・診断

>SOSの診断には、Seattle criteriaやBaltimore criteriaなどが用いられる。しかし、近年は移植後30日を越えてから発症する遅発性のSOSの報告が増加しており、2016(平成28)年に欧州造血細胞移植学会から新たな診断基準が提唱されている(表11)

 

診断においては、薬剤性肝障害や急性GVHD感染症による肝障害など、他疾患の可能性の除外も重要である。

 

表1肝中心静脈閉塞症の診断のための新EBMT基準

 

 

治療法

>SOSの治療法では、治療薬としてデフィブロタイドの使用が最も実績がある。日本においても、2019(令和元)年6月に治療法として承認された。デフィブロタイド以外の薬剤の有効性は、現在は確立していない。

 

 

予防

>SOSの予防には、リスク因子の回避が重要である。予防薬としてウルソデオキシコール酸は有効性が示されており、一般に使用される。しかし、否定的な報告もあり有効性は確立していない。

 


引用参考文献
1)M Mohty,et al.Revised diagnosis and severity criteria for sinusoidal obstruction syndrome/veno-occlusive disease in adult patients: a new classification from the European Society for Blood and Marrow Transplantation.Bone Marrow Transplant.51,2016,906-912.(PMID: 27183098)
2)福田隆浩.造血幹細胞移植ポケットマニュアル.医学書院,2018,490p.(ISBN:9784260031608)

執筆: 藤本亜弓

島根大学医学部附属病院  腫瘍・血液内科医科医員

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