経皮内視鏡的胃瘻造設術:PEG | ドレーン・カテーテル・チューブ管理
『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)について説明します。
望月弘彦
相模女子大学栄養科学部管理栄養学科准教授
山田圭子
愛生会山科病院入退院管理室退院支援看護主任
《経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)の概要》
主な適応 |
脳血管障害、神経変性疾患、頭頸部腫瘍による摂食嚥下障害や、誤嚥性肺炎を繰り返す場合など |
目的 |
1か月以上の長期間に及ぶ経腸栄養の投与、幽門狭窄や上部小腸狭窄時の減圧 |
合併症 |
造設時:腸管の誤穿刺、出血、腹膜炎など 留置中:(カテーテル関連)事故抜去、創感染、皮膚の圧迫壊死、バンパー埋没症候群(栄養剤関連)誤嚥性肺炎、下痢など |
交換のめやす |
瘻孔が完成する造設3~4週以降に交換できる。 バルーン型では1~2か月ごと、バンパー型では4~6か月ごとに定期的に交換する。 |
観察ポイント |
造設直後 : 胃内や瘻孔からの出血がないか確認し、瘻孔周囲の感染徴候に注意する 瘻孔周囲 : 消化液や栄養剤の漏れから生じる発赤・びらん、カテーテルの固定による腫脹や潰瘍、感染徴候などがないか観察する |
ケアのポイント |
スキンケア : 漏れによるトラブルを防ぐため、洗浄・乾燥やコットンパフの使用で瘻孔部の清潔を保つ カテーテルの固定 : 締め付けや傾斜がないよう、あそび(1.5cm程度)と垂直な角度を保てるよう工夫する |
〈目次〉
PEGの定義
経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy:PEG)とは、消化管の機能には問題ないが、長期的に経口的な栄養摂取が不可能な場合や経口摂取のみでは必要な栄養量を摂取できない場合に選択される消化管瘻アクセスである1。
適応の判断と造設前後のケアを適切に行うことが、胃瘻造設後のQOL(quality of life)の向上につながる。
PEGの目的、適応と禁忌
1か月以上の長期間に及ぶ経腸栄養の投与ルートおよび、幽門狭窄や上部小腸狭窄時の減圧ルートとして用いられる。
脳血管障害、神経変性疾患、頭頸部腫瘍などによる摂食嚥下障害や、誤嚥性肺炎を繰り返す場合などが主な適応となる。
適応を考える際には、
①医学適応
②患者の意向
③QOL
④周囲の状況(造設後の療養環境など)
に配慮する。
PEG造設後の予後を左右する因子として、
①消化管の未使用期間が長い
②低栄養状態(アルブミン、コレステロール、総リンパ球数などの指標)
③合併症の存在(腎機能障害、虚血性心疾患、CRP高値)
がある。
造設前に造影や腹部CTで確認することが、造設時の合併症予防となる。
造設前に嚥下機能評価を行い、造設前後の口腔ケア、摂食嚥下リハビリテーション、栄養管理を適切に行うことがQOLの改善につながり、「おなかにつけたもう1つの口」「食べるためのPEG」と呼ばれている。
最近、認知症高齢者に対するPEGについて議論されているが、「PEGの適応」ではなく、「人工的水分・栄養投与(artificial hydration and nutrition:AHN)の適応」についてまず考える必要があり、AHNを行うのであれば、最も適した投与ルートを選択するべきである。
絶対的・相対的な禁忌を表1に示す。相対的な禁忌については、注意が必要である。
PEGの造設方法
PEG造設は胃内視鏡下で行われる。
造設方法には「pull法/push法」と「introducer法/introducer変法」がある。
どちらも、内視鏡下で送気をして腹壁と胃壁を密着させ、穿刺を行い、ガイドワイヤーを挿入するところまでは同じである(図1)。
1pull法/push法
ガイドワイヤーを内視鏡のスネアで把持して口から引き出し、PEGカテーテルを結び付ける。
腹側からガイドワイヤー引っ張って留置するのが「pul(lプル)法」、口側からガイドワイヤーに沿って押し込むのが「push(プッシュ)法」である。
内視鏡を一度引き抜いたあとに再度挿入する必要があり、PEGカテーテルが口腔・咽頭を通って留置されるため、細菌汚染される可能性がある。
20~24Frの太いバンパー・チューブ型やバンパー・ボタン型のカテーテルを留置することができる。
2introducer法/introducer変法
ガイドワイヤーに沿ってイントロデューサーを挿入して挿入部を拡げ、PEGカテーテルを留置する方法で、口腔・咽頭の細菌に汚染されない利点がある。胃壁固定が必須であり、気腹を起こすことがある。
従来のintroducer(イントロデューサー)法では、細いバルーン・チューブ型のカテーテルしか留置できなかったが、改良され、太いカテーテルも留置できるようになった。
Introducer変法では、20~24Frのバンパー・ボタン型のカテーテルが留置できる。
PEGカテーテルの構造と種類
PEGカテーテルは、外部ストッパーと内部バンパーで、腹壁と胃壁を挟み込んで密着させることで瘻孔を形成させる(図-b)。瘻孔の完成には3~4週間を要する。
PEGカテーテルは、内部バンパー(胃内)と外部ストッパー(体外)の組み合わせから4種類に分類される(図2)
PEGの合併症と予後
1造設時の合併症
造設時の合併症として、腸管や肝臓の誤穿刺、出血、腹膜炎などがある。
2造設後の合併症
①カテーテルに起因するもの:事故抜去や創感染、皮膚の圧迫壊死、バンパー埋没症候群などがある。
②栄養剤投与に起因するもの:誤嚥性肺炎や下痢、栄養剤の漏れ、高血糖、脱水、電解質異常などの代謝性合併症がある。
3造設後の予後
予後は施設や国によって異なる。
日本では欧米に比べて予後が良好で、PEG造設後の生存率は1か月90~95%、6か月60~75%、1年40~66%、50%生存期間が約2年と報告されている2−4。
PEGからの経腸栄養
患者の全身状態が安定しており、瘻孔部の感染徴候がなければ、造設後1~3日から経腸栄養を開始する。
投与量や速度は、造設前から経腸栄養を施行していた場合は数日で必要量の投与ができるが、消化管の未使用期間が長いときには慎重にステップアップしていく。
栄養投与量の基本は、エネルギー:20~30kcal/体重(kg)、タンパク質:1g/体重(kg)、水分:25~30mL/体重(kg)で、全身状態や基礎疾患、体重の変化、検査データなどを参考に調節する。
投与時の体位は30度上半身挙上が基本となり、胃・食道逆流が疑われるときには半固形状流動食の投与を検討する。
栄養剤投与後に20~30mLの水でカテーテル内を洗浄することがカテーテルを清潔に保つために大切で、その後、10倍希釈食酢や0.5%クエン酸液を充填することも効果的である。
PEGからの薬剤投与は、薬剤を55℃の湯に溶かしてから投与する「簡易懸濁法」が好ましいが、薬剤師と相談して決めるのが一番である。
PEGの交換
瘻孔が完成する造設後3~4週間以降に交換する。
バルーン型では、30日ごとの交換を推奨する製品と60日ごとの交換としている製品があり、添付文書の記載で確認する必要がある。1日以上の留置で保険適用となる。
バンパー型では、4~6か月で交換する。4か月以上の留置で保険適用となる。
PEG交換時にカテーテルが腹腔内へ逸脱することが最大の合併症で、0.5%の頻度といわれている。内視鏡、X線透視、スカイブルー法などで胃内に留置されたことを確認してから栄養剤の注入を再開する。
ケアのポイント
胃瘻の患者に接するとき、まず胃瘻カテーテルの種類と構造を確認し、毎日の観察とケアを行うことが大切である。
1PEG造設前の看護
PEGの適応と造設後の療養環境の確認を行うと同時に、患者や家族の不安を解消するように努める。
合併症を予防するためにも、口腔ケアと排便コントロールを確実に行う。
2PEG造設中の看護
造設中の急変も起こりうるので、緊急カートを準備し、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)や心電図(electrocardiogram:ECG)モニター、自動血圧計などで患者の全身状態を観察する。
口腔内に唾液の貯留があるようなら、適宜吸引する。
3PEG造設後の看護
造設後24時間は、割ガーゼを2~3枚重ねて外部ストッパーの圧が強くなるように調節するが、その後はガーゼを外し、外部ストッパーと皮膚の間に1〜1.5cmの余裕をもたせる。
胃内や瘻孔からの出血がないことを確認し、出血を認めるようなら、再度、外部ストッパーによる圧迫を行う。
瘻孔周囲の感染徴候がないか確認する。
瘻孔より栄養剤の漏れがないか確認する。
4スキンケア
①造設直後のスキンケア
瘻孔部の消毒は、造設翌日までの2日間のみ行うが、感染徴候が認められた場合はこの限りではない。
造設3日目から抜糸までの1週間は、微温湯にて洗浄し、洗浄後は水分をしっかり拭き取る。
抜糸後はシャワーが許可され、瘻孔が完成される2週間後には入浴が許可される。
②日常のスキンケア
大切なことは、日々の観察である。
消化液や栄養剤の漏れからくるスキントラブルを予防するために一番望ましいスキンケアは、シャワーや入浴である。瘻孔部を弱酸性の石けんを泡立てて洗い、微温湯で洗浄する。洗浄後は十分に水分を拭き取り、自然乾燥させる。入浴できない場合でも、基本ケアは必要である(図3)。
スキンケア後、外部ストッパーと体表の間にコットンパフ(Yパフ、図4)を挟み、注入ごとに交換するだけで、瘻孔部の清潔を保てる。
5カテーテルの固定
胃瘻カテーテルは、外部ストッパーと体表との間に1.5cm程度のあそびがあり、自由に上下可動・回転ができ、腹壁に対して垂直であることが理想的である(図5)。
胃瘻が斜めに造設されていたり、接続チューブなどでカテーテルが腹壁に対して斜めになっている場合、腹壁には外部ストッパーの接触性による皮膚炎や潰瘍、胃壁には内部バンパーの圧迫による胃潰瘍が生じる可能性がある(図6〜8)。
図7接触性皮膚炎・皮膚潰瘍
また、一方向に圧迫する力がかかることにより、瘻孔がめくれあがり、肉芽を形成する(図9)。
滲出液の多い肉芽、出血を伴う肉芽は、ベタメタゾン軟膏を使用しても改善しない。このような場合には、焼灼治療を行う。電気メスを使用し切除する方法もあるが、20%硝酸銀水で焼灼する方法がある(図10)。
発赤が生じた場合は、チューブやストッパーの接触による刺激であるのか、消化液や栄養剤の漏れが原因なのかを見きわめることが大切である。原因に対する対策を行ったあと、スキンケアとして軟膏のほか皮膚保護剤/材や皮膚皮膜剤を用いて処置を行い、発赤が消失したらワセリンで保護する。機械的刺激によるびらんや潰瘍などが生じた場合は、軟膏のほか、皮膚保護剤/材を用いてケアを行う(表2)。
チューブ型の場合、外部ストッパーを押し込み固定したあと、スポンジを利用して瘻孔とカテーテルとの関係を垂直に保ち、カテーテルが引っ張れないように固定位置を工夫するとよい(図11)。
[引用・参考文献]
- (1)日本静脈経腸栄養学会編:静脈経腸栄養ガイドライン第3版.照林社,東京,2013:17.
- (2)Suzuki Y,Tamez S,Murakami A,etal.Survival of geriatric patients after percutaneous endoscopic gastrostomy in Japan.World J Gastroenterol 2010;16(40):5084-5091.
- (3)PEGドクターズネットワーク:平成21年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)高齢者医療及び終末期医療における適切な胃ろう造設のためのガイドライン策定に向けた調査研究事業報告書.PEGドクターズネットワーク,東京,2010:3.
- (4)PEGドクターズネットワーク:平成22年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)認知症患者の胃ろうガイドラインの作成-原疾患、重症度別の適応・不適応、見直し、中止に関する調査研究-調査研究事業報告書.PEGドクターズネットワーク,東京,2011:5.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2015照林社
[出典] 『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド第一版』 (編著)窪田敬一/2015年7月刊行/ 株式会社照林社