最終更新日 2018/01/09

胃潰瘍

胃潰瘍とは・・・

潰瘍(いかいよう、gastric ulcer)とは、胃粘膜の一部が、粘膜筋板よりも深くまで欠損した状態のことである。

 

好発年齢は40~60歳代がピークであり、胃角部に発生することが多い。

 

正常な状態では胃酸や消化酵素(攻撃因子)から粘膜を保護するため、さまざまな防御因子が働いている。しかし、何らかの原因で攻撃因子と防御因子のバランスが崩れることで胃潰瘍は発生するとされる。

 

要因

要因としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)が重要といわれている。

 

NSAIDsは、鎮痛薬や抗血小板薬などに使われている薬であるが、胃粘膜保護にかかわる酵素の合成を阻害すること(COX阻害作用)で防御因子が弱まり、粘膜を損傷し、胃潰瘍が発症するとされる。高齢者の慢性的なNSAIDsの使用で、胃潰瘍は特に起こりやすくなる。
H.pyloriは胃酸の中でも生息できる細菌であり、胃粘膜の傷害を引き起こすことで胃潰瘍の原因となる。

 

症状

胃潰瘍の症状としては、心窩部痛、不快感、嘔気・嘔吐、食思不振などの症状を呈することもあるが、約70%の患者は無症状との報告もある。心窩部痛は食直後に起こりやすい。

 

合併症

起こり得る合併症としては、大量の吐血や、吐血したものを誤嚥することによる窒息などがある。大量吐血の場合は、緊急の内視鏡的止血術が必要となる。
もう一つの重要な合併症として、潰瘍が深くなると消化管穿孔を引き起こすことがあり、注意が必要である。

 

治療

合併症に対する治療とともに、潰瘍に対する治療を行う。基本的にはNSAIDsなどの原因となり得る薬剤の中止やプロトンポンプ阻害薬(Proton pump Inhibitor; PPI)もしくはH2受容体拮抗薬(H2 receptor antagonist; H2RA)の投与を行う。H.pyloriが陽性であれば、潰瘍再発防止のため、慢性期に除菌を行う。

執筆: 大久保祐希

兵庫県立尼崎総合医療センター ER総合診療科フェロー

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