経皮経食道胃管挿入術:PTEG | ドレーン・カテーテル・チューブ管理
『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は経皮経食道胃管挿入術(PTEG)について説明します。
永田 仁
獨協医科大学医学部第二外科学内講師
小川絢子
獨協医科大学病院看護部
《経皮経食道胃管挿入術(PTEG)の概要》
主な適応 |
がん性腹膜炎や腫瘍による複数箇所のがん性狭窄による消化管閉塞のうち、ステント挿入、バイパス術、人工肛門造設などの適応のない場合 |
目的 |
経管栄養、腸管減圧 |
合併症 |
造設時:造設時の誤嚥に伴う肺炎、出血、誤穿刺による縦隔炎 留置中:カテーテルの事故抜去、閉塞、損傷、瘻孔拡大・瘻孔周囲皮膚びらん |
抜去のめやす |
消化管の狭窄や閉塞が解除されれば抜去可能となるが、現実的にはほとんどない |
観察ポイント |
挿入直後 :排液の性状・量、腹痛の有無を観察し、出血時はバイタルサインを測定し、すみやかに医師へ報告する 瘻孔周囲 :皮膚表面や瘻孔周囲の出血を観察し、皮膚に発赤や腫脹、びらん、潰瘍などの感染徴候がないか観察する |
ケアのポイント |
カテーテル管理 :適宜、微温湯を用いたフラッシュやミルキングを行う 体位 :誤嚥性肺炎や瘻孔周囲の皮膚トラブル予防のため、常に上体を挙上する |
〈目次〉
経皮経食道胃管挿入術の定義
経皮経食道胃管挿入術(percutaneous transesophageal gastro-tubing:PTEG)とは、超音波ガイド下、X線透視下に頸部食道瘻を造設する手技である。
頸部の瘻孔より胃内、十二指腸や小腸内にカテーテルを留置し、経管栄養や腸管減圧が行える1。
PTEGの適応と禁忌
適応:がん性腹膜炎や腫瘍による複数箇所のがん性狭窄による消化管閉塞である2。ステント挿入、バイパス術や人工肛門造設などの適応のないものはすべて適応となる。
禁忌:食道静脈瘤のある症例、出血傾向のある症例である。
PTEGの挿入経路と留置部位
挿入は、経鼻で頸部食道内に留置した非破裂型バルーンを経皮的に穿刺し、ガイドワイヤー挿入後にガイドワイヤーに沿って拡張、カテーテルを留置する。
留置部位は消化管閉塞部位のすぐ口側の拡張腸管内が望ましく、可能であれば一期的に消化管閉塞部位まで胃管または専用のイレウス管を先進させ、消化管内容をドレナージする。
PTEGの合併症
PTEGの合併症としては、
①造設に伴う合併症
②カテーテル管理に伴う合併症
③頸部皮膚の瘻孔部の合併症
④ドレナージ管理に伴う合併症
がある。
1造設に伴う合併症
造設時の誤嚥に伴う肺炎、出血、誤穿刺による縦隔炎がある。いずれも直後から数日内に発症する合併症であり、特に出血は周辺血管損傷による思わぬ大出血を招くことがある。
多くの場合、皮膚穿刺部位近傍で起こり、圧迫で出血をコントロールしながらピンポイントに止血を行う必要がある。
2カテーテル管理に伴う合併症
カテーテルの事故抜去、閉塞、損傷がある。
①事故抜去
事故抜去予防のためには、不用意な牽引を避けるための固定方法の工夫が求められる(図1)。
造設後約2週間を経過すると、造設ルートに瘻孔が完成し、事故抜去後数時間以内であれば、胃内までなら容易に再挿入可能である。瘻孔完成までの事故抜去の際には、通常のPTEG造設と同じ手技が必要とされる。
②閉塞
閉塞は、時間経過とともにカテーテル内腔に腸液や経口摂取した食事内容の残渣が沈着することにより起こる。
適宜、微温湯や10倍希釈食酢によるカテーテル内のフラッシュを行うことで、カテーテル閉塞までの時間を延長するといわれている3。
カテーテル閉塞や屈曲を疑った際には、まずカテーテル内のフラッシュを行う。フラッシュが十分にできない場合には、X線写真で屈曲をチェックし、必要があれば透視下にカテーテルの屈曲を解除する。閉塞時にはカテーテルの交換を行う。
③損傷
消化管内にあるカテーテルは消化液により可塑性を減じ、破損しやすくなっている(図2)。
3頸部皮膚瘻孔部の合併症
皮膚瘻孔部の合併症は、カテーテルの固定が不十分なことによる、もしくは皮膚刺入部の感染による瘻孔の拡大、また、それに伴う胃液や胆汁の瘻孔を伝っての逆流による瘻孔周囲皮膚びらんがある。
ひとたび瘻孔周囲の皮膚びらんが生じると、同部の強い疼痛が生じ、また、さらなる瘻孔の拡大をきたし悪循環となる。予防のために上半身の挙上を常に心がけることや、カテーテル閉塞によるドレナージ不良時にはすみやかなカテーテルの交換が必要である。
皮膚びらんや瘻孔部の拡大が生じた際には、同部の洗浄と皮膚保護材貼付などによる皮膚トラブルの管理を行う(図3)。
4ドレナージ管理に伴う合併症
PTEGによる良好なドレナージを保つためには、経口摂取した水分量とドレナージした排液量を毎日記録し、排液量の急激な低下が認められた場合はドレナージ不良や閉塞などのカテーテルトラブルを疑う。
がん性狭窄は、時間の経過とともに複数箇所が出現し、カテーテル先端のさらなる口側の狭窄が生じることもしばしば経験される。カテーテルの閉塞や屈曲がなく、排液量の極端な減少と腹部膨満、嘔気・嘔吐の出現時には透視下に造影を行い、至適ドレナージ位置の確認を行い、カテーテル先端の位置変更を行う。
PTEGの利点と欠点
利点:局所麻酔のみで造設可能であり、悪性腫瘍の終末期にも安全に施行可能であること、消化管ステント留置に伴う消化管穿孔やステント内の腫瘍増殖に伴う出血や再閉塞がないことである。
がん性狭窄部位の増加に伴うドレナージ不良時には、透視下にカテーテル先端位置を容易に変更できることも利点である。また、カテーテル内を通過する流動食などは、ドレナージさえ可能であれば経口摂取ができ、QOLも良好である。
欠点:あくまでも経鼻胃管の代用であり、経鼻胃管以上の効果は期待できないことである。前述と重複するが、経口摂取はカテーテルでドレナージできる範囲内であり、栄養摂取に関しては経静脈的栄養が必須である。そのため、適応は厳密に定めるべきであり、消化管バイパス術や人工肛門造設、ステント挿入が可能であり、腸管での栄養が可能な場合にはQOLを考慮し、そちらを優先すべきである。
PTEGのケアのポイント
1出血
刺入部近くに頸動脈などの血管が走行しているため、排液の性状や量、腹痛の有無を観察し、出血時はバイタルサインを測定しすみやかに医師へ報告する。
皮膚表面の出血、瘻孔周囲の皮下出血がないか観察する。
2瘻孔感染
皮膚に発赤や腫脹、びらん、潰瘍などがないか観察する。
感染が疑われたときは、バイタルサインと合わせて医師へ報告し、処置の方法を検討する。
3事故抜去
造設直後は瘻孔が完成していないため、特に注意を要する。どの部位に挿入されているか、皮膚からの長さを確認して十分なテープ固定を行う(図4)。
抜去に気づいたら、ただちに医師へ報告し、瘻孔閉鎖を予防する処置を行う。
4体位
逆流による誤嚥性肺炎の予防や瘻孔周囲のスキントラブル予防のため、常に上体を挙上する(逆流症状を防ぐ角度は個人差があるため調整する)。
5スキンケア
瘻孔が完成したあとは、刺入部の消毒は不要である。1日1回は水道水で周囲を清拭し、清潔を保つ。
汚れが落ちにくいときは、弱酸性の石けんで拭き取るか洗い流す。シャワー浴や入浴に制限はない。
6口腔ケア
唾液分泌量が少なくなり、口腔の自浄作用が低下する。誤嚥性肺炎防止のためにも、食事をしていなくても歯みがきをしたり、嚥下運動がスムーズにできるよう口腔保湿剤を用いるなど、口腔内の清潔に努める。
7カテーテル閉塞
カテーテルの閉塞を予防するために、適宜微温湯または10倍希釈食酢でフラッシュしたり、カテーテルをミルキングして排液を促す。
閉塞が改善しない場合は、すみやかにカテーテルを交換する。
[引用・参考文献]
- (1)大石英人,進藤廣成,城谷典,他:経皮経食道胃管挿入術(PTEG:ピーテグ);その開発と実際.IVR会誌2001;16(2):149-155.
- (2)永田仁,高木和俊,窪田敬一:PEGの禁忌症例以外のPTEGの適応.
亀岡信悟監修,大石英人編,経皮経食道胃管挿入術適応から手技・管理の実際まで,永井書店,大阪,2008:38-39. - (3)高橋美香子:カテーテルを長持ちさせるためのコツ,PTEG留置チューブの管理.亀岡信悟監,経皮経食道胃管挿入術-適応から手技・管理の実際まで,永井書店,大阪,2008:143-147.
- (4)大石英人:PTEGって何?どうするの?.東口高志編,徹底ガイド胃ろう(PEG)管理Q&A,総合医学社,東京,2011:51-53.
- (5)新槇剛:療養を支援するIVR①経皮胃瘻造設術(PG)・経皮的食道胃管挿入術(PTEG).プロフェッショナルがんナーシング2014;4(1):14-15.
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[出典] 『ドレーン・カテーテル・チューブ管理完全ガイド第一版』 (編著)窪田敬一/2015年7月刊行/ 株式会社照林社