最終更新日 2024/07/18

ジクロフェナク

ジクロフェナクとは・・・

ジクロフェナク(じくろふぇなく、Diclofenac Sodium)とは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に属する薬剤である。総称名は、ボルタレン、ナボール、ジクロフェナクNaなどがある。

 

この薬は主にジクロフェナクナトリウムの形で存在し、錠剤、坐薬、テープ、ゲルなどのさまざまな製剤がある。ジクロフェナクの特徴として、強力な鎮痛作用と抗炎症作用があり、関節炎筋肉痛、歯痛などの痛みを和らげるのに効果的である。また、発熱を伴う炎症状態の際にも使用される。

 

ジクロフェナクは他のNSAIDsと比較しても優れた鎮痛効果を持ち、特に関節痛や筋肉痛などの慢性的な疼痛の管理に広く使われている。しかし、NSAIDsとしての一般的な副作用リスクも持ち合わせているため、腸障害や心血管系の問題などに注意が必要である。特に、長期使用や高用量での使用は、これらの副作用のリスクを高める可能性があるため、使用には慎重さが求められる。

 

禁忌

ジクロフェナクの投与禁忌には以下のものがあり、それぞれには特定の理由がある。

 

・消化性潰瘍のある患者:ジクロフェナクは胃粘膜を刺激し、潰瘍を悪化させる可能性がある。
・重篤な血液の異常のある患者:ジクロフェナクは血液障害を引き起こすリスクがあるため、既存の血液異常を悪化させるおそれがある。
・重篤な肝障害のある患者:ジクロフェナクは肝機能に影響を与えるため、肝障害を悪化させることがある。
・重篤な腎障害のある患者:ジクロフェナクは腎血流量を低下させる作用があるため、腎障害を悪化させるおそれがある。
・重篤な高血圧症のある患者:ジクロフェナクはナトリウムと水分の貯留を引き起こし、血圧をさらに上昇させる可能性がある。
・重篤な心機能不全のある患者:ジクロフェナクはナトリウムと水分の貯留を引き起こし、心機能を悪化させるリスクがある。
・ジクロフェナクに過敏症既往歴のある患者:アレルギー反応を引き起こすおそれがある。
アスピリン喘息またはその既往歴のある患者:ジクロフェナクは重症喘息発作を誘発する可能性がある。
・妊婦または妊娠している可能性のある女性:ジクロフェナクは胎児への悪影響を及ぼす可能性がある。
・トリアムテレンを投与中の患者:トリアムテレン(利尿・血圧降下剤)の腎障害を悪化する可能性がある。

 

これらの禁忌条件に該当する患者にジクロフェナクが投与されていないか、常に注意深く監視する必要がある。

 

効能・効果

ジクロフェナクの主な効能・効果は、以下の通りである。

 

・炎症や疼痛の緩和:怪我や手術後の炎症に伴う痛み、歯痛、頭痛などの疼痛を緩和する。
関節リウマチや変形性関節症による関節痛の軽減:関節の腫れや痛みを和らげ、日常生活の運動機能を改善する。
・月経痛や筋肉痛の緩和:生理痛の重い女性やスポーツなどで発生した筋肉痛を緩和する。
・急性上気道炎の解熱・鎮痛:急性上気道炎の際の発熱および咽頭痛、頭痛などの症状を緩和する。

ジクロフェナクは、さまざまな種類の痛みや炎症症状に広く用いられる。ただし、過剰な使用や誤った使用方法は副作用のリスクを高めるので注意が必要である。

 

用法・用量

ジクロフェナクは複数の形態があり、各形態に応じて用法と用量が異なる。具体的な形態とその適用病態、用法については以下の通りである。

(1)錠剤・カプセル

用途:全般的な疼痛や炎症の治療。
用法:通常、成人には1日2~3回に分けて経口投与。食事の後に服用することが一般的である。

 

(2)坐薬

用途:消化器系の副作用が懸念される場合や、経口投与が難しい場合に適している。
用法:直腸内に投与。通常、成人には1日1~2回の使用が推奨される。

 

(3)テープやゲル

用途:局所的な痛みや炎症の治療に用いられる。筋肉痛や関節痛の局所治療に適している。
用法:患部に直接貼付するか、ゲルを塗布する。1日1~数回の使用が一般的である。

 

他のNSAIDsとの併用は避けることが望ましい。これは、副作用のリスクを高める可能性があるためである。

 

副作用(投与後の注意)

ジクロフェナクには以下のような重大な副作用があり、これらの症状が現れる可能性があるので注意が必要である。

・ショックやアナフィラキシー胸の苦しさ、冷汗、呼吸困難、四肢の冷感、血圧低下、意識障害など。これらの症状が現れた場合は、アレルギー反応やショックの可能性がある。
・消化管潰瘍による出血や穿孔:激しい腹痛血便、黒色便など。これらの症状が現れた場合は、消化管潰瘍による出血や穿孔の可能性がある。
再生不良性貧血溶血性貧血、無顆粒球症、血小板減少:これらの血液異常は定期的な血液検査でのモニタリングが重要である。
皮膚障害(中毒性表皮壊死融解症、Stevens-Johnson症候群など):皮膚の広範囲な赤み、水疱、剥離など。これらの症状が見られた場合は、重篤な皮膚障害の可能性がある。
・急性腎障害、ネフローゼ症候群乏尿、血尿、尿蛋白、BUNや血中クレアチニンの上昇など。これらの症状が見られた場合は、腎機能障害の可能性がある。
・重症喘息発作:特にアスピリン喘息の既往歴がある患者で注意する。
心筋梗塞血管障害:胸の痛み、意識障害、片側の麻痺など。これらの症状が現れた場合は、心筋梗塞や脳卒中の可能性がある。

 

これらの副作用はまれではあるが、発生した場合には重篤な状態に至る可能性がある。したがって、ジクロフェナクを投与する患者に対しては、これらの症状に特に注意を払うことが重要である。

 

取り扱いの注意点

薬剤の製剤に合わせた適切な取り扱いが必要である。以下は、代表的な薬剤の製剤ごとの注意点と保管方法、併用時の注意すべき点である。

 

(1)錠剤・カプセル

注意点:指定された時間に正確に服用する。錠剤は噛まずに水とともに飲む。
保管方法:直射日光や湿気を避けた涼しい場所に保管。

 

(2)点眼薬

注意点:適切な方法で点眼・点する。他の薬剤との間隔を空ける。
保管方法:直射日光を避け、冷所に保管。

 

(3)坐薬

注意点:清潔な手で適切に挿入する。
保管方法:体温で溶けるので、冷所で保管する。冷蔵庫に保管することが推奨される場合もある。

 

(4)外用薬(クリーム、ゲル)

注意点:清潔な皮膚にのみ使用し、規定量を守る。
保管方法:高温や直射日光を避ける。

 

引用・参考文献

1)ジクロフェナクNa(2024年7月閲覧)

執筆: 白川和宏

神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター副医長

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