最終更新日 2017/07/24

直腸

直腸とは・・・

直腸(ちょくちょう)とは、約20cmの大腸の末端部で、肛門に続く部分である。上部は腹膜に覆われており、後方は仙骨と尾骨がつくる曲面に沿って彎曲している。下部は長さ約3cmの肛門管に移行する。直腸と肛門管の境界は粘膜がのようにいりくんだ格好をしているため、歯状線(しじょうせん)と呼ばれる。

肛門管の外側には、意思に従って動かすことができない内肛門括約筋と、意思に従って動かすことができる外肛門括約筋がある。通常これらは、便が体外に排泄される排便時以外は収縮し、便が漏れないように作用している。

 

直腸の働き

結腸の蠕動(ぜんどう:消化管が食物を送る動き)によって便が直腸へ移動すると、直腸の収縮反射(排便反射)が起こる。その際、意識的に外肛門括約筋をゆるめて排便が行われる。

 

便意を感じると、トイレに行くまでの間、外肛門括約筋を意識的に収縮させて一時的に排便を我慢する。また、不適当な場面で便意を感じた時、外肛門括約筋の収縮をさらに強めることができる。これが数分続くと排便反射は消え、排便が行われない。このように、直腸は便意とも密接に関連している。

 

直腸の不調によって起こる疾患・症状

排便障害

排便障害は大きく便秘と便失禁に分けられる。
・便秘
排便回数が少ない(3日に1回未満、週2回未満など)、便が硬い、いきまないと出ないなどのいろいろな症状を含んだ概念である。便秘には、便が作られる過程や排便のしくみに障害があって起こる「機能性便秘」と、腸そのものの病変によって起こる「器質性便秘」がある。便秘の治療には食事、運動、緩下剤といった保存的療法が主体となる。

 

・便失禁
便意が我慢できない、または無意識のうちに便が漏れることをいう。一般に便失禁は肛門括約筋の機能が低下することによって起こる。これは、分娩時括約筋外傷、肛門直腸手術時の括約筋の損傷などが原因となって起こる「外傷性便失禁」と、経産婦や加齢が原因で起こる「突発性便失禁」がある。便失禁の治療には、生活習慣の改善、骨盤底筋体操、薬物治療などを用い排便コントロールを行う。

 

直腸炎

直腸に炎症が起こった状態である。原因として、潰瘍性大腸炎クローン病、感染性のものとして、赤痢、アメーバ性腸炎、カンピロバクター腸炎など、外傷性のものとしては直腸脱、器具によるものなどが挙げられる。その他に、虚血性腸炎、放射線性直腸炎、薬剤性直腸炎がある。

 

直腸炎の症状として下痢や粘血便が挙げられる。進行によって食欲不振、体重減少、貧血などの全身症状を伴うこともある。多くは薬物治療や、食事療法(絶食、乳製品を避ける、低脂肪食)を行う。

 

直腸脱

直腸脱とは、肛門から直腸が脱出することで、直腸粘膜のみが脱出する不完全直腸脱と直腸全層が脱出する完全直腸脱がある。骨盤底部の筋肉を含めた支持組織の緩みと、直腸の固定の異常が原因として挙げられ、便秘や排便時のいきみが原因となって起こることが多い。

 

直腸脱は高齢の女性に多く、全体の9割が70~80代の女性である。治療は手術が原則で、経肛門的手術(肛門側から行う手術)と経腹的手術(腹部の中から行う手術)の二種類に分けられる。

 

直腸がん

直腸がんは大腸がんの約40%を占めている。大腸がんの原因として生活習慣が大きく関わっているとされ、赤身肉などのたんぱく質や動物性脂肪の過剰摂取、食物繊維摂取不足、喫煙、アルコール多飲などが挙げられる。また、一部は遺伝的要因もある。

 

直腸がんの症状として血便、腹痛、便通異常、腹部膨満感などが挙げられる。現在では早期がんの場合、適切な治療を施せば治癒することも多い。がんが粘膜下層まで浸潤していないステージ0期は内視鏡手術で治療を行うことが多い。

 

がんが粘膜下層へ浸潤しているが筋層まで達していないステージ1期の場合は、ステージ0期と同様に内視鏡手術を実施することもある。がんが腸壁の筋層に浸潤している状態のステージ1期は広範囲にがんを切り取る根治手術を行う。

 

腸壁の筋層を超えて浸潤、またはリンパ節に転移が認められるステージ2~3期では、リンパ節郭清術を伴う根治手術行い、再発予防のため術後補助化学療法を行うこともある。
遠隔転移を伴うステージ4期では、手術可能なら転移巣も含めた外科的手術を試み、難しければ全身化学療法を中心とした治療を行う。

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