全身性エリテマトーデス、慢性円板状エリテマトーデス|膠原病①

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は全身性エリテマトーデス、慢性円板状エリテマトーデスについて解説します。

 

古川福実

高槻赤十字病院

 

 

膠原病(こうげんびょう)

膠原病の原因は不明であり、全身の結合組織や血管系が系統的に侵される。病理組織像でフィブリノイド変性がみられる。

 

古典的膠原病では、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)、全身性強皮症(systemic sclerosis:SSc)、多発性筋炎(polymyositis:PM)/ 皮膚筋炎(dermatomyositis:DM)、関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)などが代表的である。

 

大半は皮膚症状を伴い、全身多臓器に多彩な症状が現れ、難治性、持続性、進行性である。免疫異常所見が特徴的で、多種の自己抗体が出現する。

 

看護の役割としては、以下を患者に説明して理解を得る。

1.慢性疾患であるため、長期間の診療を必要とする。

2.病変は多彩である。

3.重症度を正確に把握するため、生検も含め種々の検査を行う。

4.悪化因子を避け、規則正しい生活、十分な休養、安静を心がける。

5.根本的な治療法はないが、ステロイド薬をはじめとする対症療法薬により、疾患のコントロールは可能である。

6.ステロイド療法は長期間にわたるため、薬の副作用を知っておく。

 

 

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全身性エリテマトーデス、慢性円板状エリテマトーデスとは

Minimum Essentials

1全身性エリテマトーデス(SLE)は、多彩な自己抗体が出現し、皮膚および全身多臓器に種々の病変を引き起こす。

2出産可能な年齢の女性に多く、日光曝露、寒冷、感染、過労などが増悪因子となる。

3慢性円板状エリテマトーデス(DLE)では、患者の多くは若い女性で、特徴的な円板状皮疹が顔面に出現する。

4皮疹は露出部位に現れることが多く、患者の精神的ストレスは大きい。前向きに療養に取り組めるように、医療者と患者や家族との信頼関係をつくり、精神的なサポートをすることが重要である。

 

定義・概念

エリテマトーデス(紅斑性狼瘡[ろうそう])は、全身多臓器を侵す全身型と皮膚限局型とに分けられる。

全身性エリテマトーデス(SLE)は多彩な自己抗体が現れ、全身多臓器に種々の病変を発症する。慢性円板状エリテマトーデス(discoid lupus erythematosus:DLE)は皮膚限局型の1つで、特徴的な円板状皮疹が露光部の顔面に好発する。

 

これらはともに疾患名であるが、近年では、近年では、皮疹の症状に基づきSLEを急性皮膚ループスエリテマトーデス、DLEを慢性皮膚ループスエリテマトーデスとよぶ場合もある。

 

原因・病態

SLEは多臓器を標的とし、一方DLEは皮膚を主要な標的とする。

 

SLEは出産可能な年齢の女性に多く、寛解と再燃を繰り返す。遺伝的素因、免疫異常、外的因子、年齢、性ホルモンなどが複雑に作用し、抗核抗体などの自己抗体が産生されることにより発症する。

 

DLEの男女比は約1:3で女性に多く、発症年齢は30〜50歳代である。ほとんどは皮膚病変のみにとどまるが、皮疹が広範囲に多発する汎発型では、SLEに移行することがある。

 

 

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診断へのアプローチ

臨床症状・臨床所見

SLE

全身の多臓器が侵されるため、皮膚粘膜病変を含め、臨床症状は多彩である。

 

(1)全身症状

発熱、全身倦怠感、体重減少などを認める。

 

(2)皮膚症状

蝶形紅斑は、SLEに代表的な皮疹である。鼻背を中心とする両頰部に左右対称性に、蝶が羽を広げたような形の紅斑が出現する(蝶形紅斑、図1)。

 

図1蝶形紅斑

鼻背を中心に、両頰部に左右対称性に、蝶が羽を広げたような形の紅斑を認める。

蝶形紅斑、鼻背を中心に、両頰部に左右対称性に、蝶が羽を広げたような形の紅斑を認める。

 

そのほか、顔面、口唇、介など露光部に出現する円板状皮疹や非瘢痕性脱毛(治療すれば毛は生えてくる)、凍瘡(しもやけ)様紅斑(図2)、口腔潰瘍、光線過敏症などと多彩である。また、レイノー現象を認める。

 

図2凍瘡様紅斑

温かくなっても消えないことで、疾患との関連が疑われることが多い。

 

レイノー現象

寒冷にさらされると手指の毛細血管が収縮し、皮膚動脈血流量が減少して蒼白となり、しびれ感や痛みを生ずる現象。

 

(3)関節症状

多発性関節炎、関節痛などが出現する。

 

(4)腎症状

ループス腎炎とよばれ、進行するとネフローゼ症候群、腎不全に移行あるいは進展する。

 

(5)精神神経症状

痙攣、血管障害、視力障害などの神経症状や、失見当識、記憶障害、せん妄、痴呆、うつ状態などの精神症状を認める。

 

(6)心症状

心囊炎、心筋炎などを生ずる。

 

(7)肺症状

胸膜炎、間質性肺炎などを認める。

 

DLE

境界明瞭な、著明な落屑(らくせつ)を伴う角化性紅斑局面が、顔面、耳介などの露光部に好発する(図3)。

 

図3慢性円板状エリテマトーデス

境界明瞭な、著明な落屑を伴う角化性紅斑局面。

慢性円板状エリテマトーデス。境界明瞭な、著明な落屑を伴う角化性紅斑局面。

 

慢性化した皮疹では、色素脱失や瘢痕を残したり、有棘(ゆうきょく)細胞癌が発生することがある。頭部では毛包が破壊され、永久脱毛を生じる。

 

まれに、発熱、関節炎、レイノー現象などの全身症状が出現し、SLEに移行することがある。

 

検査

SLEでは、溶血性貧血白血球数減少、リンパ球数減少、血小板数減少、血沈亢進、免疫グロブリン上昇、血清補体値の低下、補体活性値の低下、梅毒血清反応疑陽性などを認める。

 

種々の自己抗体が出現し、抗ds(二本鎖)DNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体(抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラントなど)が含まれる。LE細胞も出現する。

 

DLEは、一般的に検査上の異常を認めることが少ない。

 

 

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治療ならびに看護の役割

治療

おもな治療法

症状が軽い場合は、NSAIDsが投与される。活動期にはステロイド薬の全身投与が主となる。ステロイド薬への反応が悪い例では、免疫抑制薬の投与や血漿交換療法を併用することがある。皮疹にヒドロキシクロロキンの内服が有効なので、眼科のチェックを受けて内服する。

 

急性期や増悪期には安静が必要である。寛解期でも日光曝露、疲労、感染などの増悪因子は避けるようにする。妊娠、出産は増悪因子となりうるが、症状が安定していれば、妊娠、出産は可能である。

 

SLEは厚生労働省の指定難病であり、医療費の公費負担制度があるので、診断がついたら申請するよう指導する。

 

合併症とその治療法

表1のように、合併症は全身臓器にみられる。主たる治療薬であるステロイド薬の副作用に留意する。重症なものは、易感染性、糖尿病、精神障害、骨粗鬆症(あるいは無菌性骨壊死)、消化性胃潰瘍などである。

 

治療経過・期間の見通しと予後

SLEは軽快と増悪を繰り返す。臓器障害の広がりや重さによって、病気の重症度が異なる。かつては発症して5年以上生存する人は約50%とされていたが、現在では95%以上にまで改善している。

 

看護の役割

治療における看護

患者の多くは若い女性で、皮疹は他人に見られる部位に現れることが多い。長年にわたり再発と寛解を繰り返すので、社会的、精神的なダメージが大きい。

前向きに療養に取り組めるように、医療者と患者や家族との信頼関係を構築し、精神的なサポートが重要である。また、家族の協力や支えが大切である。

 

フォローアップ

・定期的に医療機関を受診する必要がある。ステロイド薬や免疫抑制薬を内服している場合は、副作用のチェックが重要となる。

 

・SLEは症状が多彩なため、軽微な体調の変化も見逃さないようにする。

 

・増悪因子を避けることも重要である。日光曝露を避けるため、つばの広い帽子や長袖の衣服を着用したり、日焼け止めを使用するよう指導する。過労を避けるため、仕事量を減らしたり、家事を手伝ってもらうことも大切である。

 

・感染も増悪因子となるので、外出後のうがいや手洗いの励行、人混みを避けることなどが必要である。

 

・若い女性の発症が多いため、妊娠、出産が問題となる。妊娠は医師、家族とよく相談のうえ決定する。

 

 

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引用・参考文献

1)Petri M et al:Derivation and validation of the Systemic Lupus International Collaborating Clinics classification criteria for systemic lupus erythematosus. Arthritis Rheum 64:2677-2686, 2012

 


 

本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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