全身性強皮症、限局性強皮症|膠原病②
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は全身性強皮症、限局性強皮症について解説します。
高槻赤十字病院
Minimum Essentials
1原因不明の皮膚硬化を主症状とし、全身多臓器に線維化をきたす全身性強皮症(通常、強皮症という)と、皮膚のみが硬化する限局性強皮症に分けられる。
2消化器、肺、筋肉、心臓、腎臓などの病変がみられ、腎・肺病変を伴うときは予後が悪い。
3血液検査で抗Scl-70抗体、抗セントロメア抗体が陽性になる。
4決定的な治療法がないため、寒冷などの増悪因子を避ける。
全身性強皮症、限局性強皮症とは
定義・概念
全身性強皮症は、皮膚や全身の多臓器に線維化をきたす疾患である。免疫異常を認め、しばしば自己抗体が出現する。
限局性強皮症は、皮膚病変が主で全身症状はないか、あっても軽度である。
原因・病態
原因は不明である。
全身性強皮症は、30〜50歳代の女性に好発する。腎病変、肺病変が進行すると予後不良である。抗Scl-70抗体や抗セントロメア抗体などの抗核抗体が出現する。
限局性強皮症は20〜50歳代に多く、通常予後良好である。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
全身性強皮症
レイノー現象が初発症状となることが多く、そのほか以下のような症状を呈する。
(1)皮膚症状
顔面、手指の硬化が必発である(図1)。
顔面はしわが消失し、表情が乏しくなる(仮面様顔貌、図2)。
加えて鼻尖は尖り、開口が不自由になり、舌小帯が線維化のため短縮する。手指の変化は、早期は軽い腫脹と浮腫のみであるが(浮腫期)、徐々に硬化し指尖は細く尖る(硬化期)。さらに進むと末節骨が萎縮し、指が短くなり、手指拘縮が起こる(萎縮期)。
難治性潰瘍が形成され、指全体が壊疽(えそ)することもある。硬化は手指から上肢に向かって進行する。皮膚の色素脱失や色素沈着、皮下の石灰沈着を認めることもある。
(2)多臓器病変
消化管、肺、腎臓、心臓、筋肉の病変が重要である。
消化管病変では、食道の蠕動(ぜんどう)運動の低下による嚥下障害、食道炎を認める。
肺の線維化は特徴的で、労作時に呼吸困難を認める。
腎病変はまれだが、強皮症腎とよばれる悪性高血圧の所見を呈することがあり、予後不良である。
心病変では心筋炎、心外膜炎などがみられる。
筋肉では圧痛、硬化、萎縮などがみられ、筋力低下に至る。
限局性強皮症
皮膚病変が主体で、全身症状はないか軽度のものが多い。皮膚の浮腫、硬化、萎縮、斑状、線状など限局的に分布する。
検査
全身性強皮症では、血沈亢進、免疫グロブリン上昇、血清RAテスト陽性などを認め、抗Scl-70抗体、抗セントロメア抗体が出現する。また、指尖脈波、皮膚温の測定、食道や消化管のX線検査、肺機能検査が必要である。
限局性強皮症では血中の抗ss(一本鎖)DNA抗体や抗ボレリア抗体が陽性のことがあるが、病因性はない。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
全身性強皮症では対症療法が主体である。安静、四肢の保温、マッサージ、末梢血管拡張薬投与などが試みられる。指趾潰瘍にはプロスタグランジンE2投与が効果的である。
厚生労働省の指定難病であり、医療費の公費負担制度があるので、診断がついたら申請するよう指導する。
限局性強皮症で局所の萎縮、硬化を示すものは、ステロイド薬の外用あるいは局注が効果的である。
合併症とその治療法
全身の臓器に病変がみられるが、基本的には対症療法である。
治療経過・期間の見通しと予後
全身性強皮症のうち、全身の皮膚硬化が目立つ患者では発症5〜6年以内に皮膚硬化の進行および内臓病変が出現する。早期に治療を開始して、内臓病変の合併や進行をできるだけ抑えることがきわめて重要である。
看護の役割
治療における看護
皮膚の硬化、萎縮によりボタンをとめられないなどの部分的なものから、歩行、移動が困難などといった全身的なものまで、さまざまな機能障害が出現する。
決定的な治療法がないため、増悪因子を避けるような生活管理が基本となる。
フォローアップ(退院指導、日常生活指導を含む)
全身性強皮症ではレイノー現象が起こることが多く、寒冷を避ける、暖かい衣服や手袋、靴下を着用するなどで保温に努める。禁煙やストレスを避けるよう心がけることなどを指導する。
軽微な外傷でも容易に潰瘍となるので、外傷を避けるようにする。指趾潰瘍がある場合は創部を保護し、感染しないような処置をする。
手指の屈曲拘縮による機能低下が起こるので(図3)、マッサージ、屈曲・伸展運動など理学療法を積極的に行う。
嚥下障害、逆流性食道炎がある場合は、よく咀嚼(そしゃく)し、食事中・食後は横にならないよう注意する。
咳や呼吸困難などの症状の有無についても留意する。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂