皮膚筋炎|膠原病③
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は皮膚筋炎について解説します。
古川福実
高槻赤十字病院
Minimum Essentials
1特徴的な皮疹と筋力低下、筋炎などの症状を呈する。
2血中クレアチニンキナーゼ、アルドラーゼなどの筋原性酵素が上昇する。また、抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体陽性が特徴的である。
3成人の症例では、間質性肺炎などの多臓器病変や、内臓悪性腫瘍を合併することがある。
4筋力低下により日常生活動作が制限されるので、基本的な日常生活面のサポートが必要である。
皮膚筋炎とは
定義・概念
横紋筋の非化膿性慢性炎症による筋症状と、特徴的な皮膚症状を呈する。筋症状のみで皮膚症状を伴わないものを多発性筋炎という。逆に筋症状を伴わない皮膚筋炎もあり、一般に予後は良くない。
原因・病態
原因は不明である。50~60歳代の女性に多いが、小児にも発生のピークがある。
慢性の経過をたどるが、肺病変などを合併し、急速に進行して死に至るものもある。約30%の成人で内臓悪性腫瘍を合併し、予後が悪い。小児の皮膚筋炎は、通常予後は良い。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床検査
皮膚症状
上眼瞼に紫紅色の浮腫性紅斑(ヘリオトロープ疹)(図1)、体幹や四肢伸側に生じるびまん性紅斑、手指関節背面に境界明瞭な暗紫色扁平な皮疹〔ゴットロン(Gottron)徴候〕(図2)あるいは丘疹(ゴットロン丘疹)がみられる(図3)。
皮疹は局面的に多彩で、ポイキロデルマとよばれる(図2)。
手指には「機械工の手」とよばれる、ざらざらした角化性の皮疹が現れることがある(図4)。皮疹がかゆいのが皮膚筋炎の特徴である。
筋症状
近位筋優位の筋力低下、筋痛などを認める。呼吸筋、嚥下筋も侵されることがあり、呼吸困難、嚥下困難の症状がみられる。
その他
発熱、全身倦怠感を認める。間質性肺炎や内臓悪性腫瘍を合併することがある。
検査
血液検査では、筋原性酵素であるクレアチニンキナーゼ、GOT、LDH、アルドラーゼが上昇する。抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体(抗Jo-1抗体を含む)は、間質性肺炎を合併する患者で陽性となることが多い。筋生検、筋電図、MRIで診断を確定する。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
ステロイド薬、免疫抑制薬を投与する。活動期には安静、回復期にはリハビリを行う。厚生労働省の指定難病であり、医療費の公費負担制度があるので、診断がついたら申請するよう指導する。
合併症とその治療法
間質性肺炎合併や悪性腫瘍を合併していれば、それらの治療を最優先する。
治療経過・期間の見通しと予後
個別の患者の重症度や多臓器症状の程度による。
看護の役割
治療における看護
筋力低下により日常動作が制限され、患者の精神的なストレスも大きくなる。患者にとって安全な行動の範囲と程度を把握し、日常生活をサポートする。
フォローアップ
・筋力低下を伴うため、トイレや階段など、生活環境の改善や種々の装具が必要となることがある。筋原性酵素の変動に注意しながら積極的に理学療法を行い、筋力の回復を図る。
・長期にわたりステロイド薬や免疫抑制薬を内服することが多いため、SLEと同様に副作用の発現に注意する。
・死因は呼吸不全、心不全、感染症が多く、これらの発症を予防し、早期発見を心がける。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂