循環補助用心内留置型ポンプカテーテル挿入患者の看護|ICU における循環器内科患者の看護

『ICU看護実践マニュアル』(サイオ出版)より転載。
今回は、「循環補助用心内留置型ポンプ カテーテル挿入患者の看護」について解説します。

 

清水由香
市立青梅総合医療センター 看護師

剱持雄二
市立青梅総合医療センター 看護主任

峠坂龍範
市立青梅総合医療センター 臨床工学技士

 

 

 

Key point
  • Impellaの特徴を知る。
  • Impella挿入中の看護の概要を知る。

 

 

Impellaとは

Impella®(インペラ)とは、経皮的または経血管的に左心室に挿入し、循環補助・左室補助を行う心内留置型ポンプカテーテルのことをいう。

 

 

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Impellaの仕組み

カテーテル先端部が左心室内になるように挿入し、留置する。

 

制御装置でインペラ(羽根車)を回転させることでカニュラを通して血液を吸引し、左心室から直接血液を引くことで低侵襲で、循環補助と左室補助(心筋灌流改善)を行う(図1)。

 

図1Impellaの仕組み

Impellaの仕組み
 

 

 

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Impellaポンプカテーテルの種類

カテーテルの種類について、表1に示す。

 

表1Impellaポンプカテーテルの種類

 

 

Impellaの禁忌・禁止症例

大動脈機械式人工心臓弁

動脈弁逆流や機械弁の損傷の可能性がある。

 

 

中等度以上の大動脈閉鎖不全症

大動脈弁とカニュラの密閉性が得られず、適切な循環量補助ができない。

 

Impella挿入中は、MRI検査は禁忌である。

 

 

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Impellaの注意症例

左室内の壁在血栓

血栓を吸い込みモーターが停止する。塞栓の可能性が生じる。

 

 

大動脈弁狭窄・石灰化

Impellaが大動脈弁を通過できない可能性がある。

 

 

重度の蛇行・屈曲性のルート血管

デリバリー困難の可能性がある。

 

 

末梢血管閉塞性疾患

Impellaの挿入や留置ができない可能性がある。

 

 

右心不全

充分な左室フィリングを得られないことにより適切な循環補助ができない。

 

 

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Impellaの効果

左心室の補助

左心室内の血液を吸入脱血することにより、左室仕事量が減る(心筋酸素量の低下・左室圧容量負荷を軽減する)。

 

 

全身の血液量増加

左心室から脱血した血液を上行大動脈から駆出することで、全身への血流が増加する(血圧上昇&臓器灌流UP)。

 

 

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Impellaの管理

Impellaカテーテルの固定

Impella CPでは、一定の刺入角度を維持しなければ、穿刺部より大量出血の危険があるため注意する(図2)。

 

図2Impellaカテーテルの固定

Impellaカテーテルの固定の写真

 

 

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Impella制御装置管理

1制御装置に波形により、ポンプ位置を確認する。

 

波形異常や、ポンプ位置心室内アラーム、ポンプ位置不良アラーム、ポンプ位置不明アラームがあれば、速やかに医師へ報告し、心エコーを用いた位置確認と位置調整をしてもらう必要がある(図3)。

 

図3制御装置でみられる波形

Impellaの制御装置でみられる波形

 

2制御装置のアラームの有無、アラーム情報:ポンプ位置アラーム(1の対応)、サクションアラーム(血圧・CVPの低下、補助流量・平均モーター消費電流の減少がないかを確認し、医師へ報告)、パージ圧・パージシステムに関するアラーム(キンクや漏れがないか確認する)、他アラーム時もガイド画面に沿って対応し、医師へ報告する。

 

3補助レベル、補助流量、Impella流量(最大/最小/平均)、パージ流量・圧

 

4パージ液の投与量:指示のバイタルサイン測定時に、パージ液履歴画面より1時間ごとのパージ容量を確認し水分出納バランスに反映させる(制御装置で確認できるのは過去8時間まで。表示は積算ではない)。

 

5コンセントが入っているかを確認する(フル充電でバッテリ駆動時間は最低1時間の作動が可能)。

 

6位置感知用サイドアームの生理食塩液の残量と加圧バッグが適正な圧になっているかを確認する。生理食塩液は看護師で交換可能である(動脈圧ラインと同様の管理方法)。生理食塩液にはヘパリン不要である。

 

 

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Impellaパージシステムの確認

1パージ液にヘパリンが添加されていることを確認する(患者の状態によってヘパリンの濃度は調整されるため、濃度も確認する)。当院では、5%ブドウ糖液500mL+ヘパリン1万U/mLを使用。

 

留意点

パージ液の濃度が変更になったら、制御装置のパージ液情報の入力の変更が必要である(パージ液はモーター内部への滑液の流入を防ぐ目的で使用しているため、原則ACTの調整は輸液で行う)。

 

2パージシステムに緩みや折れ曲がりがないか、パージ用ラインの接続部・パージカセット・パージ圧トランスミッタからの液漏れがないかを確認する(パージカセット交換は臨床工学技士が実施、パージ液のボトル交換は看護師も行う)。

 

3パージ液の残量を確認する。

 

4パージ流量、パージ圧:経時的に確認する。大幅な増減があればパージシステム、Impellaポンプカテーテルの不具合の可能性があるため医師へ報告する。

 

 

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Impella挿入患者の観察項目

循環動態

血圧

動脈圧、MAP

 

 

スワン-ガンツカテーテル

心拍出量(CO)、心係数(CI)、混合静脈血酸素飽和度(SvO2)、肺動脈圧(PAP)、中心静脈圧(CVP)を観察する。

 

その他、血行動態CPO(MAP×CO/451Watts)、PAPi(〔sPAP-dPAP〕/RAP〔CVP〕)(CVP、PCWP≧10mmHgとなるように輸液管理。CPO<0.9で右室補助を考慮、PAPi>0.9で左室補助のエスカレーションを考慮)
*CPO(Cardiac Power Output、血圧×心拍出量低下)

 

 

尿量

腎血流量に伴う尿量の変化、溶血の有無、血尿の有無

 

 

心電図モニター

不整脈、胸痛の有無、STの変化

 

 

心エコー・心胸郭比

(医師)左室駆出率(EF)、基準値55~80%、Impellaポンプ位置

 

末梢循環

末梢皮膚温、皮膚の色調、足背・後脛骨動脈触知・左右差

 

 

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呼吸状態

呼吸回数、呼吸音、呼吸パターン、経皮的酸素飽和度(SpO2)、呼吸困難症状の有無や程度、血液ガス分析データ、胸部レントゲン上の肺うっ血の状態

 

 

検査データ

炎症所見(WBC、CRP)、出血傾向(Hb、Ht、Plt)、活性化凝固時間(ACT):160~180秒(PCPS併用時は180~200秒※医師指示を確認する)

 

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安静の保持

患者に安静の必要性を十分に説明する。

 

体位変換時は、血行動態に注意して看護師2名で行う。体位変換時はImpellaポンプ位置の移動やカテーテルの屈曲、挿入部の出血を予防するために、挿入部の下肢は伸展させたままで行う。必要時、安全ベルトの使用を検討する。

 

Impella挿入中であっても、ベッドアップ30°まで可能。ベッドフラットであれば、誤嚥無気肺のリスクが高まり、ベッドアップでは下肢虚血、Impellaポンプ位置がずれるリスクがある。

 

 

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Impellaカテーテルの固定状況・穿刺部の観察

穿刺部からの出血や血腫、腫脹、滲出液の有無、感染徴候の観察。

 

留置用シースの固定が適切かどうか確認する。

 

(留置用シースの青色のノーズが皮膚に当たっているか。留置用シース固定翼が中枢側に向けて縫合されている。Impella CPは刺入角度を維持するために留置用シースの下にガーゼが当たっている)

 

留置用シースの固定リング(シース側・カテーテルプラグ側の2か所)・滅菌スリーブ接続部の3か所が閉まっているか確認する。

 

カテーテルシャフトの固定位置の深度マーカーの目盛を確認する。

 

 

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身体的・精神的苦痛の軽減

  • 安静による活動制限に伴う身体的苦痛
  • 不安や抑うつ、睡眠障害
  • 患者、家族への精神的サポート

 

 

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皮膚の観察・褥瘡予防

末梢循環不全や下肢の血流障害、安静の保持やImpellaカテーテル挿入に伴う下肢の屈曲制限により褥瘡が発生しやすい。

 

圧迫を受けやすい部位には保湿剤を塗布するなどし、褥瘡予防する。

 

膝蓋外果を長時間圧迫すると、腓骨神経麻痺を生じることがある。

 

 

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Impellaのトラブル対応

アラーム時の対応

位置異常・手順

1まず補助レベルをP2に下げる。

 

2医師(臨床工学技士)に連絡する。

 

3医師が心エコーでカテーテルの位置確認し、修正する。

 

4補助レベルを戻す。

 

 

サクション・手順

1アラームが消えるまで補助レベルを徐々に(1レベルずつ)下げる。サクションがかかり続ける状態を避けるため、補助レベルを下げる。

 

2医師が心エコーでカテーテルの位置を確認し、位置の問題であれば修正する。

 

3位置に問題がなければ、血管内volumeを確認、volumeが足りなければ補液を行う。

 

4血管内volumeに問題がなければ、右心不全を評価する。さらなる補液か強心剤を検討する。

 

5補助レベルを戻す。

 

 

パージ圧低下・手順

1接続の緩みを確認する。

 

2改善しない場合は、医師、臨床工学技士に連絡する。高濃度のブドウ糖液に変え、それでもだめな場合はパージシステムを交換する。

 

 

パージ圧上昇・閉塞・手順

1ラインの折れ曲がりがないかを確認する。

 

2改善しない場合は医師、臨床工学技士に連絡する。高濃度ブドウ糖の場合は低濃度に交換する。それでもだめな場合はパージシステムを交換する。

 

 

Impellaの突然停止時

1医師、臨床工学技士に連絡する。補助レベルをP8にして再始動を試みる。

 

2だめならP2にして再始動を試みる。

 

3再始動した場合P2のまま作動させ、カテーテルの交換を検討する。

 

4再始動しない場合、Impellaを可能なかぎり早く左室内から引き抜く。カテーテルの交換を検討する。

 

 

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Impellaからの離脱

ウィーニングから抜去の目安は、補助レベルがP2でカテコラミンが最低限の状態で、MAP>60-65、CVP<18、CI>2.2、CPO>0.7が保たれ、尿量低下やLactate上昇などがなければ離脱を検討する。

 

 

引用・参考文献 閉じる

1)中田淳:ショックバイタルへの新しい循環補助Impellaの理論と有効性(特集Structural Heart Diseaseの経カテーテル治療:高品質な医療をめざす),最新医学,71(8),1699-1709,2016
2)川上将司:Impellaを知る,明日のアクションが変わる 補助循環の極意を教えます,中外医学社,東京,2018,377-410

 

 


 

本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『ICU看護実践マニュアル』 監修/肥留川賢一 編著/剱持 雄二 サイオ出版

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