同種末梢血幹細胞移植とは・・・
同種末梢血幹細胞移植(どうしゅまっしょうけつかんさいぼういしょく、allogenic peripheral blood stem cell transplantation;allo-PBSCT)とは、造血幹細胞移植の種類の一つである。造血幹細胞移植の前処置として大量の抗がん剤投与や全身放射線照射を実施した後、末梢血中から採取されたドナー由来の造血幹細胞を輸注する造血幹細胞移植の方法を指す。
方法
G-CSF製剤を投与した後に、血液成分分離装置を用い、健常人ドナーより幹細胞を採取する。移植当日に健常人ドナーより幹細胞採取を実施し患者に輸注する場合と、事前に採取し凍結保存しておき、移植当日に解凍し輸注する場合がある。輸注は点滴で行う。
メリット
骨髄移植と比較して、ドナーからの造血幹細胞の採取に全身麻酔を必要としないためドナーの負担が少ない。また、移植後の生着不全の割合が低く、血球回復が早いことなどが利点とされている。
また、患者に造血幹細胞を輸注することで、大量化学療法による有害事象である骨髄抑制からの血球回復を助け、免疫反応によって腫瘍細胞を根絶させる移植片対腫瘍効果(GVL効果)が期待できるのも大きなメリットである。
デメリット
急性および慢性移植片対宿主病(慢性GVHD)が骨髄移植や臍帯血移植と比較して多いことが欠点である。再生不良性貧血などの移植片対腫瘍効果を必要としない良性疾患では、骨髄移植が優先される。
合併症
GVHDや生着不全、感染症などの移植合併症が多く、治療関連死(非再発死亡割合)は概ね10〜30%とされている。カルシニューリン阻害薬を中心とした免疫抑制剤(タクロリムスやシクロスポリンなど)を使用しGVHD予防を行うが、特にHLA不適合移植や非血縁移植、末梢血幹細胞移植ではGVHDを発症するリスクが高い。急性期(移植後100日未満)には、主に皮膚、肝臓、腸管が標的臓器となり、各々皮疹、黄疸、下痢などの症状を生じ、重症例では副腎皮質ステロイドの全身投与が必要となる。
移植前の合併症発症のリスク評価として、併存疾患・合併症のスコア(Hematopoietic Cell Transplantation-Comorbidity Index;HCT-CI)が広く使用されている。移植前に患者の全身状態の評価を行い、原疾患や移植前病期などを踏まえ、移植適応に関しては慎重に検討する必要がある。