【物品編】必要なものはコレ!救急カートの薬剤・物品一覧

救急カートに入っている物品について、使用方法やポイントなどをイラストを交えて、わかりやすく解説します! 

 

救急カートの「薬剤」一覧はこちら

 

執筆:宇野翔吾(株式会社日立製作所 日立総合病院 看護局 救命救急センター 救急看護認定看護師)

監修:小山泰明(株式会社日立製作所 日立総合病院 救急集中治療科 主任医長)

 

救急カート内の物品一覧

救急カートに入っている主な物品は、次のとおりです。

 

 

救急カートに入っている主な物品の使用目的やポイント

救急カートに入っている物品の、使用目的やポイントは以下のとおりです。

 

気道確保に関する主な物品

喉頭鏡(ハンドル、ブレード)

【目的】気管挿管や気道の異物除去など。

 

【特徴】成人はマッキントッシュ型3号or4号。

 

【準備】

喉頭鏡ハンドルにブレードをはめ込み、ブレードを開く。

②開いた際に、電気がつくかを確認。

 

【ポイント】

電気が点滅する場合は、電池の替え時!

 

スタイレット

【目的】

気管挿管時、挿管チューブの内筒として使用。


【特徴】

挿管チューブの形状を調整し、気管挿管をスムーズに行うための器具。
 

【準備】

①気管挿管前に、挿管チューブへスタイレットを挿入。

②挿管チューブの形状を調整。 ※事前に医師へ確認
 

【ポイント】

気管挿管をしやすいように、声門通過ライン付近を曲げて使用する。
 

【注意点】

挿管チューブの先端からスタイレットが出た状態で挿管すると、気道損傷や気道浮腫を引き起こす原因になる。

 

挿管チューブ

【目的】

気道確保や継続的な人工呼吸を行う場合に使用する器具。
 

【特徴】

成人用では、カフ上吸引ポートが付いているタイプがある。
 

【準備】

スタイレットを入れる前に、カフ上吸引ポートにカフ用シリンジで空気を10mL注入し、破損や空気漏れがないかを確認。
 

【ポイント】

人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防には、カフ上吸引ができる挿管チューブが推奨されている。

 

カフ用シリンジ10mL

【目的】

気管挿管時、挿管チューブ挿入後にカフへ空気を注入。
 

【特徴】

白色透明以外のシリンジを使用する

※白色透明のシリンジは、薬液注入用に作られているので、空気を入れる用途では使用しない。

 

【準備】

挿管チューブ挿入前に空気を10mL入れておく。
 

【ポイント】

緊急気管挿管時の、気管チューブ挿入直後のカフ圧測定は不要! 10mL分注入しておけばOK! 

 

バイトブロック

【目的】

挿管チューブの抜管防止と噛むことによるチューブ閉塞や破損の防止。


【特徴】

シリコン製や布(ガーゼ)製など、さまざまなタイプがある。
 

【ポイント】

  • がある患者さん⇒シリコン製
  • 歯はあるがぐらつきがある場合や、歯がない患者さん⇒布(ガーゼ)製

 

経鼻エアウェイ・経口エアウェイ

【目的】

舌根沈下などの気道閉塞が疑われる場合の気道確保。
 

【ポイント】

  • 経鼻エアウェイは、「意識あり・意識なし」いずれも挿入可能。経口エアウェイは、「意識なし」の場合に挿入可能。
  • エアウェイに付属している安全ピンは、鼻腔奥への押し込みを防止するため、体外部分に刺す。鼻翼に直接刺さないように注意する。

 

【注意点】

  • 経鼻エアウェイの安全ピンを紛失しない。
  • 転倒転落時の頭部外傷がある場合や、頭蓋底骨折がある場合、経鼻エアウェイは禁忌

 

開口器

【目的】

気管挿管時や気道異物・口腔異物の除去などで使用。
 

【注意点】

無理やりねじ込もうとすると、歯が欠損しやすくなる
 

マギール鉗子

【目的】

口腔内、咽頭部の異物除去。
 

【ポイント】

経鼻挿管の補助器具だが、異物除去に用いられるケースが多い
 

固定用テープ(挿管チューブ固定用)

【目的】

挿管チューブの固定
 

【準備】

挿管チューブ固定用は、既製品もしくは30cm程度の細めの布製テープを数本用意する。
 

【ポイント】

大切なのは、第一に抜けないようにすること!第二に管理しやすいようにすること!

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酸素吸入に関する主な物品

バッグバルブマスク(BVM)

【目的】

人工呼吸


【特徴】

  • 一方向に空気を流す人工呼吸デバイスで、酸素がなくても人工呼吸換気ができる。
  • リザーバーバッグが付いていて、100%の酸素を流しながらの人工呼吸が可能。

 

【準備】

バッグバルブマスクに加え、酸素延長チューブ、酸素流量計や酸素ボンベなども準備。
 

【ポイント】

酸素投与時は10L/分以上を使用し、リザーバーバッグは十分に膨らませてから押す。
 

ジャクソンリース

【目的】

人工呼吸
 

【特徴】

  • 自発呼吸や肺のコンプライアンス(肺の膨らみやすさ)が分かりやすい。

  • PEEP(呼気終末陽圧)をかけることができる優れもの!
 

【準備】

酸素とジャクソンリースを接続し、バッグ部を酸素で満たしておく。
 

【ポイント】

自己膨張機能はないため、酸素がないと使用できない。

 

リザーバー付き酸素マスク

【目的】

高濃度の酸素投与用のマスク。
 

【準備】

酸素投与前にリザーバーバッグを膨張させ、患者さんの口元へ当てる 。
 

【ポイント】

  • リザーバーバッグを膨張させないと、高濃度酸素投与の効果を十分に発揮できない!
  • 酸素流量を5L/分以下に下げる場合は、酸素不良のため酸素デバイスを変更する。


 

酸素ボンベ

【目的】

人工呼吸器および酸素投与デバイスへの酸素供給。
 

【準備】

バルブを開き、常に残量が10MPa以上あるかを確認。
 

【注意点】
500L酸素ボンベ(14MPaで充填)で10L/分投与する場合、最大38分しかもたない。

残量が10MPa以下では、30分もたないため注意する。

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血管確保や輸液・輸血に関する主な物品

静脈留置針

【目的】

輸液投与や静脈内投与薬を使用するため。
 

【ポイント】

  • 緊急時の造影剤を使ったCT検査では、最低でも太い血管へ22G以上の留置針が必要!
  • 心肺蘇生時やショック対応時などは、肘正中皮静脈へ20G以上の留置針で確保!

 

アルコール綿

【目的】

静脈・動脈穿刺時の刺入部消毒。
 

【準備】

アルコールタイプ(エタノール)と非アルコールタイプ(クロルヘキシジングルコン酸塩)いずれも準備。
 

【注意点】
アルコールが禁忌の患者さんの場合は、非アルコールタイプを使用する。
 

駆血帯

【目的】

静脈路確保時、末梢静脈を怒張させるため。
 

【注意点】

ゴムやバンドに劣化がないかを確認する
 

注射器・注射針

【目的】

血液の吸引や薬剤の投与、ポンピングなど。
 

【ポイント】

ポンピングする場合、ロック付きの20~30mLシリンジを推奨。


 

固定用テープ(静脈留置針などの固定)

【目的】

静脈留置針などの固定。
 

【ポイント】

  • 固定前にライン接続部を必ず確認!刺入部は見えるように固定する。
  • 固定の際に、ラインに少しあそびを作っておくと抜けにくい。

 

【注意点】
フィルムドレッシング材の粘着面は水に弱いので、固定時は、刺入部とその周辺を乾燥させてから貼付。

 

輸液ルート・輸血ルート

【目的】

輸液および輸血を投与する際のセット。

 

【準備】

  • ソルラクト®などの輸液製剤や輸血製剤と一緒に、それぞれの輸液・輸血ルートを選択して、プライミングしておく。

  • 透析患者やカリウムを投与したくない患者さんの場合、カリウム除去フィルターという輸血セットを使用する。カリウム除去フィルターを使用する場合、投与前に生理食塩液で還流させ、フィルターとルート内を生理食塩液で満たしておく。

 

【ポイント】

  • ショックや心停止時の細胞外液投与は、クレンメを全開にして投与する。

  • 輸血ルートには、ろ過網が付属した滴下筒がある。フィルターの効果を発揮するため、輸血ルートのろ過筒には血液を充満させておく。

 

【注意点】

輸血ルート使用中、生理食塩液の投与は同時ルートでも可能。ただし、ソルラクト®などの他の輸液製剤との併用投与は、凝固や凝集、溶血、タンパク変性を起こす可能性があるため不可。


 

骨髄針

【目的】

心肺蘇生時など末梢静脈路が確保できない場合、骨髄路から輸液や薬剤投与経路を確保するため。


【準備】

清潔操作およびポピヨドン®液での消毒が必要。フラッシュ用の生理食塩液も準備。
 

【ポイント】
骨髄路は、輸液以外の薬剤投与も可能!
 

【注意点】

原則、挿入は医師しかできない。


 

延長チューブ(エクステンションチューブ)

【目的】

静脈ラインなどの延長もしくは緊急造影検査(主にCT)実施のため
 

【ポイント】

通常のルートで造影検査を実施した場合、ルート破裂の危険性が高くなるため、通常のルートよりも硬い素材でできているエクステンションチューブを使用する。


 

三方活栓

【目的】

輸液、輸血、採血、採液や造影剤投与など液体の流れの方向を制御。
 

【注意点】

三方活栓にはR型とL型があり、種類によってOFFの向きが異なるので注意する(イラストはL型)。

三方活栓の向きをチェックするのはなぜ?|点滴静脈内注射

 

血液ガス測定用シリンジ

【目的】

静脈および動脈血液ガス測定のため採血用。


【注意点】

シリンジ内には抗凝固剤が入っているため、採血後は、十分に混和しないと測定器の故障や測定値不良の原因となる。

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その他

胸骨圧迫用背板(蘇生板、CPRボード、バックボード)

【目的】

質の高い胸骨圧迫を行うため。
 

【準備】

胸骨圧迫を必要とする患者さんの背面に挿入する。
 

【ポイント】

  • 背板を入れる場合は、胸骨圧迫の中断時間に十分注意!
  • JRC蘇生ガイドライン2020では有効性を示せるほどのエビデンスはないとされたが、ベッド上での胸骨圧迫の場合には必要とされる場合もある。

 

ペンライト

【目的】

瞳孔および対光反射の測定。

 

 【ポイント】

  • 電池が入っていること、ライトがつくことを事前に確認する。

  • ライトが点滅している場合は、電池交換をする。


 

聴診器

【目的】

気管または胃管挿入後、誤挿入の確認。


【ポイント】

聴診器の膜型を使用し、気管挿管は5点聴診、胃管挿入は胃部聴診で確認する。

気管挿管の方法と介助方法は?|5点聴診(5点聴取)     


 

胃管カテーテル

【目的】

気管挿管時の膨満による誤嚥性肺炎の回避、胃内容物の性状確認や毒素の除去など。


【特徴】

鼻や口腔から胃に挿入するやわらかいチューブ。ガイドワイヤー付きのものもある。

 

【ポイント】

胃管挿入後は、必ず聴診と胸部レントゲンで挿入位置を確認!

 

【注意点】

胃管挿入後は速やかに固定する。抜けてくることがあるので注意。

 

胃管カテーテル固定テープ

【目的】

胃管カテーテルの自然抜去防止。
 

【準備】

胃管固定は、皮膚トラブルを軽減するため、左右の鼻腔位置と左右の頬部固定位置を合わせる。

 

カテーテルチップ型シリンジ50mL

【目的】

排液や胃泡音などの確認時に使用。
 

【準備】

カテーテルチップ内に空気を充填した状態にしておくと良い。
 

【ポイント】
医療事故防止の観点から、普通の注射シリンジとは、内筒の色や接続部の形状などが異なる。
 

排液用バッグ

【目的】

カテーテルなどに接続して、胃内容物分など排液の色・量・形状を確認するため。

 

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注意点
所属先施設によって、救急カートに入っている薬剤や物品は異なります。所属先の方針に従ってください。

 

編集:看護roo!編集部 宮本諒介

 

 

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