経腸栄養剤の投与について~注入前・注入中・注入後の手技・ケア|PEGケア
『病院から在宅までPEG(胃瘻)ケアの最新技術』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は栄養剤投与の手技について説明します。
松木みどり
社会医療法人札幌清田病院地域医療連携室看護師長院長補佐
村松博士
医療法人清田病院副院長
Point
〈目次〉
- はじめに
- 経腸栄養剤の準備
- 注入前の手技・ケア
- 注入中の手技・ケア
- 注入後の手技・ケア
- 事例:「薬剤の簡易懸濁」に関するトラブルが起きた!
- COLUMN:「投与速度が変化する(滴下が遅くなる)」ときの観察点と対処方法
はじめに
近年、胃瘻からの栄養投与が広く普及しつつあり、胃瘻に関する看護手技も徐々に確立されてきました。
栄養剤の注入方法も、栄養剤そのものの多様化や投与方法の変化に伴ってさまざまに工夫され、状況に合わせた方法が考えられています。
本コラムでは、栄養剤注入を「投与前」「投与中」「投与終了後」に分け、流れに沿って、それぞれの基本的な注意点・看護のポイントを解説します。
胃瘻を造設している患者の多くは、うまく自分から不調を訴えることができません。看護師は、患者の体調を十分に観察・理解し、安全に栄養剤を投与できるよう注意する必要があります。
経腸栄養剤の準備
1経腸栄養剤の選択
近年、栄養サポートチーム(nutrition support team:NST)が稼働している施設が増えています。
患者の基礎疾患や状態に合わせた経腸栄養剤の選択や必要量を、NSTと相談して決定するのが望ましいでしょう1。
2経腸栄養剤の温度
経腸栄養剤が極端に冷たい場合を除き、特に温める必要はありません。
経腸栄養剤による下痢がひどい場合には温めて使用する場合もありますが、加熱すると変性することもあるので、人肌ぐらいとします。
3経腸栄養剤の取り扱い(図1)
ナースステーションで準備する場合には、準備する場所を決め、事前の手洗い・手指消毒をきちんと行いましょう(→『胃瘻への接続(栄養投与)のとき、手袋をする必要はありますか?』参照※リンク※)。
液体の経腸栄養剤の場合
経腸栄養用ボトルに経腸栄養用輸液セットを接続し、クレンメを閉じた状態にして、ボトルに栄養剤をあけます(図1-❶)。
ソフトバッグタイプのRTH(ready to hung)製剤の場合は、そのまま経腸栄養用輸液セットに接続し、クレンメを閉じておきます。
半固形化栄養材の場合
チアーパック入り栄養材の場合は、PEGカテーテルと接続するためのアダプタを準備します。一方、施設内で半固形化する場合は、衛生上、栄養課で準備するのが望ましいでしょう。
半固形化した経腸栄養剤は、カテーテルチップタイプのシリンジに吸引しておきます。栄養剤を吸引したシリンジの持ち運びには、専用のトレイやシリンジキャップなどを使用して、栄養剤が汚染されないようにしましょう(図1-❷)。
4経腸栄養剤の汚染防止
経腸栄養剤は、よく乾燥させた容器を使用し、決められた場所で、清潔な手で準備します。
残った経腸栄養剤は冷蔵庫で保管し、開封したその日のうちに使いきりましょう。
施設内で調製した流動食などは、調製後、常温で8時間以上経過すると、細菌の繁殖が確認されるといわれています2。
5誤接続防止
経腸栄養用輸液セットやシリンジは「誤接続防止タイプ」を使用することが推奨されています。これは、静脈輸液ラインに接続できないように接続部の口径が大きくなっているもので、接続時には経腸栄養用輸液セットやカテーテルチップタイプのカラーシリンジを用います(図2)。
経腸栄養用ボトルやシリンジには、患者の氏名を明記し、間違えないようにしましょう。
また、栄養剤の準備は2人以上で行い、声に出して経腸栄養剤名や量を確認します。経腸栄養剤の接続直前にも、経腸栄養剤と患者名を最終確認する必要があります。
注入前の手技・ケア
1体位
ギャッチアップの角度
以前は45~60度程度のギャッチアップが必要とされていましたが、現在は、自力で寝返りがうてない患者の場合は、摩擦とずれによる褥瘡の発生を避けるために、30度程度のギャッチアップでよいとされています3。そのため、意識障害があり、自力で寝返りをうてない患者では、上体のギャッチアップを30度までにします。
ギャッチアップ後に一度、患者の上体を起こして寝具や病衣のしわを伸ばすと、同時に皮膚のずれを解消することができます。これを「背抜き」といいます4。
一方、しっかりと座位をとれる患者は、90度座位の状態にして経腸栄養を開始します。
圧迫の解除
ギャッチアップ時に腹部が圧迫されてしまう患者の場合、圧迫を避ける体位を選ぶ必要があります。
病衣やおむつによる腹部への圧迫にも注意が必要です。
顎の位置の調整
経腸栄養剤投与中の胃食道逆流(胃から食道への逆流)による誤嚥を防ぐため、患者の顎をひいた状態にしておくとよいでしょう。
2注入前の観察ポイント(図3)
腹部膨満・腸蠕動音の有無
腹部の張りがあまりにも強いと、経腸栄養剤の胃内停滞時間が長くなり、胃食道逆流や嘔吐が引き起こされることがあります。
便秘がちな患者の場合は、普段から腸蠕動を促す薬や緩下剤を用いて排便を促します。
嘔気の有無
嘔気がある際に経腸栄養剤を注入すると、嘔吐を誘発し、誤嚥を起こすことがあります。
無理をせず、少し時間をおいて、嘔気が消失してから経腸栄養剤を注入します。
瘻孔周囲の皮膚の観察
以下の3点に注意して観察します。
- ①胃瘻周囲から経腸栄養剤の漏れがないか。
- ②経腸栄養剤の漏れによる瘻孔周囲の皮膚の汚染やただれなどがないか。
- ③皮膚の感染徴候がないか。
経腸栄養剤の漏れなどによる「皮膚のただれ」がある場合には、経腸栄養剤の注入速度を遅くする、経腸栄養剤を半固形化するなど、漏れを減少させる工夫が必要です。
なお、微量の経腸栄養剤の漏れや滲出液がある場合は、“こよりティッシュ”をPEGカテーテルの周囲に巻きつけておくとよいでしょう(→『胃瘻のスキンケアと観察』参照※リンク※)。ガーゼで常に胃瘻周囲が湿潤しているよりも、“こよりティッシュ”を何度も交換するほうが、安価で、皮膚の通気性もよく、効果的といわれています5。
感染徴候(広い発赤や硬結、血性の滲出液など)がある場合には、主治医に相談が必要です。
呼吸音の観察
両方の肺音を聴診し、痰の貯留がないか確認します。痰の量が多い場合はもちろんですが、栄養剤投与中に痰の量が増加する場合もあるため、投与前に貯留した痰をしっかりと吸引しておきます。
栄養剤投与中に痰の吸引を行うと、嘔吐を誘発する危険性があるため、吸引は、できるだけ投与前に行います。
3口腔ケア
栄養剤の投与開始前には、口腔ケアを行い、口腔内を清潔にしましょう。
胃瘻を造設する患者は、基礎疾患などから、もともと誤嚥しやすい状態にあります。そのため、自分の唾液や痰であっても、容易に誤嚥が起こり得ます。加えて、経腸栄養剤の投与によって嘔気が誘発される場合や、胃蠕動の亢進によって唾液を誤嚥することもあります。
事前に口腔内の細菌数を減らしておくと、誤嚥性肺疾患が起こる危険性を減らすことができます。
また、口腔ケアを行うことで、胃蠕動の動きが起こりやすくなるともいわれています6。
注入中の手技・ケア
1PEGカテーテルへの接続
PEGカテーテルの型の確認
留置されているPEGカテーテルのタイプ(チューブ型/ボタン型)を確認しておきましょう。
チューブ型であれば経腸栄養用輸液セットを接続できますが、ボタン型の場合には専用の経腸栄養用接続チューブを用意して接続する必要があります(図4)。
専用コネクター・接続チューブの確認
チアーパック入り半固形化栄養材を使用する場合は、専用コネクターを用いて接続します。
調製した栄養材をカテーテルチップで注入する場合、接続チューブが長いと注入時に強い力が必要です。短いチューブを使用すると、注入が容易になります7。
注入直前の吸引
接続しようとしてPEGカテーテルのキャップを開けたとき、空気や胃内容物が逆流してくる場合があります。このような場合には、必ず腹部膨満や嘔気などがないか、もう一度、観察してください。
胃内容物や空気などの逆流がある場合は、PEGカテーテルにシリンジを接続して吸引してみましょう。呑気(どんき:空気の呑み込み)による腹部膨満であれば、空気を吸引すれば改善します。しかし、内容物が大量の場合は、経腸栄養剤の注入中止や減量が必要になります。
2経腸栄養剤の注入
滴下・注入速度の調整
自然滴下の場合
胃瘻造設当初は100mL/時程度で滴下しますが、患者の状態に合わせて、徐々に速度を速めていきます。
なお、注入中に経腸栄養剤の滴下速度が変化してしまう場合があるため、定期的に滴下速度を確認しましょう。
経腸栄養ポンプを使用する場合
腸管への負担を軽減し、下痢を防ぐ目的で、経腸栄養ポンプを用いて長時間かけて経腸栄養剤を投与することがあります。
特に、十二指腸や小腸に投与する場合には、胃を経由しないため、経腸栄養ポンプを用いた24時間持続投与が必要なことも多くあります。この場合には、20~30mL/時から投与を開始し、下痢がないことを確認して、少しずつ速度を速めていきます。
半固形化栄養材を投与する場合
半固形化栄養材は、短時間での注入が可能です。シリンジによる注入が一般的ですが、チアーパック入り栄養材の場合は、栄養材の量が減ると注入しづらくなるため、スクイーザー(図5)を使用すると、最後までスムーズに注入できます。
投与スケジュール
胃瘻造設前の栄養補給方法により、経腸栄養剤の増量スケジュールや、注入速度を考慮する必要があります。
高カロリー輸液などでしばらく腸管を使用していない場合には、経腸栄養剤の増量にも日にちをかける必要があるため、注入速度もゆっくりと行います。
3栄養剤注入中の観察ポイント(図6)
嘔気・嘔吐、痰の有無
嘔気・嘔吐や曖気(あいき:おくび)、吃逆(きつぎゃく:しゃっくり)はないか、痰がからんで喘鳴が増強していないかを確認します。
上記の症状がある場合には、経腸栄養剤の投与速度を遅くする必要があります。また、嘔気が強い場合や嘔吐した場合には、栄養剤の投与を一時中止して、症状の軽減を図ります。
痰の量が多く、やむを得ず栄養剤投与中に吸引を行う場合は、嘔気を誘発しないよう注意しましょう。
ダンピング症状の有無
冷汗、動悸、めまい、脱力感などのダンピング症状が出現していないか観察します。
ダンピング症状が起こった場合は、医師に報告するとともに、1回に投与する栄養剤の量を少なめにして、できるだけゆっくり時間をかけて経腸栄養剤を注入します。
胃からの排泄時間を遅延させるため、臥位を維持したり、経腸栄養剤を半固形化したりする方法もあります。
下痢の有無
経腸栄養を行っている患者には下痢が起こりやすいといわれますが、栄養剤投与開始後に下痢になった場合には、まず栄養剤の温度を確認しましょう。
それでも下痢が続く場合には、投与速度を遅くする、経腸栄養ポンプを使用する、経腸栄養剤の濃度や温度を変更するなどの対策をとります。
体位の再調整
栄養剤投与を開始する前に整えた体位が変化していないか、苦痛はないかを観察します。
栄養剤投与中に患者が動いて体位が乱れていたり、同一体位を保つことが苦痛になっていたりする場合には、経腸栄養剤の滴下を一時中止して、体位を整えてから、経腸栄養剤の滴下を再開します。
滴下・注入速度の確認
経腸栄養剤の滴下速度は、患者の体位や腹部膨満の程度によって変化します。
栄養剤投与中には、滴下数を確認し、経腸栄養ルートが折れ曲がったり、身体の下じきになっていたりしないか確認しましょう。
経腸栄養ポンプを使用している場合には、流速の設定と液面の減りを確認します。
事故抜去の予防
事故抜去の危険性がある場合や、意識障害などがある場合には、患者の特性を考慮し、「接続が外れないよう」「患者がカテーテルに触れないよう」に腹帯で保護する、寝衣のボタンやひもを外しにくくするなど、十分な対策をとりましょう(→『胃瘻造設術後の管理』参照)。
4水分・薬剤の注入
水分(微温湯)の注入
水分は通常、経腸栄養剤に混ぜず、別に投与します。これは栄養剤の浸透圧の変化を避け、栄養剤の汚染も防ぐためといわれています8。
水分の量は、医師やNSTの指示により、患者の状態に合わせた必要水分量を注入します。
実際には、経腸栄養剤の注入後、続けて指示量の微温湯を注入します。なお、水分の半固形化製剤も販売されています(PGウォーター®、テルモなど)。
経腸栄養剤と水分の注入終了後も、胃食道逆流の予防のため、30分以上は注入中の体位を保ちます。
薬剤の注入
経腸栄養剤と薬剤を混ぜると変性してしまうため、決して栄養剤とは混ぜないようにしましょう。 薬剤は、微温湯で溶かして、カテーテルチップタイプのシリンジで注入します。以前は、散剤にした薬を微温湯で溶かして注入していましたが、最近では、薬剤を錠剤のまま処方し、シリンジ内で崩壊させる「簡易懸濁法」が広まりつつあります(図7)。
簡易懸濁法は、錠剤粉砕やカプセル開封を行わず、錠剤・カプセル剤を、そのまま、あるいはコーティングを破壊して温湯(約55℃)に崩壊懸濁させてから経管投与する方法です9。通常は55℃の温湯に10分間放置することで、投与時には懸濁し、温度も人肌程度に低下します。 簡易懸濁法のメリットを以下に示します。
- チューブ閉塞の危険性が減少する。
- 投与量のロスを軽減できる。
- 投与直前まで薬剤を確認できる。
- 中止・変更の対応が容易である。
- 投与可能薬剤が増加する。
- 配合変化の危険性を減少できる。
ただし、懸濁には適さない薬剤(表1)もあるため、薬剤科や成書9で確認するとともに、投与時には薬剤が懸濁しているかを確認しましょう。
薬剤の投与後は、シリンジに微温湯を取り、注入(フラッシュ)します。これは、PEGカテーテル内に薬が残らないようにするためです。薬剤が固まってしまうと、チューブトラブルの原因になります。
注入後の手技・ケア
1酢水によるロック(チューブ型の場合)
チューブ型のPEGカテーテルでは、カテーテルが常に留置されているため、カテーテルの汚染を防止する目的で、経腸栄養剤の投与後、微温湯でフラッシュしてから酢水によるロックを行います。
ボタン型のPEGカテーテルでは、栄養用接続チューブを外して洗浄できるので、酢水によるロックの必要はありません。
酢水によるロックの方法
10倍に薄めた食用酢を5~10mL、PEGカテーテル内に留置させる方法です(図8)。酢の特性により、PEGカテーテルの細菌の繁殖を抑制し、カテーテルを長持ちさせるといわれています10。
毎食ごとに行うのが理想的ですが、胃瘻を使用しない夜間だけの実施でもよいでしょう。
「酢水によるロック」に代わる方法も
半固形化水分であるPGウォーター®などにはクエン酸が含まれているため、PEGカテーテル内に充填しておくことで、酢水によるロックと同じような効果が得られます。
PEGカテーテルの内側に付着した汚れを除去するPDNブラシ(PEGドクターズネットワーク、20Fr以上のカテーテルに使用可能)などもあります。
2経腸栄養ボトルの洗浄
経腸栄養に使用した経腸栄養ボトルは、通常の食器と同じ考えで、水道水や湯水と食器用の中性洗剤で洗い、しっかりと自然乾燥させておきます。
基本的に消毒の必要はありませんが、病院や施設などで使用する場合には、患者の状況に応じて希釈したミルトン®(次亜塩素酸ナトリウム)に1時間程度浸け置きし、水道水でよく洗浄したあと、自然乾燥させてください。
3注入後のPEGカテーテル管理
ボタン型の場合は、栄養用チューブを取り外してしまえば邪魔にならず、リハビリテーションや日常生活にも支障ありません。
チューブ型は、引っ掛かったり、事故抜去の原因になったりする危険性があるので、腹帯や腹巻にPEGカテーテルの先端を入れるなどの工夫が必要です(→『胃瘻造設術後の管理』参照)。
***
経腸栄養剤の投与は、決して難しい手技ではありません。しかし、根拠を理解したうえで行わなければ、思わぬところから、患者を危険にさらすことになります。
在宅での療養も増えており、家族に指導することも多くなっています。看護師が安全な方法を十分理解することが大切です。
事例:「薬剤の簡易懸濁」に関するトラブルが起きた!
患者の情報
70歳代、女性。胃瘻から複数種類の薬剤を投与するため、簡易懸濁を実施しようとしたが、うまく薬剤が溶けない。
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簡易懸濁法の実施にあたって、注意が必要な薬剤を表1に示します。簡易懸濁に適さない薬剤が処方されていた場合は医師と相談し、簡易懸濁が可能な薬剤に変更する必要があります。その他の注意点を以下に示します。
配合変化を起こす薬剤
同時に溶解すると配合変化を起こす薬剤は、別々のシリンジで溶解するとよいでしょう。
崩壊しずらい薬剤
崩壊に時間がかかる薬剤の場合、シリンジに温湯と薬剤を入れてから、超音波振動器を使用すると崩壊しやすくなります。
CHECK!
イトリゾール®などは、超音波振動器を使っても崩壊しずらいため、カテーテル内で固まらないよう、崩壊後、時間をおかずに注入します。酸化マグネシウムやアローゼン®は難溶性のため、医師と相談して薬剤を変更します。
薬剤の量が多い
薬剤の量が多いと薬剤が溶解しずらくなるため、1包の量が多い薬剤は、単独のシリンジにしたほうがよいでしょう。また、薬剤の種類が多いと、配合変化がなくても崩壊しずらいことがあるため、1本のシリンジ内には多くても5種類くらいまでにして、シリンジを分けると崩壊が容易になります。
COLUMN:「投与速度が変化する(滴下が遅くなる)」ときの観察点と対処方法
経腸栄養剤注入時に、滴下が遅くなっている場合には、まず、栄養開始前と体位が変わっていないかを確認するとともに、経腸栄養チューブが折れ曲がっていないかを確認しましょう。その他の注意点を以下に示します。
嘔気や腹部の膨満感
胃腸の蠕動が悪いと栄養剤が胃にたまり、栄養剤の滴下が遅くなることがあります。このようなときは、投与速度を遅くするか、栄養を一時中止して、症状が消失してから再開します。腹部の膨満が強いときは、栄養開始前に胃内の脱気(PEGカテーテルから胃内に溜まった空気を吸引)するとよいでしょう。
便秘
便秘時も、胃腸の蠕動が悪くなって胃内に栄養剤が停滞しやすく、滴下が遅くなることがあります。医師と相談し、胃腸の蠕動を促す薬や下剤を使用して、排便コントロールを行いましょう。
[引用・参考文献]
- (1)佐々木雅也:NSTのための栄養アセスメントの進め方.経腸栄養実践テクニック,佐々木雅也編,照林社,東京,2007:12-16.
- (2)宇佐美眞,久保麻友子,三好真琴,他:経腸栄養実践テクニック,佐々木雅也編,照林社,東京,2007:88-93.
- (3)小川滋彦:PEG造設後のケアと管理̶誤嚥性肺炎への対応.看護技術2004;50(7):33-35.
- (4)仲上豪二郎,真田弘美:「ずれ」を予防するための効果的な方法.エキスパートナース2008;24(2):54-57.
- (5)小川滋彦:経皮内視鏡的胃ろう造設術・PEGパーフェクトガイド.学習研究社,東京,2006:116-120.
- (6)岸本裕充:摂食・嚥下リハビリテーションでオーラルマネジメントが重要な理由.エキスパートナース2008;24(3):58-60.
- (7)久保朋子,松木みどり,村松博士,他:胃瘻から注入しやすいゲル化栄養剤のゲル化の方法・手段̶カテーテルについての検討.在宅医療と内視鏡治療2007;11:14-19.
- (8)大浜修:経腸栄養剤の投与管理.実践静脈栄養と経腸栄養̶基礎編,島田慈彦他編,エルゼビア・ジャパン,東京,2003:143-145.
- (9)倉田なおみ著,藤島一郎監修:内服薬経管栄養ハンドブック第2版,じほう,東京,2006:5-26.
- (10)PEGドクターズネットワーク:PDNセミナー胃瘻と栄養テキストブック.PDN,東京,2006:136.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2010照林社
[出典] 『PEG(胃瘻)ケアの最新技術』 (監修)岡田晋吾/2010年2月刊行/ 照林社