ICUの重症度評価、A項目に「重み付け」導入か|2016診療報酬改定
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中央社会保険医療協議会(中医協)は11月4日の総会で、2016年度診療報酬改定の個別事項として、高度急性期医療、救急医療などの評価のあり方について議論した。高度急性期医療では、特定集中治療室(ICU)に入院する患者像や、薬剤師を配置しているICUへの評価方法などを検討した。救急医療では、救急患者の受け入れ体制を確保する観点から、夜間や休日の対応への評価をより手厚くすることを厚生労働省が提案した。
(二羽はるな=日経ヘルスケア)
2014年度改定では、特定集中治療室管理料の上位ランクが2種類新設された。これに伴って重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)の基準が見直され、上位ランクの管理料には「A項目3点以上かつB項目3点以上の患者が9割以上」、従来の管理料には「A項目3点以上かつB項目3点以上の患者が8割以上」という要件が課された。
ただ、特定集中治療室管理料を算定している患者の中に、医療密度の低い患者がいることが「入院医療等の調査・評価分科会」で指摘されていた(関連記事:ICU患者の重症度評価、A項目を見直しへ)。
具体的には、ICU入院患者のうちA項目の「心電図モニター」「輸液ポンプ」に該当する患者が90%を超えており、「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」にのみ該当する患者の割合が目立って高い医療機関もあった。
そこで、厚労省はこの3項目にのみ該当する患者の看護必要度に関する評価を見直すことを提案。「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」を1点、それ以外の項目を2点と重み付けをして、A項目の基準を「4点以上」に引き上げたシミュレーション結果を示した。A項目の該当患者割合は約88%から約76%に下がり、A項目・B項目の該当患者割合は特に循環器系の患者で低くなった。
図1 A項目に重みづけを導入した場合の影響
「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」を1点、それ以外の項目を2点と重み付けをして、A項目の基準を「4点以上」に引き上げた場合、A項目の該当患者割合は全体で約12%下がった。
診療科別のA項目・B項目該当患者割合は、特に循環器系で低くなった。
(出典:第310回「中央社会保険医療協議会 総会」資料)
また厚労省はB項目について、一般病棟用とICU用、ハイケアユニット(HCU)用で異なっている項目を統一することを提案した。なお、一般病棟用やHCU用のB項目に関しても、2016年度改定に向けて項目の見直しが検討されている(関連記事:「重症度、医療・看護必要度」は見直しの方向)。
このため、日本医師会副会長の中川俊男氏は「現在はICU患者の看護必要度の見直しについて議論しているのであって、B項目を一般病棟用とそろえるという話はしていない。なし崩し的に議論を進めようとするのはやめてほしい」とくぎを刺した。日本病院会常任理事の万代恭嗣氏は、ICU用の看護必要度の見直しについて「内科や循環器内科への影響が大きく、ただちに賛成はしかねる。ICU管理料を算定している患者にどういう診療科の患者が多いかなど、データで示してほしい」と慎重な姿勢を示した。
こうした意見に対し、厚労省保険局医療課長の宮嵜雅則氏は「必要なデータは改めて示したい」と応じた。
さらに、ICUへの薬剤師の配置が進んでいること、薬剤師の配置が医師・看護師の業務負担軽減や副作用の回避などにつながっているとの調査結果を踏まえ、ICUへの薬剤師の配置を評価することも検討した。
薬剤師の配置を評価することに反対する委員はいなかったが、専任とするかどうかで診療側、支払い側委員の意見が分かれた。支払い側である健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏が「専任の薬剤師を配置すべき」と主張する一方、万代氏は「薬剤師が職能を発揮すればいいのであって、専任であることを求める必要はないのでは」と話した。
救急医療では、夜間や休日の救急患者受け入れに関する評価や、救急医療管理加算の算定対象の見直しについて議論した。
救急出動件数と搬送者数は2013年まで4年連続で増え、過去最多となっている。2003年と2013年の救急搬送者数の比較では、小児と成人については変化が見られなかったものの、高齢者は100万人近く増えた。一方で、二次救急医療機関は2012年以降減少に転じている。また、時間外や深夜、休日に対応した患者数は、1カ月当たり1000人超のところから100人未満のところまでばらつきがあった。
そこで、厚労省は二次救急医療機関における夜間や休日の救急患者受け入れを評価することを提案。さらに、現在の診療報酬では再診後に緊急で即日入院となると再診の休日・時間外・深夜加算を算定できないため、こうした再診後の緊急入院を評価することも提案した。
このほか、救急医療管理加算1を算定できる対象として、新たに「脳梗塞でt-PAを行ったもの」「狭心症や虚血性心疾患でPCIや心臓カテーテル検査を行ったもの」を追加することも検討した。
二次救急医療機関の夜間や休日の救急患者受け入れの評価について、診療側からは「二次救急は経営的にも厳しいので、十分に評価してほしい」(全日本病院協会副会長の猪口雄二氏)など、賛同の意見が相次いだ。一方、支払い側からは「受け入れ実績なども踏まえて評価すべきでは」(健保連理事の幸野氏)との考えが示された。救急医療管理加算1の算定対象を拡大することについては、診療側、支払い側とも反対の意見はなかった。
小児の慢性期医療は在宅への移行を進める
小児医療では、長期にわたって療養が必要な小児が増えていることを踏まえ、在宅への移行を支援したり、15歳を超えても継続して診療を受けられる体制を整備するための見直しが行われそうだ。
小児入院医療管理料では、在宅医療に関する報酬は包括されているため、退院月は在宅療養指導管理料など月ごとに算定する管理料を算定できない。ただ、在宅で人工呼吸器管理が必要な小児や、小児慢性特定疾患の患者は増えており、在宅への移行の支援が求めらている。そこで、厚労省は在宅療養指導管理料など在宅医療の導入に関する項目については、退院月にも算定できるようにすることを提案した。
また、小児入院医療管理料は15歳未満の患者しか算定できないが、小児慢性特定疾患では15歳を超えても小児科での入院医療を受けている患者がいる。主傷病としては神経系疾患、呼吸器系疾患、癌の割合が高かった。こうした実態を踏まえ、小児慢性特定疾患など小児科で長期の療養を必要とする場合は、小児入院医療管理料の年齢上限を引き上げることが提案された。
これらの提案に反対する声はなかった。年齢上限の引き上げについて、健保連理事の幸野氏は「具体的な提案を待って議論したい」と話した。
<掲載元>
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