消化器疾患と皮膚|全身性疾患と皮膚⑥
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は消化器疾患と皮膚について解説します。
秦 まき
沼津市立病院皮膚科
消化器疾患と皮膚
消化器疾患に伴う皮膚疾患は、表1、表2、表3、表4に大別される。
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消化器疾患が原因で二次的に皮膚病変をきたす疾患
潰瘍性大腸炎
主として粘膜を侵し、びらんや潰瘍を形成する、原因不明の大腸のびまん性非特異性炎症である。血便、粘血便、下痢あるいは血性下痢を呈する。皮膚症状として壊疽性膿皮症、結節性紅斑を合併することがある。
クローン(Crohn)病
潰瘍や線維化を伴う肉芽腫性炎症性病変からなる原因不明の疾患で、消化管のどの部位にも起こりうる。腹痛、下痢、体重減少、肛門病変を生じる。皮膚症状として壊疽性膿皮症、結節性紅斑、口腔内アフタを合併することがある。肛門周囲にも肉芽腫性の炎症性病変を生じることがある。
悪性黒色表皮腫、後天性掌蹠角化症
消化器などの癌に伴う腫瘍随伴性皮膚病変として、悪性黒色表皮腫や後天性症掌蹠角化症がある。
カルチノイド症候群
おもに気管支、肺、腸管に発生する腫瘍である。腫瘍が産生する複数の生理活性物質によって多彩な症状が出現する。血管拡張に伴う皮膚の潮紅は特徴的である。
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皮膚疾患が原因で二次的に消化器病変をきたす疾患
カーリング(Curling)潰瘍
広範囲の熱傷を負った場合に急性の胃潰瘍を生じることがある。
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全身疾患の部分症状として消化管と皮膚に症状を生じる疾患
亜鉛欠乏症
亜鉛欠乏症は先天性と後天性に分類される。血清亜鉛の低下により持続性の下痢や、眼瞼、口囲、鼻孔、耳周囲、肛門部などの開口部および四肢末端に皮膚炎を生じる。
ペラグラ
ニコチン酸アミドの欠乏により、皮膚炎、下痢、認知症を生じる。露光部に紅斑、水疱を認め、色素沈着を伴う。
カウデン(Cowden)病
皮膚・粘膜、消化管、乳腺、甲状腺、中枢神経、泌尿生殖器などに過誤腫性病変が多発する遺伝性疾患である。全消化管にポリポーシスを認める。皮膚症状として顔面の外毛根鞘腫、口腔内粘膜に乳頭腫がみられる。
消化管と皮膚に症状を生じる疾患
ポイツ・イエーガース(Peutz-Jeghers)症候群
消化管ポリポーシスと粘膜皮膚色素沈着を特徴とする疾患である。小腸を中心に過誤腫性ポリポーシスが多発し、悪性化することがある。口唇、口腔粘膜、指趾に暗青色~暗褐色の雀卵斑様の色素沈着を認める。
家族性大腸腺腫症
大腸の多発性腺腫を主徴とする遺伝性疾患である。放置すると大腸癌を発生する。皮膚病変として類表皮囊胞や線維腫がみられる。
クロンクハイト・カナダ(Cronkhite-Canada)症候群
主として胃・大腸にポリポーシスを生じる非遺伝性の消化管ポリポーシス疾患である。消化管からの蛋白漏出や栄養障害に伴う症状(味覚障害)がみられる。また特徴的な外胚葉異常所見である脱毛、爪甲萎縮、色素沈着を高率に生じる。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂