心疾患と皮膚|全身性疾患と皮膚⑤
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は心疾患と皮膚について解説します。
秦 まき
沼津市立病院皮膚科
心疾患と皮膚
心疾患が原因で二次的に生じる皮膚病変と、全身疾患の部分症状として心臓と皮膚に症状を生じる疾患に大別される(表1)。
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心疾患により二次的に生じる病変
チアノーゼ、浮腫
心臓の機能が低下すると全身に血液を送り出す働きが弱くなり、手足や口唇が蒼白になる(チアノーゼ)。また全身の静脈血が心臓に戻る流れが滞るため、浮腫を生じる。
オスラー(Osler)結節、ジェーンウェー(Janeway)斑、爪下線状出血
いずれも感染性心内膜炎でみられる皮膚症状で、オスラー結節は指趾先端にみられる有痛性紅斑、ジェーンウェー斑は手掌や足底にみられる無痛性出血斑である。感染性心内膜炎診断の手がかりとなる。
コレステロール塞栓
血管壁の粥腫からコレステロール結晶が飛散し、末梢に塞栓をきたす疾患である。心血管手術やカテーテル治療が原因となることが多い。
塞栓は腎臓、消化器、網膜などさまざまな臓器で生じるが、足趾に塞栓を生じるとblue toeといわれる疼痛、チアノーゼ、網状(もうじょう)皮斑を認め、コレステロール塞栓を疑う重要な所見となる。
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心疾患を伴う皮膚病変
川崎病
4歳以下の乳幼児に発症する。高熱が5日以上続き、口唇の潮紅、イチゴ状舌、頸部リンパ節腫脹がみられる。
皮膚症状として手足の硬性浮腫、不定形紅斑、BCG接種部位の紅斑、膿疱、痂皮を認めることがある。冠動脈瘤、弁膜症、心筋炎を合併することがある。
新生児ループス
抗SSA抗体陽性の母体から出生する児の1~2%で心ブロックを認める。
サルコイドーシス
サルコイドーシスでは皮膚病変、呼吸器病変、眼病変、神経・筋病変のほかに心病変を生じることがある。心電図で房室ブロック、心室期外収縮、心室頻拍、右脚ブロック、軸偏位、異常Q波を認める1)。
マルファン(Marfan)症候群、エーラス・ダンロス(Ehlers-Danlos)症候群
全身的な結合組織の脆弱性に基づく遺伝性疾患である。結合組織が脆弱になることにより、動脈瘤や動脈解離など重篤な合併症を呈することがある。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂