クエチアピンとは・・・
クエチアピン(くえちあぴん、Quetiapine Fumarate)とは、抗精神病薬の一種である。この薬は、統合失調症の治療に使用される。クエチアピンの特徴として、幅広い抗精神病作用を持つ点が挙げられる。具体的には、幻覚、妄想、思考の混乱などの陽性症状や、意欲の減退、感情の鈍化などの陰性症状に対して効果がある。
さらに、クエチアピンはセロトニンとドーパミンの受容体に作用し、これにより気分の安定化や不安の軽減にも寄与する。
ただし、クエチアピンには眠気や体重増加、口渇などの副作用があるため、これらの症状に注意しながら使用する必要がある。また、高齢者や心血管疾患を持つ患者では、使用にあたって特に慎重な監視が求められる。
警告・禁忌
(1)警告
クエチアピンの投与に当たっては以下を注意する。
著しい血糖値の上昇を起こし、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡、死亡に至る場合があるので、投与中は血糖値の測定を行う必要がある。また、口渇、多飲、多尿、頻尿などの症状が出た場合には、ただちに投与を中断し、医師の診察を受けるよう患者や家族に十分に説明する。
(2)禁忌
クエチアピンの投与禁忌として、以下の条件に該当する患者への使用は避けるべきである。
・昏睡状態の患者:クエチアピンは中枢神経系に作用し、昏睡状態を悪化させるおそれがある。
・中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者:バルビツール酸誘導体などの薬剤との併用は、中枢神経の抑制作用を増強させる可能性がある。
・アドレナリンを投与中の患者(アナフィラキシーの救急治療を除く):アドレナリンの作用に影響を与え、重篤な血圧降下を起こすおそれがある。
・クエチアピンに対する過敏症の既往歴のある患者:アレルギー反応を引き起こす可能性がある。
・糖尿病の患者:クエチアピンは血糖値に影響を及ぼす可能性がある。
(3)注意点
また、クエチアピン投与時の注意点として、以下が重要である。
・体重増加:クエチアピンは体重増加を引き起こす可能性がある。
・低血圧や失神:特に治療開始時には、低血圧や失神が起こりやすいので、血圧のモニタリングが重要である。
・QT間隔延長:心電図の異常(QT間隔延長)が現れる可能性があるため、心電図の監視が推奨される。
これらに注意し、患者の症状や既往歴に基づいて、適切な観察と対応を行うことが重要である。特に、糖尿病の患者や心疾患のリスクがある患者に対しては、慎重なモニタリングが求められる。
効能・効果
・統合失調症の症状の改善
用法・用量
成人におけるクエチアピンの通常の投与方法は、1回25mgを1日2~3回から開始し、患者の状態に応じて徐々に増量する。一般的に、増量は週に25mgから50mgずつ行われ、患者の反応や副作用を確認しながら、適切な治療量に調整する。
通常、1日の総投与量は150mgから600mgの範囲である。投与量は患者の年齢や症状、忍容性(投与された人がどの程度薬剤の副作用に耐えられるか)によって適宜増減されるが、1日量としては750mgを超えないようにすることが重要である。
副作用(投与後の注意)
クエチアピン使用時の重大な副作用として、以下の症状が現れる可能性があり、これらには特に注意が必要である。
・高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡:これらの症状は致命的な経過をたどることがある。患者の血糖値を定期的にチェックする。
・悪性症候群:無動緘黙(むどうかんもく:動かなくなったり喋らなくなったりする)、筋強剛、発熱などが見られる場合、悪性症候群の可能性がある。この症状が見られたら、すぐに対応が必要である。
・横紋筋融解症:筋肉痛、脱力感、血中および尿中ミオグロビンの上昇などが見られる場合、横紋筋融解症の可能性がある。これは腎機能を悪化させる可能性がある。 ・無顆粒球症、白血球減少:これらの症状は定期的な血液検査でのモニタリングが必要である。
・肝機能障害、黄疸:AST、ALT、γ-GTP、Al-Pの上昇などが見られる場合、肝機能障害の可能性がある。
・麻痺性イレウス:腸管麻痺を起こし、麻痺性イレウスが生じることがある。
・遅発性ジスキネジア:口周部などの不随意運動が見られる場合、遅発性ジスキネジアの可能性がある。
・肺塞栓症、深部静脈血栓症:息切れ、胸痛、四肢の疼痛、浮腫などが見られる場合、これらの循環器系の疾患の可能性がある。
・中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑:皮膚の広範囲な赤み、水疱、剥離などが見られる場合、重篤な皮膚障害の可能性がある。
これらの副作用はまれではあるが、発生した場合には重篤な状態に至る可能性がある。したがって、クエチアピンを投与する患者に対しては、これらの症状に特に注意を払うことが重要である。
取り扱いの注意点
また、薬の併用に際しては、相互作用による副作用のリスクがあるため、他の薬剤との併用は医師の指示に従うこと。特に、抗高血圧薬、抗糖尿病薬などとの併用時には慎重な監視が必要である。
薬の保管については、直射日光や湿気を避け、子供の手の届かない安全な場所に保管すること。また、使用期限を確認し、期限切れの薬は使用しないことも重要である。
引用・参考文献
1)クエチアピン.添付文書.2023年12月改訂(第1版).(2024年1月閲覧)