副腎皮質ホルモンはどんなもの?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は「副腎皮質ホルモン」に関するQ&Aです。
[前回]
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモンはどんなもの?
副腎皮質ホルモンはコレステロールから合成されるステロイドホルモンで、電解質や糖の代謝に関与しています。副腎皮質ホルモンには電解質コルチコイド、糖質コルチコイド、アンドロゲン、エストロゲンがあります。
電解質の代謝を行っているホルモンの総称が、電解質コルチコイド(ミネラルコルチコイド)です。
主として働くのはアルドステロンというホルモンです。アルドステロンは腎臓に作用し、尿細管からのナトリウムの再吸収とカリウムの分泌(排泄)を促して体液のバランスをとっています。また、ナトリウムとともに水が移動することになるので、体血液循環量の減少が予防されます。
糖質コルチコイド(グルココルチコイド)は糖質代謝を調節するホルモンです。
主として働くのはコルチゾールというホルモンで、グリコーゲンの生成と貯蔵を促進します。食事から摂取する糖質が不足した場合、タンパク質を使って糖新生を行い、血糖値を上昇させて一定に保ちます (「糖質を毎食とる必要があるのはなぜ?」参照)。また、コルチゾールには抗炎症作用、利尿作用などもあります。
これらの副腎皮質ホルモンの分泌が亢進すると、クッシング症候群やアルドステロン症が生じ、分泌が低下するとアジソン病を発症します。
MEMOアルドステロン症
副腎皮質ホルモンであるアルドステロンの分泌過剰によって発症し、高血圧、低カリウム血症による筋力減退、多飲、多尿などが生じます。
MEMOアジソン病
副腎皮質が結核などによって障害されることにより、多くの副腎皮質ホルモンが欠如した状態。食欲不振、悪心、嘔吐、皮膚や粘膜の乾燥、皮膚の色素沈着のほか、無気力、精力減退、全身衰弱、低血圧など多様な症状が現れます。
COLUMN副腎皮質ホルモンと血圧の関係
副腎皮質ホルモンの電解質コルチコイド(アルドステロン)による血圧調節は、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系で行われます。血圧低下の原因として血流量の低下があります。血流量の減少を検出するのは、血液の濾過を行っている腎臓です。腎臓で血流量が減っていることがわかると、傍糸球体細胞からレニンというホルモンが分泌されます。
レニンが血液中のアンジオテンシノゲンに作用し、アンジオテンシンIに変換されます。アンジオテンシンIは、血管内皮細胞膜にあるアンジオテンシン変換酵素(ACE)の働きにより、アンジオテンシンIIに変換されます。アンジオテンシンIIには強力な血管収縮作用があり、これによって血圧は上昇します。
さらに、アンジオテンシンIIは副腎に作用し、副腎皮質からの電解質コルチコイド(アルドステロン)の分泌を促進させます。アルドステロンには尿細管からのナトリウムの再吸収を促す作用がありますので、腎臓の尿細管ではナトリウムが次々に再吸収されていきます。すると、ナトリウムと一緒に水も再吸収されるため細胞外液が増加し、循環血液量が増加して血圧も上昇します。
アンジオテンシンIIによる血管収縮と、アルドステロンの作用による血液量の増加のため、血圧は上昇するのです。
MEMOレニン
腎臓から分泌されるホルモンでレニン・アンジオテンシン・アルデステロン系を介して血圧を上昇させます。
※編集部注※
当記事は、2017年10月9日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版