止血検査|検体検査(血液検査)
看護師のための検査本『看護に生かす検査マニュアル』より。
今回は止血検査について解説します。
高木 康
昭和大学医学部教授
〈目次〉
- 止血検査とはどんな検査か
- 止血検査の目的
- 止血検査の方法
- ・血小板数
- ・出血時間
- ・血小板粘着能
- ・血小板凝集能
- ・毛細血管抵抗試験
- 止血検査前後の看護の手順
- 止血検査現場での患者との問答例
- 止血検査に関するQ&A
止血検査とはどんな検査か
止血検査の目的
出血しやすく出血が止まりにくい状態を出血性素因(出血傾向)という。毛細血管の異常、血小板の異常、血液凝固の異常を検出するために検査し、何が原因なのかを調べる。
主に血小板数や血小板機能(粘着能、凝集能)が重要である。凝固、線溶は血液検査(凝固・線溶)を参照。また抗血小板薬治療のモニター検査としても行う。
止血検査の方法
血小板数
末梢血液検査の項参照。
出血時間
- 測定方法:ランセットまたはメスで皮膚を穿刺して、湧出する血液を30秒ごとに濾紙に吸い取り、血液がつかなくなるまでの時間を測定する(図1)。最初の血液斑の大きさは直径10mmになれば十分である。1mm以下となった時間を出血時間とする。
- Duke(デューク)法とIvy(アイビー)法があるが、我が国では耳を穿刺するDuke法が広く用いられている(図2)。
- 意義:血小板数よりも血小板の機能、毛細血管の機能を知るために行う。
- 基準値:1〜5分
〈注意点〉
- 常に一定の大きさの刺傷をつくるようにする。
- 耳が冷えていると延長するので、外来患者を検査する場合は気をつける。
- アスピリンなどの血小板機能を阻害する薬剤の投与は、少なくとも2日間は服用を中止させておく。
- 検査中に話をしたり、幼児の場合、泣いたりすると延長する。
- 濾紙で血液を吸い取るとき、強く押すといったん止血しかかってもまた出血するので中止する。
- 出血時間は、あらかじめ血小板数を調べてから行うようにする。3万/μL以下では止血困難となるため、原則的には検査は実施しない。
- 血友病やDICを合併する急性前骨髄性白血病(M3)が疑われる例に対しては、止血困難となることがあるため控えたほうがよい。
血小板粘着能
- 測定方法:コラーゲンを表面に結合させたプラスチックビーズを詰めた管に抗凝固剤を加えない静脈血を一定の速度で通し、通過前と通過後の血小板数より管内の粘着した血小板の割合を調べる。
- 意義:フォン・ウィルブランド病、本態性血小板血症、尿毒症、ベルナール・スーリエ症候群で低下する。
- 基準値:15〜50%程度
血小板凝集能
- 測定方法::血小板数を30万/μL 前後に調整した多血小板血漿(PRP)に血小板凝集惹起物質(ADP・コラーゲン・リストセチンなど)を加えて血小板凝集の有無をみる。血小板が凝集することで生ずる吸光度や透過度の時間的変化を自動的に記録させる血小板凝集計を用いる。レーザー光を照射し凝集塊に当たって生じた散乱光を検出する方法もある。
- 意義:血小板無力症はコラーゲンやADPで低下する。ベルナール・スーリエ症候群はコラーゲンやADPで正常であるが、リストセチンで凝集しない。
- 基準値:60〜90%
毛細血管抵抗試験
- 測定方法:皮膚の毛細血管に最低血圧と最高血圧の中間圧を5分間加えた後に生じる点状出血斑の数を数える(図3)。陰圧を加える方法もある。
- 意義:血小板数の減少、血小板機能異常、フォン・ウィルブランド病、毛細血管の異常などで異常となる。
- 基準値:10個以下
図3毛細血管抵抗試験(Rumpel-Leedeのうっ血試験、陽圧法)陽性例
止血検査前後の看護の手順
- 止血しにくかったり、紫斑が出たりして不安で病院を訪れる患者がいるので、検査について十分な説明をする。
- 出血時間は皮膚を穿刺するので少し痛みがあることや、検査後再び出血する場合があるのでしばらく耳に触れないように注意する。
- 血小板粘着能や毛細血管抵抗試験は、特殊な器具を使用したり駆血帯で長時間圧をかけるので、患者が怖がらずにリラックスするように気をつける。
止血検査現場での患者との問答例
出血時間の検査を行います。耳を消毒してメスでちょっと刺しますね。
痛いですか。どのくらい刺すんですか。
3〜4mmです。チクッとするぐらいの痛みですから安心してください。
<穿刺後>
なかなか止まりませんね。
正常でも5分ぐらいかかります。おしゃべりして口を動かすと止まりにくくなります。
<止血後>
終わりました。耳を触るとまた出てきますのでしばらく触らないでください。
傷口は治りますか。
大丈夫です。2、3日で元通りになりますよ。
止血検査に関するQ&A
Q1.血小板数がどのくらい減少したら出血傾向が出現するのですか?
A.病気によって違うので一概に言えませんが、一般的に5万/μL以下になると出血傾向が出てきて、1~2万/μL以下になると重篤な出血傾向がみられます。このため、低値になると血小板輸血を行いますが、病気や症状によって違います。急性白血病などの治療時では血小板数が1~2万/μL以上に維持するように輸血を行いますが、慢性に経過している血小板減少症、例えば再生不良性貧血などは、出血傾向がなく血小板数が安定している場合は0.5~1万/μLでも輸血は避けたほうがよいと考えられています。
Q2.血小板が1万/μLと低値でも機械が正確に測定できるのでしょうか?
A.現在の自動血球計数器による血小板数測定の精度はかなり良いです。血小板数算定の測定許容範囲の下限値は1000~3000/μLと考えられています。
略語
- ADP:adenosine 5’-diphosphate(アデノシン5’-二リン酸)
- DIC:disseminated intravascular coagulation(播種性血管内凝固症候群)
- PRP:platelet rich plasma(富血小板血漿)
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版