チックとは・・・
チック(ちっく、tic)とは、本人の意思とは無関係に、突然一部の筋肉が動いたり、声が出たりする異常運動の一つである。
原因
原因は不明であるが、遺伝的因子が関係していることが指摘されている。また、チックが見られる小児は、学習症や注意欠陥多動性障害(ADHD)などを合併していることがある。
症状
意思によって制御できない常同的で反復性のある運動や発声が、突発的かつ急速に生じる(不随意運動)。睡眠中には出現せず、ストレスで増悪する。
好発年齢は18歳未満である。チックは4~6歳の間に始まり、青年期には減少する。多くのチックはやがて消失するが、約1%の小児では成人期まで残ることもあると報告されている。
好発部位は、顔面(まばたきや、顔をしかめる)や肩(肩が勝手に動く)である。
診断
診断は、症状に基づいて行われる。
チック障害の種類と治療法
チックは、運動性チックと音声チックに大別され、それぞれが単純性と複雑性に分類される(表1)。チック障害はこれらのチックが、18歳未満で発症し4週間以上持続する病態のことをいう。
表1チックの種類
一過性チック障害
運動性チックや音声チックが一日中頻繁に生じ、少なくとも4週間は継続するが、1年以上は継続しない。好発年齢は4~5歳で、10~20%の児童に生じる頻度の高い病態である。原因不明であるが、大半は心因性に生じ、家庭や学校のストレスが誘因となる。
本症の予後は良好で、多くは自然に消失する。チックに注意を向けると症状が増悪するの、家族はなるべく注意を向けないことが望まれる。
多くは自然と消失するため特別な治療は必要ないが、トゥレット症候群に移行する一群があり注意が必要である。
慢性運動性チックまた音声チック障害
運動性チックまたは音声チックのどちらかが一日中頻繁に生じ、1年以上継続する病態。運動性チックと音声チックが両方みられることはなく、運動性チックのみのケースが大半を占める。本症の原因も不明であるが、家系発症が多い報告があり、何らかの遺伝的要因にストレスが加わり発症すると考えられている。
トゥレット症候群(Tourette症候群)
多彩な運動性チックと1つまたそれ以上の音声チックが一日中頻繁に生じ、1年以上持続する精神神経疾患である。小児期に運動チックから始まり、数年遅れて音声チックが加わるパターンが多く、音声チックはしばしば汚言を伴う。原因は不明であるが、本症の大半に非特異的な脳波異常が検出されており、何らかの脳の機能障害が示唆されている。また家系発症が多い報告があり、遺伝的な素因の関与も疑われている。治療としては、ハロペリドールが有効とされる。
引用参考文献
1)石崎朝世.Q60:チックの症状について教えてください。.日本小児神経学会.
2)Margaret C.et al.小児および青年におけるチック症およびトゥレット症候群.MSDマニュアル.