水痘[みずぼうそう]|ウイルス感染症②
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は水痘[みずぼうそう]について解説します。
渡辺大輔
愛知医科大学皮膚科学講座
Minimum Essentials
1水痘は水痘・帯状疱疹ウイルスの初感染により発症する皮膚疾患である。
2皮疹は紅斑から始まり、丘疹、水疱、膿疱を経過して痂皮化する。新旧の皮疹が混在するのが特徴である。
3抗ヘルペスウイルス薬の全身投与が基本の治療である。ワクチンによる予防が可能であり、現在は定期接種化されている。
41週間~10日程度で皮疹はすべて痂皮化し治癒する。一般的に予後は良好だが、成人例で時に重症化する場合がある。
水痘[みずぼうそう]とは
定義・概念
水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus:VZV)の初感染により発症する皮膚疾患である。小児に多いが成人発症例もある。
原因・病態
空気感染、飛沫感染および接触感染により広がり、潜伏期間は10~21日である。
皮疹は紅斑から始まり、丘疹、水疱、膿疱を経過して痂皮化する。典型的な症例では1週間~10日程度で皮疹がすべて痂皮化し治癒するが、重症例では肺炎、肝炎、中枢神経合併症などを発症し死亡する例もある。
一般に小児では軽症のことが多いが、成人発症の場合は重症化しやすい。
水痘はTORCH症候群の1つであり、妊婦が感染すると、妊娠初期では流産の、妊娠中期以降では四肢低形成、瘢痕性皮膚炎、眼球異常、精神発達遅滞など新生児に重篤な後遺症を起こす先天性水痘症候群(congenital varicella syndrome:CVS)の危険性が高まる。
また出産5日前~出産2日後に妊婦が水痘を発症した場合、新生児は生後5~10日頃に水痘を発症し、抗ウイルス薬による治療が行われない場合約30%が死亡する。
妊婦が感染すると、胎児に重い症状や障害を起こすことのある感染症の総称で、
T:トキソプラズマ症
O:その他(梅毒、水痘、コクサッキー、B型肝炎など)
R:風疹(先天性風疹症候群)
C:サイトメガロウイルス感染症
H:単純ヘルペス(性器ヘルペス)
の頭文字をとったものである。多くの場合、妊娠中、分娩前の初感染が問題となる。
目次に戻る
診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
皮疹出現1~2日前に発熱や全身倦怠感を伴うこともあるが、小児では発疹から始まることもある。発疹は通常は最初に頭皮、次いで体幹、四肢に出現するが、体幹にもっとも多く生じる。新旧の皮疹が混在するのが特徴である(図1)。
検査
特徴的な臨床症状、水痘患者との接触歴、ワクチン接種歴などから診断は容易である。水疱部位のウイルス感染細胞をギムザ染色で観察可能である(ツァンク試験)。
目次に戻る
治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
基本は抗ヘルペスウイルス薬の全身投与である。重症例では、入院したうえで抗ヘルペスウイルス薬の点滴を行う場合もある。抗ヘルペスウイルス薬を発症後早期から全身投与することにより、症状の軽減や治癒までの期間の短縮が図れるため、積極的に使用する。
発熱に対しては、ライ(Reye)症候群発症の可能性が指摘されているアスピリンなどサリチル酸系薬ではなく、比較的安全性の高いアセトアミノフェンを使用する。
かゆみが強い場合には抗ヒスタミン薬の内服を用いる。また、発疹による瘙痒感の軽減のため、フェノール・亜鉛華リニメント(カチリ)を外用することもある。
生ワクチンによる予防が可能であり、現在定期接種化されている。
インフルエンザや水痘などの感染後、とくにアスピリンを服用している小児に、急性脳症や肝臓の脂肪浸潤を引き起こし、死亡や神経学的後遺症をきたす疾患である。原因不明。
合併症とその治療法
合併症として皮膚の二次性細菌感染、脱水、肺炎、肝機能障害や脳炎などを発症する場合がある。必要に応じ抗菌薬の全身投与、補液などを行っていく。
前述のように急性期に小児にアスピリンを用いると、ライ症侯群を発症する場合があるため注意が必要である。
治療経過・期間の見通しと予後
おおよそ1週間~10日ほどですべての皮疹が痂皮化すれば治癒とみなす。基本的には予後良好の疾患である。
看護の役割
治療における看護
入院、自宅安静いずれも十分な休養、睡眠をとることが必要である。入院の場合、個室管理(空気感染予防策)を行い、医療従事者や清掃員などは水痘既感染者を当てる。水痘未感染者が水痘患者と接触した場合、72時間以内であればワクチン接種による発症阻止が可能である。
フォローアップ(退院指導、日常生活指導を含む)
水痘は学校保健安全法による第二種学校感染症に分類されており、すべての発疹が痂皮化するまで出席停止とする。外出も控えるほうが望ましい。
目次に戻る
本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂