単純疱疹|ウイルス感染症①

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は単純疱疹について解説します。

 

渡辺大輔
愛知医科大学皮膚科学講座

 

 

Minimum Essentials

1単純ヘルペスウイルス(HSV)の初感染もしくは再活性化による皮膚疾患である。

2HSV-1は主として口唇ヘルペス、HSV-2は主として性器ヘルペスを引き起こす。それぞれ初発型と再発型がある。アトピー性皮膚炎など皮膚の基礎疾患をもつ患者に播種性にHSVが感染した病態をカポジ(Kaposi)水痘様発疹症とよび、全身症状を伴い重症化することがある。

3治療は抗ヘルペスウイルス薬の投与である。病態に合わせて点滴、内服、外用を選択する。

4初発型や重症例では1~2週間、再発型では数日で治癒する。再発を頻回に繰り返す症例が存在する。

 

単純疱疹とは

定義・概念

単純疱疹は、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)の皮膚への感染により発症する皮膚疾患である。

 

原因・病態

HSVには1型と2型があり、1型は主として口唇ヘルペスを、2型は主として性器ヘルペスを発症させる。口唇、性器部分に有痛性の小水疱の集簇(しゅうぞく)をみる。

 

HSVは初感染後に三叉神経や仙髄神経節に潜伏感染し、感冒や疲労、精神的ストレスなどで再活性化すると初感染部位に再発病変を形成する。

 

一般的に再発病変は初発病変よりも軽症である。アトピー性皮膚炎など皮膚の基礎疾患がある患者の顔面、頸部などに播種状にHSVが感染した病態をカポジ水痘様発疹症とよび、発熱、倦怠感などの全身症状や眼科的合併症を伴い重症化することもある。

 

 

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診断へのアプローチ

臨床症状・臨床所見

口唇あるいは性器に小水疱が集簇し、びらん化、痂皮化していく。口唇ヘルペス初発例では口内炎や肉炎を伴い、摂食困難となる場合がある(ヘルペス性歯肉口内炎)(図1)。

 

図1 ヘルペス性歯肉口内炎

ヘルペス性歯肉口内炎

 

口唇ヘルペス再発例は図2に示した。

 

図2 口唇ヘルペス(再発型)

口唇ヘルペス(再発型)

 

性器ヘルペス初発例では疼痛が強く、鼠径リンパ節腫脹や排尿障害を伴うこともある(図3)。

 

図3 性器ヘルペス(初発型)

性器ヘルペス(初発型)
画像を見る

 

カポジ水痘様発疹症では、細菌の二次感染を合併することもある(図4)。

 

図4 カポジ水痘様発疹症

カポジ水痘様発疹症

 

検査

多くの場合は臨床的診断が可能である。 水疱部位のウイルス感染細胞をギムザ(Giemsa)染色で観察する〔ツァンク(Tzanck)試験〕.また、性器ヘルペスではイムノクロマト法を用いた抗原検査が保険適用となっている。

 

 

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治療ならびに看護の役割

治療

おもな治療法

基本は抗ヘルペスウイルス薬の投与である。

 

軽症の再発性口唇ヘルペスでは外用薬を用いる。性器ヘルペスは外陰部以外にも病変が存在する可能性があるため、外用薬単独では治療せず内服薬を用いる。

初発例やカポジ水痘様発疹症などの重症例では、入院したうえで抗ヘルペスウイルス薬の点滴を行う場合もある。

 

頻回に再発を繰り返す性器ヘルペス症例では、抗ウイルス薬を連日内服する再発抑制療法を選択する場合もある。

 

合併症とその治療法

眼周囲の病変で、角膜炎などの眼病変が疑われる場合は眼科にコンサルトし、点眼薬を併用する。

 

カポジ水痘様発疹症で細菌の二次感染が合併している場合は抗菌薬の併用を、発熱などがある場合は解熱鎮痛薬の併用を行う。

 

治療経過・期間の見通しと予後

初発例や重症例では1~2週間で、再発の軽症例では数日で皮疹は痂皮化し治癒する。なお、頻回に再発を繰り返す口唇ヘルペス、性器ヘルペス症例が存在する。

 

看護の役割

治療における看護

再発は肉体的、精神的ストレスがかかったときに起きやすいので、普段からストレスのかからない生活をするよう指導する。

 

HSVは接触感染するので、口唇ヘルペスが出ているときはマスクの装着を、また性器ヘルペスが出ているときは性行為を行わないよう指導する。

 

患者のケアを行うときは、手袋を装着する。医療従事者に口唇ヘルペスが出ているときにも、患者に感染させないようマスクを必ず装着する。

 

フォローアップ

皮疹がすべて痂皮化すれば感染力はなくなるため、通常の日常生活を送ることが可能である。

 

再発性性器ヘルペス患者の女性例で妊娠が判明した場合、出産時に児が新生児ヘルペスを発症する可能性もあるため、出産前に産婦人科医と相談するよう指導する。

 

カポジ水痘様発疹症は、基礎疾患として多いアトピー性皮膚炎のコントロールが悪いときに出現しやすいため、普段からスキンケアを含む外用療法をきちんと行い、良好な皮膚状態を維持していくことが重要であると指導する。

 

 

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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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