皮膚掻痒症
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は皮膚掻痒症について解説します。
神戸直智
関西医科大学皮膚科
Minimum Essentials
1かゆみの発症機序はいまだ十分には解明されていない。
2明らかな発疹を認めないにもかかわらず、かゆみを訴える状態である。
3かゆみの原因となっている基礎疾患がある場合には、その治療を行う。抗ヒスタミン薬が奏効する症例は一部にすぎない。保湿薬による乾燥の改善や予防は、ある程度有用である。ステロイド薬の外用は湿疹性変化が認められる症例に限られるべきである。
4現在のところ効果的な治療法は存在せず、スキンケアや皮膚刺激の回避を気長に続けていくことが求められる。
皮膚瘙痒症とは
定義・概念
明らかな発疹を認めないにもかかわらずかゆみを訴える疾患である。ただし、かゆみに対して皮膚を搔破した結果として、湿疹性変化や搔破痕、色素沈着などがみられることがある。
原因・病態
かゆみの原因を同定できない場合が多く、また発症機序もいまだ十分には解明されていない。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
長期にわたる強いかゆみによる患者の精神的苦痛は大きく、日常生活やQOLを大いに妨げるものの、皮膚の症状は他覚的にはほとんど認められない。
全身にかゆみを生じる汎発性皮膚瘙痒症は、腎不全、肝障害、血液疾患をはじめとするさまざまな基礎疾患に伴い認められる。
検査
かゆみの原因となる基礎疾患の有無を確認するための検査を行う。血液検査などでとくに異常が見つからず、原因が不明でかつ頑固なかゆみが長期間にわたって続く場合には、内臓悪性腫瘍の合併を念頭に置くべきとされる。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
かゆみの原因となっていると考えられる基礎疾患がある場合には、まずはその治療が第一選択となる。
基礎疾患の治療にもかかわらずかゆみのコントロールが不良の場合には、精神的なものが原因と考えられる場合は抗不安薬を、基礎疾患に腎不全や肝障害が存在する場合は選択的オピオイドκ 受容体作動薬であるナルフラフィンを投与する。
これらの投薬によっても十分な効果があげられない場合、あるいはかゆみの原因となる明らかな基礎疾患がない場合には、スキンケアや皮膚刺激の回避を指導する。
かゆみそのものへの薬物治療としては抗ヒスタミン薬(H1受容体拮抗薬)が試みられるが、抗ヒスタミン薬が奏効する症例は汎発性皮膚瘙痒症の一部にすぎない。
保湿薬によって皮膚の乾燥を改善あるいは予防することは、ある程度のかゆみの抑制に有用である。ステロイド薬の外用は、搔破による二次的な湿疹性変化が認められる症例に限られるべきであり、また、長期連用により皮膚萎縮をきたすため、漫然と継続されるべきではない。
そのほかの治療法として、中波長紫外線照射や免疫抑制薬内服などが経験的に行われている。
合併症とその治療法
かゆみの原因となっている各基礎疾患による。
治療経過・期間の見通しと予後
残念ながら、現状では本症に対する効果的な治療法は存在せず、スキンケアや皮膚刺激の回避を気長に続けていくことが求められる。
看護の役割
治療における看護
スキンケアや皮膚刺激の回避が治療の主体とならざるをえないことから、これらの指導が肝要である。
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引用・参考文献
1)日本皮膚科学会:汎発性皮膚瘙痒症ガイドライン.日皮会誌122:267-280.2012
本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂