痒疹

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は痒疹(ようしん)について解説します。

 

神戸直智
関西医科大学皮膚科

 

 

Minimum Essentials

1湿疹病変が難治化した最終形の1つ。強いかゆみを引き起こすさまざまな疾患が、本症の基礎疾患となりうる。

2強いかゆみを伴う、癒合傾向のない充実性のかたい丘疹あるいは小結節。高齢者に多い。

3かゆみの原因となる基礎疾患に対応するとともに、病変局所にはステロイド外用を徹底する。

4治療に難渋することが多く、長期間の治療継続が必要となることも多い。

 

痒疹とは

定義・概念

強いかゆみを伴う、孤立性(1つ1つが独立して癒合傾向のない)、充実性のかたい丘疹あるいは小結節であり、搔破により頂点にびらんを伴うこともある(図1)。

 

図1 痒疹(結節性痒疹)

痒疹(結節性痒疹)

 

痒疹はこのような見た目をもった皮膚の症状名としても使用されるが、この痒疹がみられる状態としての病名としても用いられる。

 

罹病期間にかかわらず、ジクジクとした浸出液を伴うものは急性痒疹、表面の皮膚がゴワゴワとかたくなったものは慢性痒疹とよばれ、両者の中間の性質をもったものは亜急性痒疹とよばれる。

 

難治性で、数ヵ月にわたり皮疹が続くとともに、治癒後も瘢痕や色素沈着を残す。

 

なお、小児に生じたものはストロフルスとよばれ、適切な治療により比較的速やかに軽快し、最終的に色素沈着を残さずに治癒することがある(図2)。

 

図2 ストロフルス

ストロフルス

 

原因・病態

詳細は不明である。ブヨや蚊などの虫刺されや、その他の湿疹の搔破が主体となり、ストレスやアトピー素因、アレルギー感染症、あるいはかゆみの背景となる肝腎障害や悪性腫瘍の存在、心身症などにより修飾され皮疹が難治化したものと考えられている。

 

 

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診断へのアプローチ

臨床症状・臨床所見

結節性痒疹

かたいドーム状の痒疹結節が、四肢伸側を主体にそれぞれが癒合することなく生じる(図1)。中年以降に発症しやすく、女性に多いとされる。

 

多形慢性痒疹

高齢者の腰部、側腹部などに比較的集簇して認められる(図3)。

 

図3 多形慢性痒疹

多形慢性痒疹

 

検査

一般臨床検査では異常はみられない。難治性の湿疹病変であることを反映して、好酸球数が上昇することがある。

 

 

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治療ならびに看護の役割

治療

おもな治療法

難治化した湿疹病変の最終形の1つであることから、局所の病変に対しては湿疹治療を徹底する必要がある。

 

ステロイド外用剤は、皮膚が厚い部分からの吸収が悪い。したがって、期待したような治療効果が上がらない場合には、テープ剤の使用やステロイド薬を外用した上から亜鉛華軟膏などを用いた重層療法〔密閉包帯法(occlusive dressing technique:ODT)〕も選択肢となる。

 

かゆみの訴えが強い疾患であるが、抗ヒスタミン薬の内服のみでかゆみをコントロールすることはできない。

 

合併症とその治療法

強いかゆみを引き起こすさまざまな疾患が、本症の基礎疾患となりうる。

内分泌疾患、糖尿病などの代謝異常症、腎障害、肝・胆道系疾患、血液疾患、内臓悪性腫瘍などの全身疾患を想定して詳細な問診を行い、必要に応じてこれら基礎疾患を念頭に置いた検査を行う。

 

治療経過・期間の見通しと予後

治療に難渋する疾患である。長期間の経過によって現在の形になっていることを考慮すると、治療にもある程度の期間、場合によっては年余を要すると予想される。

 

看護の役割

治療における看護

外用治療が治療の基本となるが、途中で投げ出すことなく、病変部位への外用を気長に継続できるようサポートすることが求められる。

 

その一方で、漫然と同じ外用剤を使用し続けることなく、場合によっては感染症や皮膚萎縮の有無などを定期的に確認し、皮膚の症状に合った治療を継続してもらう必要がある。

 

そもそもなぜその部位に湿疹病変が生じたのかを考え、皮膚の清潔や保湿、また刺激を避けるなどの生活指導も必要となる。

 

 

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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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