クッシング病とクッシング症候群|内分泌

看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
今回は、クッシング病とクッシング症候群について解説します。

 

内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授

 

〈目次〉

 

Summary

  • 1. コルチゾールの過剰をクッシング症候群という。
  • 2. ACTHの過剰に起因するコルチゾールの過剰をクッシング病という。
  • 3. クッシング症候群の約70%がクッシング病、約30%が副腎腺腫である。
  • 4. 副腎皮質の機能低下をアジソン病という。

 

クッシング症候群とは

糖質コルチコイドであるコルチゾールの過剰をクッシング症候群(Cushing syndrome)という。

 

コルチゾールの過剰がACTHの過剰に起因する場合がクッシング病(Cushing disease)で、クッシング症候群の約70%を占める。クッシング症候群の残りの約30%は、副腎自体が大きくなる副腎腺腫(コルチゾール産生腫瘍)である。この腫瘍は通常良性であるが、小児の場合は副腎がんの場合がある。

 

クッシング症候群のなかには、その他わずかであるが、肺がん、膵臓がんなどの腫瘍組織でACTHが分泌される異所性ACTH症候群(ectopic ACTH syndrome)がある。以上を分かりやすく図示すると図1のようになる。

 

図1クッシング症候群の分類

クッシング症候群の分類

 

一方、副腎皮質の機能低下をアジソン病(Addison disease)という。

 

アジソン病では、コルチゾール、アルドステロンともに分泌が低下する。下垂体前葉機能低下の例として、シーハン症候群(Sheehan syndrome)がある(表1)。

 

表1コルチゾールおよびACTHの分泌異常

コルチゾールおよびACTHの分泌異常

 

クッシング症候群の合併症

コルチゾールには、糖新生、抗炎症作用のほかにも骨吸収(骨溶解)促進、酸分泌促進、脂質代謝異常などの作用があり、下記のような合併症や症状が現れる。

 

  • 糖新生亢進作用   ⇒ 血糖値上昇(ステロイド糖尿病
  • 骨吸収促進作用   ⇒ 骨粗鬆症(osteoporosis)
  • 胃酸分泌促進作用  ⇒ 消化性潰瘍(peptic ulcer)
  • 脂質代謝異常作用  ⇒ 脂肪の分布異常(体幹の中心性肥満)

 

クッシング症候群の診断

血漿コルチゾールの上昇が認められればクッシング症候群を疑う。さらに合成ステロイドホルモンのデキサメタゾン(dexamethasone)を投与してもコルチゾール分泌が低下しなければ確定的な診断となる。

 

副腎クリーゼ

アジソン病の最も重篤な合併症が副腎クリーゼ(急性副腎不全、adrenal crisis)である。アジソンクリーゼともいう。副腎クリーゼでは、コルチゾールおよびアルドステロンの急激な低下が起こるので迅速な治療が必要になる。治療には合成ステロイドホルモンのハイドロコルチゾン(hydrocortisone)を静注または点滴する。

 

NursingEye

アジソン病ではNa+の尿中排出が亢進するので、減塩食でなく、食塩添加食が必要になる。低Na+血症は SIADH(「尿崩症とSIADH」)などでもみられるが、色素沈着が伴うときはアジソン病が考えられる。

 

※編集部注※

当記事は、2017年2月12日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『図解ワンポイント 生理学 第2版』 (著者)片野由美、内田勝雄/2024年7月刊行/ サイオ出版

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