副腎皮質ホルモン|内分泌
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
[前回の内容]
今回は、副腎皮質ホルモンについて解説します。
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
目次
Summary
- 1. 主要な副腎皮質ホルモンは、糖質コルチコイドと電解質コルチコイドで、わずかであるがアンドロゲンがある。
- 2. 糖質コルチコイドには、コルチゾールおよびコルチゾンがある。
- 3. 電解質コルチコイドには、アルドステロンがある。
- 4. アルドステロンの過剰をコン症候群(原発性アルドステロン症)という。
副腎皮質ホルモンとは
副腎皮質ホルモンには、糖質コルチコイドであるコルチゾール(cortisol)、コルチゾン(cortisone)、電解質コルチコイドであるアルドステロン(aldosterone)および男性ホルモンのアンドロゲン(androgen)がある(図1)。いずれもステロイドホルモンである。
図1副腎の構造
(渡辺皓:解剖学.図解ワンポイントシリーズ1、p.158、医学芸術社、2003より改変)
それぞれのホルモンの生理作用をまとめると表1のようになる。
表1副腎皮質ホルモン
糖質コルチコイドglucocorticoid
糖質コルチコイドは、副腎皮質の束状層で合成され、代表的なものはコルチゾール(cortisol)とコルチゾン(cortisone)である。
コルチゾールは、hydrocortisone ともよばれ、コルチゾンの2つのOのうちの1つがOHに還元された化合物である。コルチゾールの主な生理作用は、糖新生と抗炎症作用である。
コルチゾンの主な生理作用は、グリコーゲン貯留作用である。コルチゾールもコルチゾンもACTHの刺激で分泌が亢進する(「クッシング病とクッシング症候群」参照)。
電解質コルチコイドmineralcorticoid
電解質コルチコイドは、副腎皮質の球状層で合成され、代表的なものはアルドステロン(aldosterone)である。
アルドステロンの主な生理作用は、腎臓の遠位尿細管におけるNa+の再吸収の促進である。アルドステロンはACTHの刺激による分泌亢進は少なく、アンジオテンシンIIの刺激で分泌が亢進する(「昇圧系ホルモン」参照)。
副腎皮質の球状層の腫瘍でアルドステロン分泌が亢進する疾患をコン症候群(Conn syndrome、または原発性アルドステロン症〔primary aldosteronism〕)という。
ストレスホルモン
副腎皮質ホルモンは、糖代謝、体液量調節など生命維持の根幹にかかわる種々の機能を担っており、生命必須ホルモンともよばれる。
一方で、コルチゾールは免疫抑制作用などもあり、感染を起こしやすくする。外部からの刺激(ストレッサー〔stressor〕)によりコルチゾールの分泌が増加するので、注意しなければならない。ストレッサーがあると視床下部からCRHが分泌され、これにより下垂体前葉からACTHが放出され、コルチゾール分泌が促されるので、CRHをストレスホルモン(stress hormone)という。
副腎性アンドロゲン(DHEA)
デヒドロエピアンドロステロン(dehydroepiandrosterone、DHEA)のことである。副腎皮質から分泌される男性ホルモンで、女性でも分泌される。
アロマターゼ(aromatase)の作用でエストラジオール(estradiol)に変化する(「テストステロンからエストラジオールの生合成」参照)。DHEAは、ACTHの他、GHあるいはPRLで分泌が促進される。20歳代で分泌がピークになり、加齢とともに減少する。中枢神経系の抑制性神経伝達物質であるγ - aminobutyric acid(GABA)を抑制する作用もある。
ネガティブ・フィードバック
内分泌の調節の基本は、視床下部の放出ホルモンおよび下垂体前葉の刺激ホルモンによる分泌促進である。
ホルモン過剰になったときは、そのホルモンが視床下部あるいは下垂体前葉にネガティブ・フィードバックで抑制をかける(「ネガティブ・フィードバック」参照)。副腎皮質ホルモンを例にネガティブ・フィードバックを説明すると図2のようになる。
図2ネガティブ・フィードバック
※編集部注※
当記事は、2017年2月10日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『図解ワンポイント 生理学 第2版』 (著者)片野由美、内田勝雄/2024年7月刊行/ サイオ出版