エスとは・・・
エス(えす、es)とは、人間の精神機能を説明する言葉の一つであり、本能的な欲求や生理的衝動のことを指す。イド(id)ともいう。
精神分析学者のフロイトは、人間の精神機能を説明するために、「エス」「自我」「超自我」の3つに分けて、人間の精神はこれら3つの相互作用の結果であると捉えた。
図1エス
人間が生まれたとき、その心的領域はすべて「エス」が独占している。しかし、誕生後の経験の中で、「エス」の一領域にその変形として「自我」が形成されていく、というのがフロイトの主要論理である。
エスは、人間の心の中で本能的な欲求や生理的な衝動の貯蔵庫であり、煮えたぎる釜のようなイメージとして表現される。エスは、ヒトにとって完全に無意識的なものであり、ヒトの精神エネルギーの源泉である。エスは快楽原則(今すぐにでも欲求を満たして不安や苦痛を取り除こうとする)に従うため、善悪や論理的な判断は存在せず、「欲求のままに行動する本能がむき出し」といえる。そのため自我は、自分の中にあるとは気付かない「エス」の存在によって翻弄されている。
このエスに対して、超自我(スーパーエゴ)は人間の精神機能の中で、ルールや道徳観、理性を担い、善悪の判断を行う。そして、エスと超自我からの欲求を、自我(エゴ)が調整しているという構図がある。つまり、「超自我」は直接的に、あるいは「自我」を介して間接的に、「エス」の支配に立ち向かっている。これが、フロイトが説明する人間の精神機能である。
引用参考文献
1)飯岡秀夫. フロイトの「人間論」-デーモンと自立-. 『地域政策研究』(高崎経済大学地域政策学会). 2006;8(3): 19-39.
2)中野明德. S.フロイトの自我・本能論―メタ心理学の展開―. 福島大学総合教育研究センター紀要. 2004;17: 39-48.
3)後藤悠帆. 非人称のエス --フロイト精神分析における理論と実践のずれをめぐって--. 京都大学大学院教育学研究科紀要. 2018;64: 111-123.