ICU(集中治療室)看護師の役割とは?シビアな現場での働き方を徹底解説

ICU(集中治療室)勤務の現役ナースへのインタビュー・アンケート取材から、ICUナースの役割について紹介します。

 

6つのポイントでわかる

ICU(集中治療室)看護師の役割とは?

ICUで働く看護師のイラスト

 

 

 

【1】ICU看護師の役割4選

 

ICU(集中治療室)ナースの役割

ICUのナースには、どのような役割があるのでしょう?

ここでは、特徴的な役割や、よく行う手技・ケア等をご紹介します。

ICUの役割を表すイラスト。ICUの仕事は①患者の状態管理 ②患者状態のアセスメント ③医療機器の正確な操作 ④サーカディアンリズムのケア

 

ICUナースの役割1:患者の状態管理

ICUナースの役割で重要なのは、患者の状態管理です。

バイタルサイン心電図などのモニター、導尿バッグに排出された尿量などの情報を元に、全身を注意深く観察します。

 

人工呼吸器や輸液ポンプ、その他の医療機器が正しく作動しているかにも、気を配る必要があります。

 

清拭・手浴・足浴などをする機会は少ないのではないか、と思っている人もいるかもしれませんが、ADLが低い患者さんが多いため、一般の診療科よりむしろ頻回かもしれません。

髭剃り、切りについても同様です。

 

ADLの度合いによっては、洗髪台で洗髪を行うこともあります。

また、できるだけ「快」を感じられる機会が増えるように、マッサージなどでケアすることもあります。

 

◆先輩の声

私が勤務しているICUは、救急外来と併設です。

ICUは「シーン」としている中にモニター音が響いている…というイメージがあるかもしれませんが、一概にそうとはいえません。

私の職場は割と慌ただしいです。

 

状態管理のために、モニタリングや状態観察などを頻回に行います。

勤務中はずーっと病棟内をぐるぐる回っている状態です。

 

なので移動距離がとにかく長い!

それに緊急入院もあります。

 

体力がないともたないので、意識的に体を鍛えています。

ランニングが趣味でフルマラソンにも出たことがあるんですよ。

(大学病院勤務、看護師13年目)

 

 

ICUナースの役割2:患者状態のアセスメント

ICUナースとして、腕の見せどころは「異常の早期発見」です。

ほんのわずかな異変や兆候を異常の早期発見につなげていく必要があります。

 

モニターから読み取れるデータを、解剖生理、疾患の成り立ちなどの知識と結びつけて、アセスメントしていきます。

 

そして常に、先手を打って対応します。

 

◆先輩の声

ICUナースに欠かせない持ち物といえば「ペンライト」です。

多い人だと2~3本持ち歩いています。

患者さんの瞳孔口腔内の状態観察に欠かせないものだからです。

 

夜間のラウンドでも、注意深く観察することが必要なので、“夜勤のおとも”的な存在でもあります。

(総合病院勤務、看護師4年目)

 

 

ICUナースの役割3:医療機器の正確な操作

心電図モニター観血的動脈圧モニター、中心静脈圧(CVP)モニターといった医療機器についての知識は、ICUナースにとっては必須。

 

特に使用頻度が高いのは、シリンジポンプや輸液ポンプ、人工呼吸器、などです。

 

これらの医療機器については、ボタンひとつで、患者さんの命が左右されてしまうかもしれず、緊張感がある操作です。

院内外の勉強会でキャッチアップする看護師も多いようです。

 

 

ICUナースの役割4:サーカディアンリズムのケア

ICUのナースに特徴的なケアとして、昼夜のリズム(サーカディアンリズム)を整えることが挙げられます。

 

寝たきりの患者さんに対して、夜の時間帯に眠れるように、適切な時間に投薬や清拭を済ませるように心がけます。

 

朝は、目覚める際にモーニングケアを実施するなどして「朝だ」という認識をもってもらいます。

経管栄養を行っている患者さんについては、起き抜けに口腔ケアを行う場合もあります。

 

サーカディアンリズムが崩れると、せん妄や夜間不穏につながりやすいので、ICU看護師の役割として欠かせません。

 

◆先輩の声

ICUに配属された新人からは「早く重症患者を看たい」「処置をたくさんしたい」という声も聞かれます。

でも最初は、意識がなく状態が安定している患者さんを受け持ってもらうのがうちの職場の方針です。

 

新人は特に、コミュニケーションがとれる患者さんの言葉を聞くことで、判断が左右されたり、ケアの方針がブレてしまうこともあるからです。

 

サーカディアンリズムのケアをはじめ、患者さんが安定した状態を保つことがICU看護師として基本の業務です。

地味な仕事に思えますが…、私も4年目になって大切さを実感できるようになってきました。

新人にもその大切さをしっかり伝えていきたいです。

(総合病院勤務、看護師4年目)

 

 

【2】ICU看護師の1日ってどんなスケジュール?

ICUナースのある日勤

※大学病院勤務看護師の場合

ICUナースのある日勤のスケジュールを表すイラスト 7:30情報収集 8:30
申し送り 8:45ラウンド 9:00処置、行為、検査 10:00検温や薬剤投与など、11:00転棟準備 12:00ランチ 13:00午前中のケアの続き 16:20申し送り 17:30看護記録、終業

KYTは、危険予知トレーニングのこと。

ICUでは常に危険を予知し、先手を打った対応をしなければなりません。

そこで、15分~20分程度、毎日の日勤後に皆で行うそうです。

アセスメント能力を高める訓練の一環でもあります。

また、この時間にヒヤリ・ハットの共有もしています。

 

また、状態が回復してきた患者さんの転棟準備を行うのも、ICUナースの日勤の特徴です。

 

 

ICUナースのある夜勤

※大学病院勤務看護師の場合

ICUナースのある夜勤のスケジュールを表すイラスト 16:20申し送り 16:20患者さんの状態の確認 17:30患者さんの夕食 19:00夕食休憩 20:00患者さんのケア 
21:00消灯 0時休憩(2時間)2:00患者さんのケア 4:00経管栄養の患者さんのケア、口腔ケア 7:00モーニングケア 8:00申し送り

ADLが低く、自分でできることが少ない患者さんが多いのがICUの特徴。

 

夜勤の間も、業務は多岐にわたります。

 

膀胱留置カテーテルが入っている患者さんは、1時間おきに尿量をチェックします。

夜勤が16時間だとすると、16回にも及びます。

 

また、サーカディアンリズムのケアの一環で7時にモーニングケア(清拭など)を行います。

 

そのために、経管栄養は朝7時までに終わるように朝4時から開始します。

このように時間管理も重要なのがICU看護師の夜勤です。

 

 

【3】新人ナース必見!ICU看護師の特徴

ICUナースってこんなイメージ

ICUの看護師ってどんな特徴がある?

現役ナースへの取材・アンケートからイメージを作成しました!

ICUナースのイメージを表すイラスト。目:鋭い観察眼 手:ミキシングしまくり! 腹:冷静沈着 足腰:スピーディ 頭:想像力 目:敏感 口:的確な口調 胸:ハートフル がま口:あたたかめ

頭:想像力

モニターや患者の触診から、何が起こっているのかを察知し、先々を予想し、想像するアセスメント能力に長けている。

 

耳:敏感

小さな音からも、患者の状態をアセスメントするヒントを得られるよう、いつもを澄ましている。

 

目:鋭い観察眼

観察眼にかけては全診療科トップクラス!?

 

口:的確な口調

緊急時にも的確に状況を伝えるコミュニケーション力!

 

胸:ハートフル

人の気持ちに敏感だからこそ、家族ケアにも力が入る。

 

手:ミキシングしまくり

患者の点滴数は、診療科随一。点滴のミキシングが素早いマジックハンド!

 

腹:冷静沈着

ICUは急変が多い職場。何が起こっても俊敏に対応することが求められるため、冷静沈着!

 

足腰:スピーディ

緊急時、スピーディに動く足さばき!

 

がま口:あたたかめ

ICU勤務だからといって基本給に差が出ることはほとんどありません。

救急外来併設で、危険手当が付く場合はあたたかめ。

※あくまでインタビューや取材から作成したイメージです。

 

 

【4】ICU看護師のキャリアプラン。3つの実例

ICU勤務、という経験からどのようなキャリアプランが考えられるでしょうか?

先輩たちに聞いてみました!

 

1)ICU→循環器内科

ICUの看護師から循環器内科・外科へのキャリアチェンジを表すイラスト。

ICUの経験者が口をそろえるのは、機械類に強くなれたということ。

その知識と経験、技術をもって、同じように機器類の操作が多い循環器内科へ転職した先輩もいます。

 

◆先輩の声

ICUを経て一度CCU(冠状動脈疾患集中治療室)に移り、そのときの経験をもとにして循環器内科に転職しました。

ICUとCCUを経験して気づいたのは、医療器の操作に強くなったこと。

 

高いアセスメント能力が役立つのは、循環器内科でも同じです。

その能力を活かしつつ、継続的に患者さんを看ていきたいと思いました。

 

ICUでは回復すると他の病棟に転棟していく患者さんがほとんどなので…。

自宅退院や、自宅に帰ったあとの生活まで、ケアしていきたいと考えています。

(転職時、看護師5年目)

 

 

2)ICU→救急

ICUの看護師から救急へのキャリアチェンジを表すイラスト。

 

ICUから救急へ移り、初療の知識をさらに極めたいという先輩もいます。

◆先輩の声

ICUで急変対応や状態管理のスキルを学んできました。

さらに初療や処置のスキルを極めたいと思い、同じ病院内の救急外来へ転属希望を出しました。

 

ICUでは、初療は終わり、状態は安定している患者さんがほとんどです。

安定させることにもやりがいを感じていましたが、初期対応についてももっと学びたいと思いました。

 

初療と、状態管理、両方極めて、ゆくゆくは地域に出て訪問看護をやりたいです。

(転属時、看護師7年目)

 

 

3)ICU→呼吸器内科

ICUの看護師から呼吸器内科・外科へのキャリアチェンジを表すイラスト。

 

ICUから呼吸器内科へ転属する際に、呼吸管理の専門性を高めたいという目的をもつ先輩もいます。

 

◆先輩の声

ICUでは、呼吸管理は看護師の役割の大事な一要素でした。

血中酸素濃度などを注意深く観察しながら、酸素流量を調整していきます。

 

患者さんを看ていると、呼吸がいかに大事かわかります。

亡くなっていく患者さんであっても、最後までできるだけ苦しくないようにケアしてあげたい。

そのために、呼吸器看護を極めたいと思いました。

 

私の病院の呼吸器内科では、長く患っている患者さんも多く、定期的に入院が必要な方もいます。

そのような方と長く関わり、人生全体をケアしていくような視点を持ちたい。

そう考えて、呼吸器内科に転属しました。

(転属時、看護師9年目)

 

 

【5】現場のリアルがわかる!ICU看護師のあるあるエピソード

ICU勤務の先輩たちが経験してきた「ICUあるある」を集めました。

ICUの雰囲気を捉えてみてください。

 

ICUのあるあるエピソードをまとめたイラスト。☆怒鳴る医師をにらむ肝っ玉。☆医師も機材もそろっているので急変も怖くない ☆病院の外の急変はほかのナースより弱い。☆禁句 今日は落ちついていますね、と話した直後急変がでるなど、あるあるのジンクス。

あるある【1】怒鳴る医師をにらみ返す肝っ玉

ICUの看護師は怒らせると怖い!?

 

怒鳴ったり感情をあらわにする医師には厳しい態度をとるときも。

ハートフルであることは大事ですが、現場で感情を出すことが患者さんのためになるとは限らないと知っているからです。

 

数々の厳しい現場をくぐり抜け、冷静に対応することが必要だと知っているのがICUナース。

だからこそ、医師であってもにらみ返す肝っ玉がすわってくるのですね。

 

 

あるある【2】医師も機材もそろっているので急変も怖くない

ICUといえば、数々の医療機器がそろい、比較的手厚い体制で医師やナースと連携をとりあえる環境。

人にせよ機材にせよ、強い味方がいると、どんな急変にも落ち着いて対処できるというのがICUあるある。

 

 

あるある【3】病院の外の急変はほかのナースより弱い

病院内では同僚のナースや医師がいて、医療機器に囲まれているため心強くもありますが、いざ院外に出ると大変!

目の前で急変が起こったら頼りになるのは自分だけなので、心細い。

院外で患者さんに遭遇したとき、ほかのナースよりも慌ててしまう…。それがICUナースの本音です。

 

 

あるある【4】「今日は静かで落ち着いてますね」は禁句

ICUナースにとって「落ち着いてますね」は禁句。

言ったそばから急変が起こり続けるのがICUあるある。

静かな時間は、できるだけそのままにしておきたい…。不要なことを言わないのがICUでの心得です。

 

 

【6】ICU看護師を目指すあなたへ。先輩からのアドバイス

ICU看護師の先輩に新人ナースからの質問をぶつけてみました!

 

Q:ICUで働くメリットはどんなことがありますか?

【A】「急変に強くなれる」「すべての疾患をみれる」これがメリットだと思います。

ハードだ、過酷だ、常に緊張感を強いられる、と説明されると、怖さだけが先行してしまいますが、その分メリットも大きいですよ。

 

まずは「急変に強くなれる」こと。

若いころから多くの経験を積むことができます。

 

そして「すべての疾患をみれる」こと。

病院によっても違うと思いますが、私の職場では新生児を除いてほぼすべての重症患者をICUで看ています。

 

多くの疾患、全身の解剖生理を頭に入れるのは、簡単なことではありませんが、その分スキルアップにつながります。

(総合病院勤務、看護師4年目)

 

 

Q:ICUは患者さんとあまり関わらないイメージがあります。私は人見知りなんですが務まりますか?

【A】コミュニケーション能力は必要です。

確かに、ICUに入院している患者さんは意識がない方が大半です。

直接患者さんとコミュニケーションをとる機会は他の診療科と比べると少ないといえるでしょう。

モニターでバイタルサイン等を確認し、バッグで尿量や出血量を管理するというのが基本の業務。

 

でも、会話ができない患者さんがいる中で、より高度なコミュニケーション能力が求められる職場であるともいえます。

 

言葉で訴えることができない患者さんと、どう意思疎通を図るか。

簡単なことではありません。

苦手だということはわかりますが、業務としてスキルアップできるように努力していってほしいです。

(大学病院勤務、看護師13年目)

 

 

Q:ICUに入院されている患者さんのご家族は、特に不安が大きい方が多いように思います。家族ケアで気をつけていることはありますか?

【A】人生経験も大事です。

そうですね…。

複雑なバックグラウンドをもった方の入院は、他の診療科に比べて多いように思います。

「リストカット」「自殺未遂」などが原因で重症の方もいらっしゃいます。

 

最近特に感じるのは、家族ケアをするためにはナースにも人生経験が必要なんだな、ということです。

20年選手のベテランナースの方々は、その人生経験から、ご家族にかける言葉にも重みがあります。

 

私はまだ4年目で、ご家族から病状について聞かれると、あたふたしてしまうことも多いです。

早くもっと視野を広げたいですね。

余裕をもってご家族をケアできるようになりたいです。

(総合病院勤務、看護師4年目)

 

 

Q:ICUは特にハードな現場だと先輩から聞いています。疲れすぎることはないんですか?

【A】オン・オフの切り替えが大切です。

確かに、自分の少しの見落としが患者さんの生死に直結するハードな現場です。

その分、私の職場ではオン・オフの切り替えを大切にしています。

 

残業は基本的になし。

時間がきたら有無を言わさず交代します。

そういう環境は恵まれていると感じますね。

 

「あのときこうしていたら…」と後悔したり反省することはしょっちゅうです。

私にはルーチンがあって、着替えをしつつ頭の中でその日の業務を振り返ります。

それが終われば「オフ」モードにスイッチ。

 

車通勤なのですが、車に乗ってドアを閉めたらもう職場のことは考えません。

そんなふうに切り替えているから、長く続いているのかもしれませんね。

 

新人の頃は、事前学習や復習があるのでそうもいかないかもしれませんが、休日はめいっぱい遊ぶなど、個人的には「よく遊び、よく学ぶ」を大切にしてほしいと思っています。

(大学病院勤務、看護師13年目)

 

 


(取材・文)看護roo!編集部、新田哲嗣

(イラスト)明(みん)

 

 

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