オランザピンとは・・・
オランザピン(おらんざぴん、olanzapine)とは、非定型抗精神病薬に分類され、神経伝達物質のドパミンやセロトニンなどの多種類の受容体に作用する。主に統合失調症の治療に用いられる薬剤の一つである。
禁忌
以下の患者には投与禁忌。
・昏睡状態の患者(昏睡状態を悪化させる恐れがあるため)
・中枢神経抑制剤(バルビツール酸誘導体など)の強い影響下にある患者(中枢神経抑制作用が増強されるため)。
・オランザピンに対し過敏症の既往歴がある患者。
・アドレナリン投与中の患者(相互作用によりアドレナリンの作用を逆転し、血圧低下を起こす恐れがあるため)。ただし、アナフィラキシーの救急治療に使用する場合を除く。
・糖尿病もしくは糖尿病の既往歴のある患者(著しく血糖値が上昇することがある)。
効能・効果
オランザピンは、幻覚や妄想に対する効果が十分に期待でき、鎮静作用も強い。少量では抑鬱状態の治療の補助療法としても有用である。
主な使用対象は統合失調症だが、双極性障害の治療やうつ病の補助療法にも用いられ、精神科医療では出番の多い薬剤である。
強い悪心、嘔吐が生じる抗悪性腫瘍剤(シスプラチンなど)の投与時に、ほかの制吐剤(ステロイドとアプレピタントとセロトニン受容体拮抗剤)との併用で使用される。
用法・用量
以下の疾患に対して経口で投与し、年齢、症状により適宜増減する。
統合失調症
成人では1日1回10mgより開始、ただし、1日の最大量は20mgまで。
双極性障害における躁症状
成人では1日1回10mgより開始、ただし、1日の最大量は20mgまで。
双極性障害におけるうつ症状
成人では1日1回5mgより開始し、その後1日1回10mg分1に増量する(就寝前に投与)。最大20mgまで。
抗悪性腫瘍剤(シスプラチンなど)の投与に伴う悪心、嘔吐
原則として抗悪性腫瘍剤の投与前に使用し、投与期間は6日間までを目安とする。ほかの制吐剤と併用で、成人では1日1回5mgを投与。ただし、1日の最大量は10mg。
副作用(投与後の注意点)
最も多い副作用は傾眠症状である。
抗精神病薬で問題となる錐体外路症状は生じにくいが、肥満傾向や代謝系の異常(耐糖能異常が代表)のリスクは非常に高く、定期的に体重測定や血液検査でのモニタリングが必要である。
ムスカリン受容体遮断作用を反映して便秘、口渇も多い。
重大な副作用としては、高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡があり、あらかじめ患者およびその家族に十分に説明する必要がある(添付文書、警告)。
ほかには、低血糖、悪性症候群なども報告されている。
引用参考文献
1)オランザピン錠.添付文書.(2024年9月閲覧)
2)越前宏俊.オランザピン(ジプレキサ®錠).medicina.38(9),2001,1600-1602.
3)本田 明.新世代(非定型)抗精神病薬(セロトニン・ドパミン拮抗薬,クロザピン類似体,ドパミン部分アゴニスト).medicina.49(11),2012,484-486.
4)松崎朝樹.精神診療 プラチナマニュアル.第3版.メディカル・サイエンス・インターナショナル,2024,p304.