錐体外路症状とは・・・
錐体外路症状(すいたいがいろしょうじょう)とは、錐体外路の障害で生じた症状である。錐体外路は、錐体路以外の全ての中枢神経系の経路のことで姿勢・運動に対する基本的かつ無意識的な運動をコントロールし、運動が円滑に行うことができるように筋緊張などを調節している。自分の意思とは関係なく症状が出現し、不随意運動による症状と筋緊張の異常を認め、明らかな運動麻痺が無いことが特徴である。
大脳基底核とは大脳深部中央に存在する神経核の集まりで、錐体外路の中継点である。被殻、尾状核、淡蒼球、視床下核などから構成され、被殻と尾状核を合わせて線条体、被殻と淡蒼球を合わせてレンズ核と言う。
症状
症状は、運動減少症(陰性徴候)と運動過多症(陽性徴候)の2つに大別される。
運動減少症
運動減少症の症状としてはパーキンソン病、パーキンソン症候群、ウィルソン病の筋強剛、運動緩慢、無動、姿勢反射障害が代表的である。
1)筋強剛(きんきょうごう、muscle rigidity)
固縮ともいわれ、筋肉の緊張が強くなり、関節が固くなる。手関節に見られることが多く、初期は左右差があることが多い。他者が患者の関節を曲げようとすると、歯車を回す時のようなガクガクっとした引っかかりや、鉛を曲げる時と似た固い抵抗を感じるため、歯車様強剛、鉛管様強剛と呼ばれる。
2)運動緩慢(うんどうかんまん、bradykinesia)・無動(むどう、akinesia)
まばたきが少なく、表情が乏しい仮面様顔貌や、体の運動を始めることが難しくなる。このため、歩行開始、寝返り、立ち上がり、その他の日常動作が行いにくくなる。歩行時に1歩目が出にくく、足が床にくっついたようなすくみ足歩行、小刻みで歩幅が狭い小刻み歩行、歩行中急に止まることができない突進現象、バランスを崩して転倒しやすい姿勢反射障害などもこれらに該当する。
運動過多症
運動過多症の症状としてはパーキンソン病で起こる振戦や舞踏運動、アテトーゼ様運動、バリズム、ジストニア、ミオクローヌスなどが代表的である。
1)振戦(しんせん、tremor)
律動的に体の一部が震える。安静時(何もしていない)、姿勢時(何かの体勢を取っている時)、動作時などに出現する。手指に多い。特に目標に近づくほど震えが大きくなるものを企図振戦という。疲労や寒冷・興奮で生じる生理的な振戦から、本態性、家族性、老人性、中毒性、小脳性など原因は多岐にわたる。パーキンソン病では安静時振戦が特徴的であり、本態性振戦や甲状腺機能亢進症による中毒性振戦は姿勢時に見られる。小脳・中脳赤核の異常で起こる動作時振戦や、肝臓疾患による羽ばたき振戦も有名である。
2)舞踏運動(ぶとううんどう、choreic movement)
不規則で目的がなく、左右非対称で踊っているように見える動きである。ハンチントン舞踏病が有名である。脳血管障害で起こるベネディクト症候群、歯状核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、有棘赤血球舞踏病等でも見られる。
3)バリズム(Ballism)
舞踏様運動に似ているが、もっと急速で、粗大であり、持続性のある四肢を投げ出すような激しい不随意運動である。片側性であることが多く、視床下核の障害(脳出血が多い)で見られる。
4)アテトーゼ様運動(あてとーぜうんどう、athetoid movement)
ゆっくりとタコがのたうつような、くねるような不規則な動き。手指、足、舌などに出現し、一定の姿勢を維持するように指示しても、ゆっくりと持続的な不随意運動が起こり、その姿勢を保持できない。舞踏運動よりゆっくりで同じような動きを反復する(常同性)。アテトーゼの多くは先天性のものである。
5)ジストニア(じすとにあ、dystonia)
筋緊張が持続的に異常に亢進し全身がくねくね動くような反復する運動や異常な姿勢を来す症候のことである。首や体幹、胸郭、肘、手首、指などが過度に曲がったり、ねじれたりする。Wilson病は若年性で起こり、全身性ジストニアで遺伝子変異が判明しているものから眼瞼痙攣、痙性斜頸、書痙といった局所性ジストニアまでさまざまである。