真菌感染症とは・・・
真菌感染症(しんきんかんせんしょう、mycotic infection)とは、真菌の接着や侵入により生じる感染症である。
内臓や血液などの深部臓器に真菌が感染する深在性真菌症と、表皮や粘膜に限局する表在性(浅在性)真菌症とに分けられる。深在性真菌症の方がより重篤で治療が難しい。以下、代表的なものを示す。
深在性真菌症
(1)深在性カンジダ症(侵襲性カンジダ症)
深在性カンジダ症とは、血液からカンジダが検出されるカンジダ血症、あるいは臓器に定着して生じる播種性カンジダ症である。カンジダ属は皮膚や消化管粘膜の常在菌なので、深在性真菌症の中で最も発生頻度が高い。特に好中球が減少していたり、細胞性免疫が低下していたり、血管内にカテーテルが留置されていたりする患者で起こる。血行性に播種して眼内炎を合併することがある。
(2)アスペルギルス症
アスペルギルス症とは、アスペルギルス属の胞子の吸入により、肺や副鼻腔に感染を起こすものである。以下の4つの型がある。
・侵襲性肺アスペルギルス症
移植後や化学療法中、好中球減少など、免疫力が高度に低下した患者に起こり、肺以外に中枢神経系など全身に感染が広がることがある。死亡率も高い。
・慢性進行性肺アスペルギルス症
咳、痰などの症状が月単位で慢性的に続き、徐々に進行する。
・肺アスペルギローマ
肺結核や慢性閉塞性肺疾患など、元々基礎疾患を有する肺にアスペルギルスの菌塊(fungus ball)ができる。
・アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
アスペルギルスに対するアレルギーで、喘息発作や咳、粘液栓の喀出が起こる。
(3)クリプトコッカス症
クリプトコッカスは、空中に浮遊している菌を吸い込んだり、傷のある皮膚を介して体内に入り込み、肺や脳、皮膚に感染する。AIDSや糖尿病、膠原病、血液疾患、ステロイドを含む免疫抑制剤の使用など、細胞性免疫不全状態の患者だけでなく、基礎疾患のない健康な人にも発症するのが特徴で、健常者の真菌感染症で最多である。健康な人の肺クリプトコッカス症では症状がないこともある。脳髄膜炎の場合は、発熱や頭痛、嘔気、嘔吐などの髄膜刺激症状、性格変化や意識障害がみられることがある。
表在性(浅在性)感染症
(1)白癬(皮膚糸状菌症)
皮膚糸状菌が皮膚に寄生して生じる。いわゆる水虫、いんきんたむし。部位により足白癬、爪白癬、頭部白癬、股部白癬などと呼ばれる。
(2)皮膚粘膜カンジダ症
カンジダ属が原因となって皮膚粘膜に生じる。細胞性免疫低下のある人に起こりやすい。また、抗菌薬の使用による菌交代※や性感染症としても発症する。口腔粘膜カンジダ症(鵞口瘡)、食道カンジダ症、外陰部、膣カンジダ症などがある。
※菌交代:抗菌薬により菌を死滅させても、その抗菌薬に耐性を持つ菌が異常に増えてしまい、別の感染症を引き起こしてしまうこと。