最終更新日 2018/03/12

神経因性膀胱

神経因性膀胱とは・・・

神経因性膀胱(しんけいいんせいぼうこう、neurogenic bladder;NB)とは、膀胱および尿道括約筋を支配する神経の障害によって引き起こされる排尿障害の総称である。

 

排尿は膀胱から尿を出す排尿筋の活動と尿道を閉める尿道括約筋のバランスで成り立っている。このバランスが崩れると尿失禁のみならず、排尿障害が原因で残尿量が増加し水腎症となったり、膀胱尿管逆流が起きて腎盂内圧が上昇して不可逆的な腎後性腎不全となることもある。

 

原因

神経の障害部位によりさまざまな障害を起こす。第12胸髄から第2腰髄あたりよりも上の神経の障害では排尿筋の過活動により膀胱が過敏な状態となり、頻尿や尿失禁などの蓄尿障害が起こる。それ以下の末梢神経の障害では弛緩性の排出障害となる。

・大レベルの障害(過活動な膀胱)として、脳血管障害、パーキンソン病認知症。 
脊髄レベルの障害(部位により過活動ないし弛緩性膀胱)として、脊髄損傷、脊椎管狭窄症、椎間板ヘルニア二分脊椎多発性硬化症
・末梢神経レベルの障害(弛緩性膀胱)として、糖尿病直腸子宮などの骨盤内臓器手術後の末梢神経障害。

 

診断

下記の検査で病態を把握する。

 

排尿状態の問診

出にくいのか、漏れるのか、あるいは両者

 

既往歴

脳血管障害の有無、脊椎疾患の有無、骨盤内手術の有無

 

ウロダイナミクス検査

尿流測定(含む残尿測定)、膀胱尿道内圧測定、排尿筋筋電図

 

治療

 

排尿筋過活動の治療

(1)バイオフィードバック:排尿を我慢する膀胱訓練
(2)薬物療法:排尿筋過活動を抑える抗コリン薬、三環系抗うつ薬、β3遮断薬
(3)電気刺激:尿道緊張を高める低周波電気刺激療法

 

排出障害の治療

(1)薬物療法:排尿筋の作用を増強するコリン作動薬、尿道緊張を下げるα遮断薬
(2)排尿誘導法:排尿反射を誘導するタッピング法、腹圧(バルサルバ法)、用手圧迫(クレーデ法
(3)間欠自己導尿法:膀胱が過伸展しない段階で、定期的にカテーテルで尿を排出する

執筆: 米瀬淳二

がん研有明病院 泌尿器科部長

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