多発性硬化症とは・・・
多発性硬化症(たはつせいこうかしょう、multiple sclerosis;MS)とは、脳や脊髄に多発的に炎症性の脱髄性変化(神経線維の髄鞘の障害)が生じる疾患である。
さまざまな神経症状が再発と寛解を繰り返して起こること(空間的・時間的多発性)が特徴である。好発年齢は15~50歳(20歳代の後半がピーク)で女性に多い。
原因
原因の詳細は不明である。遺伝的な素因にウイルス感染などが重なり、自己免疫によって、炎症性の脱髄性変化を引き起こすのではないかと考えられている。
症状
症状は、脱髄した病巣により生じるため多彩である。視神経の脱髄により急激な視力低下を来すが、数週間で改善し、しばらくして再発するといった症例が多い。また、上記のように症状が空間的・時間的に多発することも特徴である。ウートフ現象(体温の上昇により発作性に神経症状が増悪し、体温の低下により改善する)がみられることがある。
以下、発生部位により起こる症状を挙げる。
・視神経:視力障害(球後視神経炎)
・大脳:認知機能障害、精神症状(鬱・多幸感)
・小脳:眼振、構音障害、企図振戦、測定障害
・脳幹:MLF症候群(眼球の解離性眼球運動障害)、偽性球麻痺、三叉神経痛
・脊髄:錐体路症状、しびれ、有痛性強直性痙攣(自発的あるいは外的刺激によって手指や前腕、下肢などに放散痛が急激に生じ、異常感覚を伴う強直性痙攣発作)、排尿障害、レルミット徴候(頸部の前屈で、背中から下方に電撃的な痛みが走る)
検査
頭部や脊髄MRIで多数の斑状病変が生じる。また、髄液検査にてγ-グロブリン(特にIgG)、オリゴクローナルバンド陽性、髄鞘塩基性タンパク(MBP)が上昇することで診断される。
治療
治療としては、患者の状態により以下の3つの方法が行われる。
1)急性増悪期の症状改善
・ステロイドパルス(軽症例や後治療として経口ステロイド、無効例では血漿交換など)
2)再発予防
・インターフェロンβ
3)後遺症に対する対処療法
・痙縮:バクロフェンなどの抗痙縮薬
・頻尿:抗コリン薬
・排尿困難:α遮断薬
・有痛性強直性痙攣:抗てんかん薬
・運動機能の維持:リハビリテーション
引用参考文献
1)日本神経学会.発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017.