最終更新日 2019/10/08

三叉神経痛

三叉神経痛とは・・・

三叉神経痛(さんさしんけいつう、trigeminal neuralgia)とは、片側の顔面に電撃痛のような激しい痛みが生じる疾患である。第Ⅴ神経である三叉神経領域に疼痛を生じる。

 

三叉神経

三叉神経とは、顔面の感覚と咀嚼筋の運動を支配している神経である。頭頂部〜部の感覚を司る第1枝(Ⅴ1、眼神経)、頬部〜上顎部の感覚を司る第2枝(Ⅴ2、上顎神経)、下顎〜側頭部、外耳道、舌の前側2/3の感覚と咀嚼筋の運動を司る第3枝(Ⅴ3、下顎神経)に分かれている。

 

症状

三叉神経痛は、三叉神経が分布されている領域の片側、特に第2、3枝に、数秒から数十秒の激痛が生じる。痛みは、顔を洗う、を磨く、咀嚼するなどの日常動作や、接触、冷風などの刺激によって容易に誘発される。

 

歯磨き中に痛みが生じることから、初めは虫歯と勘違いする人も多い。また、三叉神経痛は痛みがないときは異常が全く見られないことも特徴の一つである。

 

発症は40〜60歳代の女性に多く、有病率の男女比は1:2程度である。

 

種類

三叉神経痛は症候性三叉神経痛と特発性三叉神経痛に分けられる。

・症候性三叉神経痛
多発性硬化症脳腫瘍、脳血管障害など血管性圧迫以外が原因であり、二次性に生じる。

・特発性三叉神経痛
多くの場合、三叉神経周囲の血管による圧迫が原因である。

 

治療

治療法には薬物療法、神経ブロック、外科手術、ガンマナイフなどがある。

 

薬物療法

薬物療法では、第一選択薬としてカルバマゼピンなどの抗けいれん薬が選択される。

 

また、臨床的に三叉神経痛と診断するのが難しい場合に、抗けいれん薬を治療的診断に使用することもある。三叉神経痛の特徴(消炎鎮痛薬が無効であり、抗けいれん薬が有効)を利用し、抗けいれん薬の効果から治療的診断を行う。

 

神経ブロック

神経を麻痺させることで刺激の伝達をブロックし、痛みを緩和する方法である。効果が一時的であることが多く、最適な治療法とは言えないが、薬物治療が困難な場合などに選択肢の一つとして考えられる。

 

外科手術

MRIなどで血管(上小脳動脈、前下小脳動脈など)が三叉神経を圧迫している所見が見られた場合には、外科的に微小血管減圧術が選択されることもある。

 

ガンマナイフ

正常な三叉神経の神経根に放射線の一括照射を施し、痛みのみを取る治療法である。基本的には三叉神経障害を併発させずに治療効果を得ることができる。現在は、外科手術が困難な場合に適用されることが多い。

 

引用参考文献
1)“三叉神経痛(特発性三叉神経痛)とは”.Neuroinfo Japan 脳神経外科疾患情報ページ.
2)日本神経治療学会治療指針作成委員会.三叉神経痛の病態と臨床像.標準的神経治療:三叉神経痛.(PDF)

執筆: 石田 光

元 神戸市立医療センター中央市民病院 救命救急センター

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